風薫る道

Who never feels lonely at all under this endless sky...?

エリーザベト・レオンスカヤ シューベルト・チクルスⅢ、Ⅵ @東京文化会館小ホール(4月8日、14日)

2018-04-27 19:45:49 | クラシック音楽



今月は、レオンスカヤ(8日)→ピリス(12日)→レオンスカヤ(14日)→ピリス(17日)の女性ピアニスト祭り、からのブロムシュテット×N響祭り(15、21、26日)でした。
それぞれがそれぞれに素晴らしかった

まずは、レオンスカヤの感想から。
シューベルト・チクルスの第3日目と第6日目に行ってきました。
8日は11時開演、14日は14時開演。以前ミューザでウィーン弦楽四重奏団を聴いたときも思ったのだけど、昼間の時間帯のリサイタルや室内楽って会場の照明をもう少し明るくすると爽やかでいいと思うのだけどなぁ


【チクルスIII】 2018.4.8(日) ※3列目中央
ピアノ・ソナタ 第2番 ハ長調 D279 +四楽章としてAllegretto D346
ピアノ・ソナタ 第13番 イ長調 D664 
ピアノ・ソナタ 第16番 イ短調 D845 
5つのピアノ曲 D459a より 第3曲 Adagio(アンコール)

小ホールは浩子さんの音楽会のときにアコースティックギターが響きすぎるほど響くように感じられたのでピアノだとどんな感じなのかなと思ったら、今度は意外なほどの響かなさ。なるほど、今日はピアノがヤマハなのですね。考えてみると私はヤマハのピアノをコンサートで聴くのは初めてで、これはなかなか貴重な機会では!・・・と思っていたら、すぐにサントリーホールでも聴くことになったのでありました笑(@ピリス)。

ヤマハの愛好者といえばリヒテルさん。という理由だけじゃなく、レオンスカヤって弾き方がリヒテルによく似てる、と一曲目から感じました(リヒテルは録音でしか聴いたことがありませんが)。突然深淵を覗き込まされるような強音や低音や、大きな全体としての曲の歌い方などが。
レオンスカヤのあの強音の和音の安定感にはビックリしました。女性でもああいう音が出せるんですねえ。聞くところによると彼女の手は大きいのだとか。

もちろんリヒテルと異なる部分は沢山あって。例えばリヒテルのシューベルトにある子供が無邪気に遊ぶような感じは、レオンスカヤのシューベルトからは感じられません。一方で、シューベルトの曲を聴いていると私は花畑の風景が見えることが多いのだけれど、どちらも野に咲く花ではあっても、リヒテルの演奏から見える花は小さく可憐な花々が咲き乱れる風景。レオンスカヤの方は、もう少し大きな花々が温かな春風にゆったりと揺れている様を感じました。浮かんだイメージはアネモネの花。この人のピアノは、そういうゆったりと歌うような旋律がものすごくいい。同時に、自然や人生の摂理として存在している避けられない暗闇や孤独も感じさせてくれるのがレオンスカヤ。
特にD664とアンコールは、忘れがたい演奏でした。素晴らしかった。

ところで休憩時間に公演中の話し声や「寝息」についての注意アナウンスが流れていたけれど・・・・・・、音のタイミング的にあれはレオンスカヤの鼻息だと思う。もっとも最終日には殆ど聞こえなかったので、座る席や彼女のご体調によるのかも。


【チクルスVI】 2018.4.14(土) ※下手K列
ピアノ・ソナタ 第11番 へ短調 D625
幻想曲 ハ長調 D760 《さすらい人幻想曲》
ピアノ・ソナタ 第21番 変ロ長調 D960
4つの即興曲 D899 より 第2曲 変ホ長調、第3曲 変ト長調(アンコール)

本日は、チクルス最終日。
ちょっ、初っ端から素晴らしいんですけど・・・
ご年齢(72歳)のせいか指がまわらない部分などはあるけれど、そんなことは全く問題にならない何ものかが彼女の演奏にはあるように思う。
深い闇からふわっと広がる優しく大きな華やかさ。
圧巻はD760 《さすらい人幻想曲》。この曲の中心の心から生まれ出てくるようなレオンスカヤの音。最初から最後まで息をするのも忘れるほどの素晴らしさでした。この曲ってこんなに表情豊かな、聴き応えのある曲だったんですねえ・・・。四楽章後半では鍵盤から飛翔していく鳥の翼が見えた。いやぁものすごいものを聴いてしまった。演奏が「この曲そのもの」に感じられた。この曲にこれ以上の演奏などあるのだろうか、と感じてしまった。ブラボー!

そんな渾身の演奏で体力を使い切ってしまわれたのか、彼女の本来のアプローチでもあるのか、この後のD960は気力で最後まで乗り切ったように感じられた演奏でした。もともと太く重めの弾き方をする方なので21番については私の好みの演奏とは違ったのだけれど、印象的だったところもあって。4楽章冒頭の超強音はリヒテルと同じ。これ私は苦手なはずだったのに、ツィメルマン以来これじゃないと物足りなくなってしまった。また最終楽章の一番最後の音を今日のレオンスカヤはダンッと勢いよく短く終えていて、そこになぜか強く「シューベルト」を感じたのでした。これ、とてもよかった。ここはツィメさんはもう少し長かったと思う。帰宅してyoutubeで調べてみたらここを短く切る演奏って意外と少なくて、リヒテルのプラハリサイタルや光子さんが同じ感じでした。今後この弾き方じゃないと満足できなくなってしまいそうだ。

アンコールは、即興曲D899の第二曲と第三曲。第二曲はポロポロではなく大きく流れる川のように自然に歌われるフレーズと地の底から響くような低音の暗さの対比が彼女ならでは。他のピアニストとは違う方向からの確かな「シューベルト」を感じさせてくれました。そして第三曲。私が感じる彼女のピアノの魅力がいっぱいに溢れた、優しく温かなシューベルトの花の歌。非常に非常に素晴らしかった

この最終日の21番の演奏はBSプレミアムの「クラシック倶楽部」で放映予定とのこと。んー、あの演奏をそのまま放映するのかしら・・・(後から撮り直したという噂もあるけれど)。今日の演奏ならD760+アンコールという組み合わせが絶対にいいと思う。


ぶらあぼインタビュー



毎年上野でこのポスターを見かける度にいいな~と羨ましく思っていた東京・春・音楽祭
ようやく参加できて嬉しい


Elisabeth Leonskaja: Schubert Impromptu op. 90 no 2 in E flat


Elisabeth Leonskaja: Schubert - Impromptu op. 90, no. 3 G flat

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