風薫る道

Who never feels lonely at all under this endless sky...?

『死んだ男の残したものは』

2022-12-07 23:55:23 | その他音楽

 

本日のニュース。「防衛費増額の財源 一部は増税」、「空自の名称『航空宇宙自衛隊』へ」。
わたし、思うのですが。
8月15日の終戦記念日も大切だけれど、同じくらいかあるいはそれ以上に明日12月8日も戦争について考える日としてしっかり子供達に伝えていくべきではなかろうか、と。
リメンバーパールハーバーとか自虐史観とかそういうことではなく、なぜどのようにして日本は戦争に向かってしまったのかということを、冷静に知的に、それぞれが考えたり幅広く調べたりする日として。
戦争を経験してソ連で捕虜にもなった私の祖父は、亡くなる前に「最近の日本の空気は戦前と似ている」と言っていました。祖父が亡くなったのは14年前だけれど、今の日本の空気は当時とは比べものにならないくらい戦前のそれに近づいているのではないかと感じます。

『死んだ男の残したものは』は、作詞が谷川俊太郎さんで、作曲が武満徹さん。
谷川さん(当時34歳)は1965年(昭和40)、”ベトナムの平和を願う市民の会”のためにこの詞を作詞し、友人の武満(当時35歳)に作曲を依頼。できあがった曲を渡すときに武満は「メッセージソングのように気張って歌わず、『愛染かつら』のような気持ちで歌って欲しい」という手紙を添えたそうです。気張って歌ってほしくない、というのはきっと谷川さんも同じだったのではないかな。常々「僕の詩は感情を込めすぎずに淡々と朗読してほしい」と仰っているし。
この歌、改めて聴くと、すごく”谷川さん”だなあと感じる。死んでいく人が男→女→子どもとさり気なく一つ一つ増えて(残っている人が減って)いくところとか、残したものが終盤で「生きてる私 生きてるあなた」になる流れとか。「他には誰も(何も)残っていない」の逆説的な希望とか。
戦後は音楽の道に進み世界を舞台に活躍した武満ですが、戦争末期には「日本は敗けるそうだ」と語った級友を殴り飛ばした軍国少年だったそうです(wikipedia)。

石川セリさんは武満作曲の歌ばかりを集めたアルバムも出されていて、それはセリさんの声に惚れ込んだ武満からの希望だったそうです。このアルバムには筑紫哲也さんのNews23のエンディングで使用された『翼』という歌も収録されています(作詞作曲ともに武満)。
セリさんの『死んだ男の残したものは』は、この歌でよくある深く感情を込めた歌い方とは全く違いますね。私もこの歌は大仰に歌うよりも淡々と歌う方が、より言葉のもつ力が聴く者に届くように感じます。

谷川さんとのコンビのアルバムがいくつかある小室等さんは、この歌を今年9月の国葬反対集会で歌われていました。
またジブリ映画で谷川さん作詞の歌を歌った倍賞千恵子さんも、この歌をレパートリーにされています。

さて、と。
私は明日はシュターツカペレ・ベルリンの演奏会に行ってきます。ドイツと日本というとワールドカップでも盛り上がっていましたが、81年前の明日を思いながら、こんな風に彼らの演奏会を聴きにいくことができる日常は決して当たり前に守られているものではないのだと改めて感じます。この「守る」を”どう守る”べきなのか、私も考えたいと思う。答えは簡単には出ないけれど。


先ほど見つけたこれもいいな。高音きつそうだけど、それもいいというか。この歌は女性が歌う方がいい気がする。
しかしこの曲を一日で作った武満、天才だな。全く同じメロディで、歌詞によって絶望も希望も表してしまうとは。気負わないシンプルな歌詞とともに、言葉と音楽の力を感じます。谷川さんも武満も30代半ばでこんな歌を作っちゃうのだものなぁ。。。

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