雑記帳

日常の出来事や、読んだ本のあらすじや感想など書いています。

安吾探偵控

2013-11-14 19:56:45 | 

野崎六助著"安吾探偵控"を読みました。
探偵小説の作家が京都で老人に出会い昔話を聞いて
その話を書いたという形です。
探偵役は坂口安吾です。
昭和前半活躍した実在の小説家です。
この話をしてくれた老人が子供のころの話で彼が助手を
努めています。
安吾は探偵小説も書いているようです。たぶん読んだこと
ありません。
安吾の小説を読んでいたなら本の中で語られる安吾に
ついてずっと楽しめるでしょう。

下宿していた居酒屋の家出娘を探して欲しいと頼まれ
娘がいっしょにいる柳子の家である紅酒造を訪ねました。
そこで姉の婿の朔二郎が殺されているのに出会います。
複雑な家で代々女系家族でしたが寝たきりになっている
トキは二人の息子を生みました。
紅酒造を継いだ長男は1年前に家族と共に事故死しました。
娘三人を連れて戻ってきたのが次男の万造です。
満州にいたといういい加減な男ですが酒造を継いで
まじめにやっているように見えます。

雪が降り止み朔二郎の足跡だけが残っている倉庫の中で
朔二郎は見つかりました。
家には万造夫婦と三姉妹と酒の仕込みでやってきている
酒男たち数人と使用人三人がいます。
安吾は小僧を連れて話を聞いてまわります。
やがて万造夫婦と朔二郎の妻だった雛子、別の部屋で
食事をしていた杜氏が毒を飲まされ万造夫婦が死にました。

彼らの前に国税庁の宮田が列車に轢かれて死んでいます。
事故死とされましたが彼の死も一連の事件と関係が
あるのかも。

昭和の始めごろ話です。
そのころの雰囲気がただよっているような本です。
登場人物は存在感があります。
途中で小僧が朔二郎の犯人を言い当ててしまい、あれあれ
探偵役は安吾ではなかったのかと思ってしまいました。
安吾は雛子に過去に好きだった人の面影を見て積極的には
動いていません。
かといって真実が見えていなかったわけではありません。

朔二郎が死んだのはいってみれば、はずみです。
主人夫婦が殺されたのはいったいどんな理由だったの
でしょうか。
読み終わって理由ってあったのだろうかと疑問です。
家中の人が何か隠しているような本当のことをしゃべって
いないような雰囲気です。
犯人を知っていながら匿った人たちもいます。
それほどの深い絆があるようには見えない人たちです。

読み終わってなんか納得できない気分になります。
人を好きになったため起きた事件といえるのですが
想われた相手は何も感じていないようだし、事件後に
付き合うこともないし、いったいなんだったんだろうと
思います。
それでもたまに昭和の雰囲気のある本を読むのは
おもしろいです。
日本酒の製造工程の話もおもしろかったです。

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