ラムの大通り

愛猫フォーンを相手に映画のお話。
主に劇場公開前の新作映画についておしゃべりしています。

『今度は愛妻家』

2009-11-13 22:28:41 | 新作映画
----確かこの映画、
観る前は「かなり、きつそう」って言っていたよね。
「うん。
白髪の豊川悦司 がカメラを構え、
横には寂しそうな顔をしている薬師丸ひろ子
そこにキャッチコピーが
『夫婦には「さよなら」の前に、やらなければならないことがある』。
このメインビジュアルを見てぼくが抱いたイメージは
“離婚”、そして“病死”」

----フォーンも、そういう映画と思ってた。
最近で言えば 『象の背中』みたいな…。
「だよね。
さて、映画の中身に入る前に、もっとも大きなぼくの勘違いを告白。
トヨエツのこの髪は白髪じゃなく、カラーリング。
ということで、年齢設定からして、思っていたのとまったく違っていた。
物語の方はこうだ。
かつては売れっ子カメラマンだった北見俊介。
仕事をしなくなって久しい彼は、妻・さくらと、どことなくぎくしゃく。
しかも、妻が友だちとの旅行に出かけた隙に
オーディション用の写真を撮ってもらうためにやってきた女優志願の蘭子(水川あさみ)と、
いいムードになる。
ところが電車を乗り過ごして戻ってきたさくらに
彼女の靴を見られたことからHは取りやめに。
写真も助手の誠(濱田岳)に任せてしまう。
あれやこれやあって、妻はようやく出かける。
最初のうちは、独身生活を楽しんでいた俊介だったが、
次第にさくらがいない生活に苛立ちを感じ始めて…」

----ニャるほど。身勝手な男の心理だね。
「そう言われると返す言葉もないけど…。
この映画を観た後の
ぼくの気持ちはプレスに書かれている解説の中の一文がうまく言い表している。
≪女性は共感、男性は反省≫。
この映画の宣伝に関わっている、ある男性が
『妻には見せたくない』と言ったとも聞くけど、
それもよく分かる。
ついでに、もう一言プレスから引用。
『失ってから初めて気づく、
いつも当たり前のものとして受け取っている日常のささやかな幸せ――。
観終わった後は、愛する人や愛してくれる人が隣にいることの幸せを、
しみじみとかみしめたくなる』」

----いやあ、いい言葉だニャあ(しみじみ)。
「でしょ。ぼくの言うことなんか何も必要なくなる。
映画案内じゃなくて、
プレス案内になってしまったけど…(笑)」

----でも、これだけで終わっちゃ、
さすがにまずいんでは?
「そうだね。
じゃあ、感想を交えながら解説を…。
最初はずっとコメディ・タッチ。
どことなくお芝居みたいと思ったら、
これは2002年に上演された同名の大ヒット舞台。
脚本家・中谷まゆみによるオリジナル脚本を、
伊藤ちひろが映画用に脚本化。
この女性目線というのが、映画を味わい深いものにしている。
もし、男性が書いていたら、
≪女性は共感、男性は反省≫の感覚はここまでは出せなかったんじゃないかな。
あと、注目したいのは俳優たちの演技。
夫を前にポーズをとる薬師丸ひろ子。
その可愛らしさは“ポーズ”繋がりで『Wの悲劇』を思い起こさせる。
対するトヨエツは、彼言うところの“表情そのものでキャラクターを表現していく”演技。
あとは濱田岳。彼も、パッと見にはモテナイ男という
独自のポジショニングを獲得。
『フィッシュストーリー』『鴨川ホルモー』と、今年は大活躍だね。
あとは、オカマ役が
これ以上はないほどに板についている石橋蓮司
これは一見の価値ある。
本人も演じることを、すこぶる楽しんだのではないかな。
ほかにも、井川遥の“あるセリフ”など、
伏線の張り方の巧さなどについても、いろいろ語りたいところだけど、
実はこれまた、かん口令がいくつも敷かれているんだ」

