風薫る道

Who never feels lonely at all under this endless sky...?

『殯の森』

2007-05-30 02:19:01 | 映画



「こうせなあかんってことは、ないからね」
(『殯の森』)

カンヌ受賞早々BSで観られるとは、嬉しいかぎり。
カンヌ受賞作は私にとってアタリハズレが大きいのですが、これはアタリだった。
森の描かれ方がすごく良かったです。
私がよく散策する鎌倉の山は、何百年も前の遺構がさらっと転がっていたり、古い人骨が大量に発見されたりする、そんな場所。
でもたとえそういう遺構がなくても、そのような古くからある森には、都会の新しい森にはない独特の「何か」が確かにあるように感じる。
樹々のなかを黙々と歩いていると、ふと誰かに見られているような、遠い昔の人々の呼吸と自分の呼吸が重なったような、そんな気分になるときがある。
タイムスリップというよりは、ふとこちらと彼岸とがつながってしまったような、そんな感じ。
こういう場所では、死んだ人と会えても不思議じゃないような気がしてくる。
森は何十年何百年もの間そこで呼吸をし、あらゆるものを養分として、生きている。
だからだろうか。
森とは、私にとってそういう場所。
そんな空気がとてもよく表現されている映画でした。
河瀬さんってこういう作品を作る人なのかぁ。
『萌の朱雀』も観てみようかな。

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