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風薫る道

Who never feels lonely at all under this endless sky...?

『通し狂言 霊験亀山鉾 ― 亀山の仇討 ―』 @国立劇場(10月15日)

2017-10-19 00:00:04 | 歌舞伎




中日に行ってきました。
ニザさまの『盟三五大切』での現代風解釈インタビューには少々同意しかねていたワタクシ。だって劇場の中だからこそ徹底して悪の世界に浸りたいじゃないですか。現代にもそういう観客はいるのでございます。
で、「これで満足か!」と返されたような今回の国立劇場。
仁左衛門さんありがと~~~~(^^)/

まぁ、、、贅沢を言えば今回の水右衛門/八郎兵衛はあの伊右衛門@四谷怪談(私的ワンノブザベスト仁左さま)のようなゾクっとする色気1200%で女(含む観客)を弄ぶ色悪キャラクターじゃなかったのが正直残念ではありましたが~・・・。
でも思っていたよりカラリとライトな演目ではあったけれど、そういうものと受け入れてしまえば、悪人ニザさまが存分に見られたのはやっぱり嬉しかったですし、江戸の人達もこんな風にきゃーきゃー言いながら気軽にこのお芝居を楽しんだのかな~とか感じました。こういう楽しみ方って歌舞伎ならではですよね。


【序  幕 第一場 甲州石和宿棒鼻の場
      第二場 同 石和河原仇討の場
      第三場 播州明石網町機屋の場】
兵介(又五郎さん)を斬った刀を拭った懐紙をニヤリと笑ってパッ→ヒラヒラ。きゃ~、ニザ様ってばただ紙を放っただけでどうしてこんなに絵になるのぉ~~~~(>_<)!紙までが美しく見えるニザさまマジック。

二児の母になってもイケメン旦那の源之丞にゾッコンラブラブ(死語)なお松さん(孝太郎さん)。ちょいやりすぎじゃね感はあるものの、やっぱり楽しい。お里ちゃん@義経千本桜を思い出した。あのときもお相手は錦之助さんだったよね、と思ってブログを読み返したら時蔵さんだった!さすがご兄弟…。
錦之助さんはこういう悪気の薄い二股男がニンすぎる。
そもそもチーム播磨屋とチーム松嶋屋の共演というだけでファンは楽しい今月の国立。これで仁左衛門さんと吉右衛門さんが共演してくだされば言うことないのにぃ…(高~い壁…)。

人物関係は台詞で説明されるし、いくつかのお話は省かれてるし、二役が複数いるから、重要な台詞を聞き逃すと筋がわからなくなりがちな本作。皆さん状況説明場面をいつもよりゆっくり喋ってくださっていたおかげでなんとかストーリーに追いつけたんですけど、これってわかりやすくするためのニザさまの指示なのかな?と思っていたのだけれど、ツイ情報では今月前半は脇の役者さん達はプロンプ入りまくりだったとか。じゃああのゆっくり台詞は客のためというよりそういう理由だったのかしら

【二幕目 第一場 駿州弥勒町丹波屋の場
      第二場 同 安倍川返り討の場
      第三場 同 中島村入口の場
      第四場 同 焼場の場】
吉弥さん(丹波屋おりき)、こういうお役も素敵。彌十郎さん(官兵衛)との悪巧みコンビ場面はテンポよくて楽しかった!

そしてこの二幕はニザさま尽くし
・花道から勢いよく登場の八郎兵衛ニザさま。客席大喜びのみんなのアイドルニザさま。二枚目半ぽい役なのに二枚目なのが流石です(いい意味で)。
・「その色男はこの俺よ」的な台詞をサラリと言って客席全員が「うんうん」と当然に受け入れる稀代の二枚目役者ニザさま。
・身請け話が纏まるや否や徐に敷かれ始める赤いオフトン。あとはヤることは一つだけ。このシンプルさ(露骨さ)がイイネー。オレンジ色の帯も可愛い❤
・地蔵を片足で蹴倒して見学場所を確保する俺様水右衛門ニザさま。←かなりツボ
・鼻歌でも歌ってそうに楽しげに殺しを眺めるニザさま(川沿いの土手でのだんまりは四谷怪談を思い出しました~)。
・銀杏柄お衣裳でファン心をくすぐるニザさま。
・入れ墨も似合うニザさま。
・水も滴るニザさま。ここは雀右衛門さんも美しかった!
・背から井戸に見事に落っこちてみせるニザさま(73歳)。
・や否や、燃え盛る早桶をバーンとぶっ壊し早変わりでご登場のニザさま。
・消した石井家ゆかりの人々を笑みを浮かべて指折り数え、国立の舞台に悪の華を咲かせるニザさま

本水の雨を見るのは二度目だなぁ。前回は4年前、あのもんのすごく楽しかった松竹座の『杜若艶色紫』(福助さーん…)。そういえばあれも南北でした。

雀右衛門さんの芸者おつま。いつも思うのですが、雀右衛門さんの女方って男好きしそうなタイプですよね。ふっくらした体とか雰囲気とか。

焼場のセットが楽しい♪ 棺桶作家の本領発揮な南北さん。

【三幕目 播州明石機屋の場】
彌十郎さんは官兵衛と作介の二役。又五郎さんも兵介と袖助の二役。彌十郎さん①は明らかな悪人で②は明らかな善人、又五郎さん①は早々に死亡するし、混同することはなかったけれど、やっぱり視覚的にはちょっと混乱します
先月の文楽に続き、二ヶ月連続で生き血の話。国立劇場では生き血がブームなのか。
秀太郎さんの貞林尼が素晴らしかった。生き血をとるために刀で刺してからも(原作だとこの役目は貞林尼じゃないんですよね)、やりすぎない自然な気品と存在感。そして温かさ。この場面、祖母を思い出してホロリとしちゃいました(祖母は健在ですが)。仁左衛門さんとの絡みも見たかったな。

【大詰 勢州亀山祭敵討の場】
たぶんどこかで台詞を聞き逃していたのだと思うのですが、水右衛門はどうしてこんなにこの「鵜の丸の一巻」にこだわるのだろーと思っていたのだけれど、士官のために必要だった、ということでよいのでしょうか。

最後は、討たれた水右衛門がムクリと起き上がり、全員横一列に平伏して「本日はこれぎり~」。
切口上って「お芝居を観てる」感じがして、楽しくて大好き!