----監督は行定勲だよね?
「うん。彼は『遠くの空に消えた』 『クローズド・ノート』を手掛けた2007年以来、久しぶりの登板。
でも2010年はこの後、『パレード』も続くし、
その復活(?)は大いに喜びたいね」



         (byえいwithフォーン)

フォーンの一言「かん口令なんて言われると、よけい気になるニャ」小首ニャ

※最後は泣ける度

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8 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
オカマのぶんちゃんは素敵なキャラでしたね (にゃんこ)
2009-12-30 10:23:26
こんにちは
伏線の張り方が、すごくよかった、面白い作品でしたね。
途中から、実はこういうことなんじゃっていうこと察することができましたが(笑)
オカマのぶんちゃんって、何者?っと思いつつ、正体が判明したときには
キャラ設定がうまい!っと心の中で拍手してしまいました。
蘭子に対して言った台詞に、さりげなく伏線が張ってあったのが
見事だなぁっと。
そこまでは、ただの知り合いのオカマのママさんとしか思えなかったし(笑)
石橋さん楽しそうに演じていらっしゃる感ありましたね。
返信する
■にゃんこさん (えい)
2009-12-30 22:07:46
こんばんは。

この映画、観終わって、
あ~あ、あそこはそういことだったのか…
と、分かる映画ですね。
オカマのぶんちゃんも、ビックリしましたが、
ぼくは、井川遥の演じた役の設定にうなりました。
でも、つらい映画だなあ。
返信する
配役が絶妙 (たいむ)
2010-01-17 21:49:14
やっぱりもとは舞台でしたか。
小道具で何気に演出しているところが多くって、もしやと思っていました。

「失って初めて気が付く・・・」というのはみんなよく知っているはずなのに、人間ってすぐ忘れちゃうんですよね。

「正気」だというところが逆にリアルで、「想像以上のことを言ってくれ」に泣けました。
返信する
■たいむさん (えい)
2010-01-19 21:57:25
こんばんは。

行定監督の次回作『パレード』も観たのですが、
この監督は、表現方法の幅が広いですね。
ドラマチックに作ることも、淡々と描くこともできる。
この作品は、そのドラマチック路線の
いわば最右翼でしょうか。

「想像以上のことを言ってくれ」
これはオリジナルにもあるのでしょうけど、
うまい(と言っちゃいけないか)
胸を突く言葉ですね。
返信する
こんばんわ (maru♪)
2010-01-27 01:19:52
とっても切ない映画でした。

見ている間はさくらがかわいそうで仕方がなかったのですが、
見終わってみると俊介もかわいそうです(涙)

気持ちをきちんと伝えるって難しいですね。
特に男性は照れくさいんだろうなというのは分かります。
でも、女性もベタベタ言って欲しいわけではないのですが・・・

キャストが良かったです。
特に石橋蓮司さん!
返信する
■maru♪さん (えい)
2010-01-29 13:22:55
こんにちは。

ほんとうに切なかったです。
どなたかのところで、
maru♪さんと一緒に試写に行かれた方が、
maru♪さんが「薬師丸ひろ子がかわいそう」と泣いてられたというのを読みました。
ぼくは、同じ男目線で、もう豊川悦司に感情移入しまくり。

泣かされました。
返信する
こんばんは (ノラネコ)
2010-02-04 22:53:42
本当は書かないつもりだったのですが、オフ会の話で感動が蘇って書いてしまいました(笑
私はもう、最後の方は号泣でした。
しかし、これ主人公は男ですけど、女性ライターならではのホンですね。
男のライターではちょっとこのキャラクターは恥ずかしくて書けないでしょう。
オリジナルの舞台もちょっと見てみたいですね。
どの辺りを脚色してるのか、興味があります。
返信する
■ノラネコさん (えい)
2010-02-06 20:43:45
こんばんは。
オフ会の時、
この映画については書かないと
おっしゃっていたのでビックリ。
やはり、書かずにはいられない特別な作品だったんですね。
あの、お芝居風の出入り。
これが映画でも違和感なく見せているところはさすが。
まだアップしていませんが、
行定監督、この次の『パレード』と続けて観たこともあり、
引き出しの多さが改めてうかがいしることができました。
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