風薫る道

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カヴァコス・プロジェクト2021 ブラームス ヴァイオリン・ソナタ全曲演奏会 @東京オペラシティ(10月20日)

2021-10-22 04:26:46 | クラシック音楽




というわけで、東京芸術劇場でのヴァイオリン協奏曲に続き、東京オペラシティでのブラームスのヴァイオリン・ソナタ全曲演奏会に行ってまいりました。今年のカヴァコスはブラームス尽くし
このカヴァコス・プロジェクト。昨年に第一弾としてベートーヴェンのヴァイオリン・ソナタ全曲演奏会が予定されていましたが、コロナ禍で流れてしまいました。聴きたかった…。来年は第二弾としてバッハの無伴奏ヴァイオリン・ソナタ&パルティータ全曲演奏会が紀尾井ホールで予定されているそうです。
今日のロビーはヴァイオリンケースを背負った男女や子供達で溢れていました。音大生さん?と初めは思ったけれど、N響などのプロの楽団の奏者さん達も多かったようです。以前行ったムローヴァのリサイタルはこうではなかったので、カヴァコスはマニアというか同業者に人気があるのでしょうか

【ヴァイオリン・ソナタ第1番 ト長調 op.78「雨の歌」】
あらためて。
カヴァコスの弾くブラームスの音が好きすぎる。。。。。。。。。。。
言葉で説明しにくいけれど、自己陶酔系や自己顕示系ではない真っ直ぐで誠実な、でもしっかり熱は帯びていてスケールの大きな、蔭も明るさもある温かで深みのある音。こういう音のブラームスがものすごく好み。
ただ、youtubeで聴いていたユジャ・ワンとの共演の第1番のカヴァコスの伸びやかな演奏が私はとても好きで、その音色は今日の演奏でも同じではあったのだけど、この第1番の段階ではまだピアノの萩原麻未さんとの距離がしっくりしていなかったというか、熱が温まりきっていなかったように感じられました。

【ヴァイオリン・ソナタ第2番 イ長調 op.100】
この2番からは、お二人の音がノってきたように感じました。
いやあ、いいねえカヴァコスの2番!!
印象的な1番と3番の間に挟まれた綺麗な佳作程度にしか思っていなかった2番だけど、今日の萩原さんとのお二人の演奏を生で聴いて、2番がこんな名曲だったとは!!と耳から鱗でした。
3曲の中ではブラームスの最も幸福な気分が反映されている平和で明朗なこの曲。もともと私はブラームスがその音楽の中で時々垣間見せる外見に似合わない愛らしさが大好きなんですが、三曲のうちでそれが一番感じられるのもこの2番。外見に似合わない愛らしさというとカヴァコスにも通じますよね(←失礼)。特にブロムさんと一緒のときのカヴァコスはとっても可愛い(見てこの写真!)
1楽章の伸びやかな美音。。。。。
2楽章のヴァイオリンとピアノの掛け合い、楽しかったなあ。雨の歌より雨の音っぽいこの2楽章、大好き。カヴァコスの音も情熱的なところはしっかり情熱的だし。素晴らしかったなあ。。。。。美しかったなあ。。。。。
3楽章も長調の中に時々あらわれる短調の音色の切なさが素晴らしい。カヴァコスは長調もちゃんと明るい音色なんですよね。でも深みもあって。
ああ、耳福だ。。。。。ありがとうカヴァコス、ありがとう萩原さん。

(20分間の休憩)

