風薫る道

Who never feels lonely at all under this endless sky...?

秀山祭九月大歌舞伎 『一條大蔵譚』 『吉野川』 @歌舞伎座(9月6、11日)

2016-09-26 22:50:15 | 歌舞伎

 

今月は『吉野川』を6日に、『一條大蔵譚』を11日に観てきました。
以下感想は昼の部→夜の部の順で。

【一條大蔵譚】
今回の吉右衛門さんの大蔵卿はこれまでと違うとあちこちで評判で。
そうは言っても、私が見ても気づかない程度なのであろうなぁと思っていたら。

・・・一体何があったんですか吉右衛門さん

全然違っていた。阿呆の演技が。
吉右衛門さんの大蔵卿を見るのはこれが3回目で、今までの大蔵卿(前半)は私にとって「阿呆のフリをしていても目がマジなので笑えない」(吉右衛門さんが敢えてそうしていたのか、そういう演技しかできなかったのかは不明)でした。
では、今回の大蔵卿はというと――

「ほんまもんの阿呆みたいで笑えない」

でした。。。
やっぱり吉右衛門さんの阿呆は私には笑えないみたい。。。
今回の大蔵卿、巷の評判はとてもいいのですよ。確かに今までと比べて余分な力が抜けて自然体な感じで、それについてはとてもいいと思ったのですけど。
自然体になっているがゆえに、ほんまもんの阿呆に見えてしまった。。。
あと、阿呆の表現(半開きのお口と糸のように細めたお目々)がワンパターンに見えてしまったの。。。なので檜垣は見ているうちに次第に飽きてきてしまって。。。
やっぱりここは、背中に春風背負ってる仁左衛門さんの大蔵卿が私は好きです。。

後半。奥殿。
この大蔵卿は、これまで同様、すんごかった
3回目だからさすがに飽きるかと思いきや、いいものは何度見てもいい。何度見ても感動する。後半の仁左衛門さんの大蔵卿も大好きだけど、この大蔵卿も本当に素晴らしい。
前回も思ったけど、どうしてあんな演技が出来るんだろう。大袈裟な演技は全くしていないのに、伝わってくる大蔵卿の人生の悲哀。その加減が本当に絶妙で。なのに小さく纏まることなく大きい。
ゾクゾクしました。改めてこの大蔵卿は国宝ものだと心の底から思う(吉右衛門さん国宝だけど)。
今回は幕切れの生首ポーンは一度もやらずに、手の中で転がすだけでした。うん、いいと思うな。いくら阿呆のフリとはいえあれはちょっとやりすぎな気がするもの。
播磨屋のこの最後に阿呆に戻る型、いいですよねぇ。吉右衛門さんにとても合っているし、上手さが際立つ。後半の吉右衛門さんの大蔵卿、ほんっっっとうに大好きです。これで前半の阿呆が私好みだったら最高なのに。。。

魁春さんの常盤御前、今回も素敵だった。気高さと温かみと内に秘めた強さが本当に素敵。大蔵卿との愛も感じるし(男女の愛じゃないけど)。
鬼次郎は菊之助、お京は梅枝

ところで幕見を観終わったときに周りの若い女の子達が「やっぱり歌舞伎ってむずかしいねー」「よくわからなかった」と言っていました。確かに粗筋が頭に入っていなかったら、全くわけわからない話ですよね

【妹背山婦女庭訓~吉野川~】
巷の評判が絶賛を超えた絶賛の嵐で、「自分が見たものがいまだに信じられない・・・」「一生に一度出会えるか出会えないかのものすごい舞台を見てしまって、これからどう生きていけば・・・」「大泣きしすぎてメイクがぐちゃぐちゃ・・・」というようなツイがわんさか流れていたので、めいっぱい期待をふくらませて行ったのです。
それもいけなかったのかもですが・・・。
正直な感想を書くと、そこまでの感動は私は得られなかったのです。。。
いえ、決して悪くはなかったんです!
ただ、吉右衛門さんも玉三郎さんも、お二人ならこういう演技をされるだろうなぁと想像していたとおりの大判事と定高で。やっぱりそのとおりのものが見られたなぁ、という感じで。。。すみません、自分勝手な理由でございます。。。
菊之助(雛鳥)と染五郎(久我之助)はとても美しくて、この話の悲劇性が増しますね。でも二人の間の愛情はあまり伝わってこなかったな。。
吉右衛門さんと玉三郎さんの抑えた演技はとてもいいと思いました。吉右衛門さんってこういうお役が本当にお上手ですよね。「いかめしく横たえし大小、倅が首切る刀とは五十年来知らざりし」のところは、ちょっと涙が出そうになりました。
舞台の真ん中に流れる吉野川と両花道。この舞台装置を一度見たいとずっと思っていたので、嬉しかった 竹本の左右の掛け合いも迫力があって素敵でした(背山担当の葵太夫さんのツイは、今回も大変参考になりました!)。
そういう装置や作品や芝居の雰囲気は、本当にとても好みだったのですけど。
うーん。。。
もしかしたら私は吉野川の素晴らしさをまだ十分に理解できていないのかもしれません。もったいないことをしたかしら。

吉右衛門さん、11月の国立劇場で七段目をされるんですね。吉右衛門さんの由良之助は大好きなので、ぜひ観に行きたいな。

※吉右衛門が語る「秀山祭九月大歌舞伎」

Comment
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする