風薫る道

Who never feels lonely at all under this endless sky...?

二月大歌舞伎 夜の部 @歌舞伎座(2月22日)

2015-03-09 13:03:14 | 歌舞伎




そんなわけで、2月の歌舞伎座は千秋楽前の最後の日曜日に、夜の部最初の『陣門・組打』のみ幕見してまいりました。
昼の部の『毛谷村』と『関の扉』もとてもとても観たかった。。


【一谷嫩軍記 陣門・組打】

菊之助の小次郎の清廉な空気が素晴らしく、こんな出来のいい息子なら直実もそりゃあ辛いだろう・・・と。
すっと伸びた背筋も表情も美しかった。あの陣屋の脇に今が盛りと咲いていた若木の桜そのもので。
でも小次郎だってまだ少年といっていい年齢なわけでしょう(これが初陣なのよ~)。彼の心の中にも色々な思いが渦巻いていなかったわけがないと思うの。お母さん(相模)のことだって絶対によぎったはず。そんなことを思いながら、それを決して表に出さないあの表情で言われるあの台詞を聞くと・・・もぅ・・・・
そして迷う直実に、「早く自分を斬れ」とはっきりと言いますでしょう。そのときの、父親よりも先に覚悟を決めているまっすぐな強い眼差しが・・・。
出来がよすぎるでしょうがぁぁぁぁ

で、直実が覚悟を決めて、小次郎の首を落としますよね。吉右衛門さんは葛藤を見せながらもちゃんとしっかり小次郎を見つめていて、目を逸らすことなく斬っていました。そこには武士と武士の、それ以上に父と息子の固い絆のようなものが感じられて・・・。
あぁ・・・・・

でもさらに胸に迫ったのはここからで。
敦盛の恋人の玉織姫(芝雀さん)が登場して、色々あって(芝雀さんゴメン、ほとんど吉右衛門さんばかり目で追ってしまってた・・・)、二人の遺体を海?に流しますよね。
それを一人見送るときの静かな時間。
声を殺した慟哭が切ない・・・。
そして幕切れ、小次郎の首を携え、客席に向かうあの表情。
彼は今何を見ているのだろう・・・と四階席から見ながら思った。きっと血を吐くような思いを抱えて彼はこの先も生きていくのだと思うけれど、直実は、吉右衛門さんの目は今、何を見ているのだろう、と。俊寛でも知盛でも、感じたこと。
吉右衛門さんってこういう、一人の、寂しい悲しみを感じさせる時間がとても似合うと思う。現世にとどまりながら、現世を超えた透明な美しささえ感じさせるような。
吉右衛門さんにここまで強く深く心を揺さぶられたのは、もしかしたら知盛以来かも。知盛以上とまでは言いませんけれど(どんだけきっちー知盛好きか)。いやでも、仮名手本もものすごくよかったしなぁ。そしてそもそも吉右衛門さんの場合は基準値がめっちゃ高いのであるが。
もうほんとに吉右衛門さん、大すき。

はじめて見た”遠見”は、やっぱり微笑ましくて、思わず頬が緩んでしまいました^^
またこの演目は、青い海、黒い馬、紫と桃色の二色の母衣といった色合いもとても美しいですね。

ところでチラシの説明に「敦盛を組み伏せ、討ち取ろうとしたところ、この若武者が実は敦盛になりすました小次郎であると知った熊谷は…」と書かれてありましたけれど、これ、ちがうよね・・・?
『陣門』で既に親子の間で小次郎が敦盛に成り代わる話し合いはなされていると思うのですけど・・・。だから熊谷は怪我をした小次郎(実は敦盛)を背負って去ったわけでしょう。

そして帰宅し、夜のニュースで三津五郎さんが前日の21日に亡くなられていたことを知りました。
三津五郎さんについては、改めて。

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