風薫る道

Who never feels lonely at all under this endless sky...?

クリスチャン・ツィメルマン ピアノ・リサイタル @サントリーホール(2月28日)

2019-03-02 01:47:31 | クラシック音楽



ツィメルマンの日本でのリサイタルは3年ぶり。
といっても間に2回のピアノ協奏曲を挟んでいるので、なんのかんの毎年聴けているのは幸せなことです。
入口で配られた曲目リストにも、開演前にも、休憩後にも「録音録画は違法です」とアナウンスをさせる念の入れようは相変わらず
今夜は予定より10分遅れての開演でした。

【ブラームス:ピアノ・ソナタ第3番 ヘ短調 Op. 5】
演奏前のP席への会釈がこの時はなく、あれツィメさんってそうだったっけ?と。
さて演奏ですが。
ツィメさんは指の調子がよくないのだろうか・・・?前半のブラームスのミスタッチの多さに驚いた。こんなツィメさんは初めてだ
それはよいのだけれど、曲が自然に流れていないように感じられてしまい、音楽に身を預けきって聴くことができず・・・。ちゃんと聴かせてほしいメロディも流すように弾かれていて、若いときの作曲だからと敢えて勢いのままに弾いておられたのかもしれないけれど、それにしてもあの曲の流れのぎこちなさというか固さは・・・それも敢えての若さの表現とか?・・・うーん・・・(素人がエラそうにすみません)。
いずれにしても、ブラームスはもう少し温かく曲に寄り添う親密さのようなものも感じられる演奏の方が私は好みでございます。。。フレイレのブラームスを好きすぎるせいもあるかもしれませんが。。
今日のピアノのキラキラ感の少ない音色は、ブラームスなので悪くなかったように思う。ツイ情報によると今回はマイピアノではなくレンタルスタインウェイだったそうで。珍しいですね。でもアクションはいつもどおりご自分のなのかな?
そういうわけで決して私の好みのブラームスとはいえなかったのだけれど、二楽章のピアニシモは文句なしに素晴らしかった。。。。。別世界に連れていってくださいました。

(休憩20分)

【ショパン:4つのスケルツォ(第1番 ロ短調 Op. 20/第2番 変ロ短調 Op. 31/第3番 嬰ハ短調 Op. 39/第4番 ホ長調 Op. 54)】
今度は演奏前に椅子に腰掛けつつふと顔を上げ、P席へニッコリ微笑をくれたツィメさん。相変わらず綺麗な笑顔^^

そしてショパンになった途端に水を得た魚のように曲と演奏の親密さがぐっと増すツィメさん。曲が自然に呼吸していて、こういう演奏だとミスタッチも全く気にならなくなる(そもそもブラームスに比べてミスタッチは激減していたが)。
第一番がすごくよかったなあ。ツィメさんは43小節目のジャジャジャン♪の和音のところ、速度を落とさずに前の音からの勢いのままに弾いてくれるんですよね。youtubeにあがっている1991年の演奏から変わっていない。この曲はこの弾き方が私はとても好きなんです。中間部分の優しいメロディのところも、透明感のある親密さが感じられてよかった。ショパン自身は小さく細い音のピアニストだったそうなので重めの音のツィメさんのような演奏とは違ったろうと思うのだけれど、”ツィメさんのショパン”として説得力がはっきりと感じられるので聴いていて感動する。本当に好みな一番でした。極上だなあ・・・という言葉が何度も頭に浮かんだ。

二番もとてもよかったです(私は今日の演奏は1≧2>4>3の順で好みでした)。
三番はちょっと私の好みとは違い。長調のところがもうちょい温かで華やかな雰囲気の演奏の方が好きかも。
四番でいいなと思ったのは、中間部の愁いを帯びた緩やかな短調のメロディーのところ。ツィメさんって暗い音でも硬質な明るい透明感があるんですよね。でも不思議と濃厚で。なんというかポーランドだなあと感じた。決してたっぷり歌わせてるわけではないのですけどね。一方で、フィナーレはもうちょっと突き抜けてくれてもよかった気も。