【ヴァイオリン・ソナタ第3番 ニ短調 op.108】
この頃にはすっかりお二人の息も合って。萩原さんのピアノは主張は控えめだけどブラームスらしい飾らなさでパワーもちゃんとあり、私は嫌いじゃないです。カヴァコスの音の個性とも合っていたように思う。
一般的に、3曲の中ではこの3番が一番成熟した曲といわれているのではないでしょうか。私も名曲だと思う。
しかし2番の直後に作曲されたこの曲。幸福で明朗な2番から後年のブラームスらしい諦念を含んだ美しさへの移り変わりが、今日は聴いていてすごく切なかったな。季節が夏から秋へと移っていくような…。諦念と、そんな自分を鼓舞しようとする気持ちと…。
予習で聴いていたときはこれほどには感じなかったのだけど、こうして生で素晴らしい演奏で2番と3番を続けて聴くと、当時のブラームスの心の内が迫ってくるようで、胸が苦しくなりました。
2番と3番でブラームスの曲想がこれほど変化した理由として言われているのが、二曲の間に起きた親しい友人の死。
なんか自分に重ねてしまい、聴いていて辛かった。
後で気づきましたが、そういえば友人が亡くなるほんの四か月前に、すぐ近くの席でカヴァコスのヴァイオリンを聴いたのだった。
カヴァコスは現在53歳なので、ブラームスがこの曲を作曲したときと同年齢なんですね。

【ヴァイオリン・ソナタ イ短調 「F.A.E.ソナタ」 - 第3楽章 スケルツォ ハ短調 WoO 2(アンコール)】
このアンコールの演奏、もっのすごくカッコよかったですね!!!
私この曲を知らなくて、「誰の曲だろう。普通に考えたらブラームスよね。ブラームスぽい曲だし」と思いながら聴いていて、帰宅してから「F.A.Eソナタ」という1853年に作曲された曲だと知りました。以下、wikipediaより。
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F.A.E.ソナタ(Sonate F.A.E. [Frei aber einsam])は、1853年にドイツの作曲家であるロベルト・シューマンが友人アルベルト・ディートリヒとヨハネス・ブラームスとともに作曲したヴァイオリンソナタ。3人の共通の友人であるヴァイオリニストのヨーゼフ・ヨアヒムに献呈された。1935年出版。曲名のF.A.E.とはヨアヒムのモットーである「自由だが孤独に」(Frei aber einsam)の頭文字をとったものである。ドイツ音名のF・A・Eはそれぞれイタリア音名のファ・ラ・ミに対応し、この音列が曲の重要なモチーフとなっている。
ちなみにブラームスは、ヨアヒムのモットーに対応する「自由だが楽しく」(Frei aber froh)をモットーとしており、この略に対応するF-As-Fの音列を交響曲第3番で用いている。
初演は1853年10月28日にシューマン邸で、ヨアヒムとクララ・シューマンによって行われたと推測されている。
現在では、ブラームス作曲のスケルツォがたまに演奏されるだけで、全曲演奏の機会はほとんどない。
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へ~
個性の強い音楽家達が一緒に一つの曲を作ることなんて可能なのだろうかと思ったら、第一楽章はディートリヒ、第二楽章と第四楽章はシューマン、第三楽章がブラームス作曲なんですね。
ブラームスが「自由だが楽しく」(Frei aber froh)をモットーとしていたとは意外でした。1953年というとブラームスがシューマン邸を初めて訪れた20歳のときですね。9月30日に出会って10月28日にはこの曲を初演してるって、、、天才か、、、。若いブラームスの気合の入りようが伝わってきて、微笑ましくなる曲ですね。アンコールでこの曲を聴けて、私も救われた気分になりました。人生って最後だけに意味があるのではなく、その人が生きた全ての時間の集合体なのだと改めて感じます。





カヴァコスのインスタより。絵文字可愛い
日本のホールと聴衆をそんなに愛してくださって嬉しいな


ギリシャ大使夫妻もいらしていたようです。

Leonidas Kavakos & Yuja Wang play Brahms - Scherzo from FAE Sonata

ユジャ・ワンとのF.A.E.ソナタ。
しかしこの録音はヴァイオリンの音が小さくしか拾われていなくてもったいないな。生で聴くとヴァイオリンの音がものすごくカッコイイのに。ユジャ・ワンのピアノはさすがですね。彼女、こういう曲が似合う。

何度も紹介していますが、アンサイクロペディアの「ヨハネス・ブラームス」の記事がめっちゃ秀逸なので冗談のわかる人は見て!

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