二枚目役者片岡仁左衛門の団扇や松嶋屋の文字入り幕、花道から配る瓦版なども、歌舞伎感たっぷりで楽しかったです

12時半~16時半まで。1800円也。歌舞伎ってやっぱり最高のエンターテインメント!


――で。
ニザさまはもう伊右衛門をなさるおつもりはないのでしょうかね。。。。。あの全客席の婦女子を容赦なく悩殺し尽くした色気ぶっちぎり大サービス色悪は二日限りゆえの自主解禁だったのでありましょうか。。。。。の割に台詞完璧に覚えてらっしゃったじゃないですか~・・・(仁左衛門さんはいつも台詞完璧ですけど)。てか仁左衛門さんは本気であんな極上伊右衛門を人生で3回しか演じないで終えるおつもりですか!水右衛門がよくて伊右衛門はダメな理由ってなんですか!
・・・しつこいですよね、すみません。。。。でも、でも、私は身勝手さと冷酷さと凄みと甘さと色気と美しさのすべてを具えた仁左さまの伊右衛門が大好きなんですものぉぉぉ~~~・・・・・ でも今後万に一つ歌舞伎座で演じてくださることがあったとしても、もうああいう演技はしてくださらないのかもしれない、という気もしていたり(あの盟三五大切の改変を思うと)・・・・。


★★国立劇場HPより★★

片岡仁左衛門が10月歌舞伎公演『通し狂言 霊験亀山鉾 ―亀山の仇討―』の取材会で意気込みを語りました。

  

 8月29日(火)、10月歌舞伎公演『通し狂言 霊験亀山鉾(れいげんかめやまほこ)―亀山の仇討―』の取材会を行いました。

 『霊験亀山鉾』は、四世鶴屋南北による仇討物の傑作です。平成14年(2002)10月国立劇場で70年ぶりの復活となる「丹波屋」「安倍川」「中島村」を中心にした場面構成で上演して絶賛され、その7年後には大阪でも再演されました。今回は、東京で15年ぶりとなる待望の上演です! 仇討の出立から成就までの展開をよりスピーディーにするなど、台本や演出をさらに練り上げます。昨年に開場50周年を迎えた国立劇場の“これからの50年”の第一歩を飾るにふさわしい、充実した舞台をお楽しみいただきます。

 公演に先立ち、藤田水右衛門、古手屋八郎兵衛実ハの八郎兵衛の二役を勤める片岡仁左衛門が、舞台にかける意気込みを語りました。

  

片岡仁左衛門
(藤田水右衛門/古手屋八郎兵衛実ハの八郎兵衛) 

 15年ぶりに東京で上演させていただくことになりました。8年前(平成21年1月)には大阪松竹座でも上演しましたが、初役で勤めた国立劇場でこの大好きな作品を再演できるのは、本当に嬉しいです。 

 このお芝居はそう度々上演できませんし、水右衛門と八郎兵衛はある程度体力を保っていないとできないお役ですから、もしかしたら「今回が最後かな……?」と思っています。でも、最後と言ってしまうと、もう一生できないと思われるので、「かな……?」です(笑)。 

  自分を追い込むわけではありませんが、今は大きなお役をやらせていただくと、「これが最後になるかも」という気持ちで挑むことが増えてきました。ぜひ、今のうちにできるだけ多くの方に自分のお芝居を観ていただきたいと思っています。 

 この作品は、“色気”と“冷酷さ”、“華やかさ”と“暗さ”、“陽”と“陰”がうまく入り混じって構成されています。悪人が活躍する残酷なお話ではありますが、お客様には残酷と感じさせずに「ああ、綺麗だな、楽しいな」と思っていただけるような雰囲気を出したいです。そして、“退廃的な美”と言うか、昔の“錦絵”を見ているような色彩感覚や芝居の色を楽しんでいただければ、何よりです。 

 水右衛門と八郎兵衛の演じ分けについては、特別に考えなくても自然と身体が動きます。水右衛門は浪人で、かなりの悪。役の身分や性格を頭に入れて演じていると、勝手に身体も動いていきますし、セリフ回しも自然なリズムになり、気持ちが乗っていきます。八郎兵衛は、最初はちょっと間の抜けた小悪党、それがお芝居が進むにつれ、本性を顕していきます。15年前の初役の時は、八郎兵衛を描いた錦絵をヒントに、役を創っていきました。

 15年前の時には、稽古直前の打合せで急遽、「中島村焼場」の舞台で本雨を降らせることにしたんです。色々あって初日に間に合うか心配しましたが、一つの見せ場として効果があったと思います。今回も降らせます。  

 このお芝居は娯楽性に富んでいて、あまり深く考えずに各場面を楽しんでいただけるので、初めてご覧になる方にもおすすめです。


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