【ブラームス:4つのバラード第1番 作品10-1(アンコール)】
ツィメさんには珍しく3曲のアンコール。でも今回はおそらくこれらの曲はプログラムの一部として弾かれたのではないかなと。直前まで曲目が決まらなくてor準備ができなくて本編に組み込むのが間に合わなかった曲を弾いてくれたような気がする。もちろん聴くことができてとても嬉しいです。
拍手に呼ばれて舞台袖から出てきたツィメさん。「Brahms」と仰って椅子に座り、客席も静まりかえり、いつ演奏を始めてもOKな状態なのに全く始める気配がない。まさかまた何か演説でもなさるおつもりかと思いきや、徐に客席に向かって「ほにゃらら」と。ツイ情報によると「opusジュウノイチ」だったそうで。突然のオチャメ  しかし今日のツィメさんはやたらご機嫌だったなあ。いやいつもご機嫌なんだけど、今回はオーバーアクションなくらい。心境の変化でもあったのだろうか。
このアンコールのブラームスはよかったな。激情と孤独のなかに沈みこような音の対比。
ブラームスで強奏が強いのはペライアと同じですね。
ラストの一音の沈潜するような響き、とてもとても美しかった。ちょっとポゴさんみたいで、ツィメさんぽくなく感じられて意外でした。あ、でもシューベルトの後期ソナタの二楽章のツィメさんの演奏はこんな感じだったな、そういえば。

第1番:アンダンテ、ニ短調
…この曲はドイツロマン派の詩人ヘルダーの「諸民族の声」のなかの「スコットランドのバラード〈エドワード〉」によった作品であり、「エドワード・バラード」とも呼ばれる。この詩は、父を殺したことを静かに問い詰める母、気持ちを荒立て、また罪の意識にさいなまれる息子エドワードの対話からなっている。
この詩に対しては、歌曲作曲家のレーヴェが歌曲(作品1の1)を書いており、ブラームスも、1877年にアルトとテノールのための2重唱曲(作品75の1)を作曲している。
(ピティナより)
へ~

【ショパン:4つのマズルカ第14番 作品24-1(アンコール)】
【ショパン:4つのマズルカ第17番 作品24-4(アンコール)】

この2つは、ポーランド人の血の中に受け継がれているリズムのようなものを感じた。舞踊的というのともちょっと違って、クラシックにジャズを少し混ぜたような重めの品のあるリズム感というか。自分がいまショパンの時代にいて、その音楽を同時代に聴いているような感覚を覚えました。
ところで実はツィメさんって現代に近い曲が似合うのでは、と密かに思っている私。ドビュッシーみたいな軽さのある曲ではなくて、バーンスタインやシマノフスキみたいな重めな感じの。

そういえば、今回もずっと低い鼻歌のようなものが聴こえていたのだけれど、あれはやっぱりツィメさんのハミングなのだろうか(ツイ情報によるとそうらしいのだけど)。ピアノから聴こえるような感じもするのだけどなあ。ツィメさんの大ファンだった女性の幽霊さんが傍らでピアノに合せて歌っているとか  なんて想像しちゃいました


※オマケ1
昨年のラトル&LSOとの『不安の時代』の演奏ツアー中のツィメルマンのインタビュー。ザルツブルクにて。わざわざ出発の時間を変更してインタビューに応じてくださったんですって
「サイモンは『彼がここにいた気がする』と、昨日も含めて、ツアー中に何度も言っています。バーンスタインはこの曲の中に信じられないほど存在し続けているのです。私はツアー中に何度も涙がこみ上げてきましたが、ラトルは音楽にのめり込んでいました。彼は全身全霊をかけていたので、そのまま死んでしまうのではないかと心配になるほど、すべてを捧げていました。私がいつも生徒に繰り返し聞かせるように『私たちが音楽の最初の犠牲者にならなければならない』のです。その信念が一番大切で、それがない人は職選びを間違えたと言えましょう」(『音楽の友』2018年12月号)
ツィメルマンだけでなく、ラトルもそんなに入れ込んでいたとは。
でもわかる。スケールが大きいのにとても温かな、すごくいい演奏だったもの。バーンスタイン、ニコニコして天国で聴いてくれていたと思う


※オマケ2
シャンシャン
サントリーホールに行く前に寄り道しました。
ひさしぶりに会ったら、すっかり大きくなっていてビックリ(そして初めて見た小庭の狭さにもビックリ・・・)。
まん丸のおっきな縫いぐるみが動いてるようにしか見えなくて、個人的には今のシャンシャンが一番可愛く感じる


この3頭身のフォルムがたまらん。。。。。。。


目をきゅっと瞑って幸せそうにクマ笹を味わうシャン ウマウマ
ツィメさんの演奏を聴いている最中に、一回だけふっとこのシャンの姿が頭に浮かんでしまい、ちょっと笑いそうになりました。


悩みなんてなさそうな顔でウマーなリーリー 嬉しそう


こちらもめっちゃ幸せそうに竹を食べまくっているシンシン シンシンを見るとやっぱりシャンシャンは全然小さいんだとわかる笑
みんなかわいいなあ

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