風薫る道

Who never feels lonely at all under this endless sky...?

『マシュー・ボーンの眠れる森の美女』 マチネ @東急シアターオーブ(9月18日)

2016-09-22 02:32:52 | バレエ




例によってキャストは当日発表なNew Adventures。行ける日は限られている中、マーニー伯爵は絶対に外せない&できればレオはトレンフィールドで(前回唯一見逃したザ・スワンだから)。というわけでキャスト発表を待って、マチネに当日券で行ってきました。

とはいえこの作品、DVDで見たときはまっっったく好きになれなかったんです。マシューというかイギリス?のドライ&皮肉なユーモアばかりが印象に残ってしまって。コメディ要素もあまり面白いと思えなかったし。なので今回の来日公演も実は行こうかどうか迷ったのですけど、スワンであの大感動をくれたマーニーが渋谷で踊っているのに観ないなんてやっぱり有り得ない、と。
当日券は発売15分前くらいに並んで、S席(12,800円)の9列目センターをゲット。満席でしたから運が良かったんだと思います。
結果、生舞台は映像とは華やかさも迫力も熱も別次元で、いやぁ楽しかった!強くて美しくて傲慢で血に飢えたマーニー伯爵を目の前でたっぷり堪能できてもう大満足。

今回改めてクリストファー・マーニー(ライラック伯爵)の踊りが好きだなぁと感じました。スワンレイクのときもそうだったけど、体全体での表現力が素晴らしいですよね。彼の表現したいものが客席にしっかり伝わってくる。指先まで全ての動きが美しいし・・・はぁ、ウットリ・・・
スワンのときは観終わったとき切なくて胸が苦しくてうわぁぁぁぁぁとなってしまったので、今回はドSで最強な役(こういうのも似合う!)でなんだかほっとしちゃいました笑。気楽に見ることができた。スワンの彼は、別の世界に行ってしまってもう戻ってこられないように見えたから。

結婚式でのライラックとカラドック(アダム・マスケル)、可愛かった お互いしっかり目を合わせてワインをクイって それも3口とも同じタイミングって、どんだけ気が合ってるんですか(警戒&牽制です)。
ところでこの結婚式は、やっぱり生贄の儀式なのよね。カラドックってオーロラのことを本気で好きになったようにも見えたから自分と同じ闇の精にする儀式なのかとも思ったけど、彼の肌にははっきりと「avenge」って書いてあるし、やっぱり母親の受けた屈辱に対する復讐の生贄なのかなぁ。それとも彼女を永遠に自分のものにしてしまおう的な屈折した愛情とか?avengeっていうのは照れ屋さんのカモフラージュ?(それならそれでいい)
ところで母親の復讐なら、オーロラの成人パーティのときになぜ最初からグサッとやらなかったのかしら。薔薇の棘が刺さっても100年眠るだけなことは母親から聞いて知っていたろうに、それでも薔薇を使ったのはなぜ?呪いは既に赤ん坊のときにかけられてるから、順を追って実行するしかなかったのかな。遠回りでも100年眠らせて伯爵の魔法を解除してからじゃないと殺せなかった、とか?だから今すぐはムリだけど、100年たったら生贄にしよう~的な?
そしてカラドックはともかく、カラボスはなぜ死んだのかしら。基本不死身なんじゃないのか?「died in exile」ってご都合主義すぎないかい?
伯爵はオーロラを救えたことよりも、宿敵カラドックを倒せたことが嬉しくて仕方なさそうに見えたのは絶対気のせいではないはず笑。この人カラドックを倒すためにオーロラの件を利用したんだよ、きっと。

結婚式にいた赤服の招待客達。あれは伯爵が自分の配下を忍ばせていた、のではないよねぇ・・・?だとしたらカラドックがマヌケすぎるし。あの死に方だけでも十分マヌケなのに。
あるいは、カラドックの力に支配されていたモブ達とか?だから彼が短剣で刺された途端に、伯爵に寝返ったとか?ボス交代劇的な?私はその方が好みだな。スワンレイクみたいで。
あるいは、純粋に「刺されたカラドック様を運んでいる」という解釈もなくはないのか。んー、でもなぁ、苦しんでいるカラドックを複数でざわざわと運んでいくあの様子は、弱った獲物を巣で喰おうとしている姿にしかやっぱり私には見えないわ。伯爵「そいつはお前たちの好きにしな」的な。

さて、本日のオーロラ(コーデリア・ブレイスウェイト)とレオ(クリス・トレンフィールド)ですが、とっっってもよかった
二人が愛に溢れていて。恋人をリードしちゃう勢いのお転婆で可愛いオーロラと、彼女に振り回されながらも実は優しい愛情で彼女を包み込んでいるちょっと不器用そうなレオ。DVDの二人より、私は今日の二人の方があったかくて好みでした。
テントの中からレオが出てきたとき、「ああ、あれから100年たったんだな」ってその年月が自然に実感できたのは驚きました。特にそういう演技をしていたわけでもなく、笑うシーンのはずなのに。でもこのレオなら100年の間、じっとオーロラが目覚めるのを待つだろうな、ということが当たり前に感じられるレオだったんです。二人の再会場面も、この二人からは100年という時間が本当に自然に伝わってきて、お互いがちょっと戸惑っている感じが切なくて、温かくて、その繊細さが大変よかったです。ホロリときてしまった。
そうそう、トレンフィールドは伯爵に血を吸われるときに、目をギュー(>_<)って瞑るの。お前は注射される子供か笑。そして浮かべる微笑。ヴァンパイアになったのね、ということがわかる。

コーデリアのオーロラは活発で明るくて、彼女の周りだけ太陽のよう。しっかり自分の意思を持った自由な感じがとても魅力的で、私的に理想のマシューのオーロラでした。マシュー版のオーロラはロイヤルファミリーの血筋じゃないのよね。カラボスがどっかから持ってきた子だから、行儀悪し笑(のっぺらぼうオーロラも片肘ついて寝てるし笑)。てか王&王妃はなんでカラボスに頼んだのかしら。ライラックに頼めばよかったのに。それとも誘拐みたいなマネはライラックはしてくれないのかな(そんな道徳心があるようには思えないが)。

気になったところといえば、2幕のレオ。DVDでも思ったけど、100年も待つほど愛してるくせに、周りから容疑者扱いされそうになったら「お、俺は何もしてないし・・・」と保身に精一杯で、倒れてるオーロラを放っておくってどうなのよ。お前はアルブレヒトかっ。

DVDではキモいだけに見えた赤ん坊パペットは、生で見ると意外に可愛かった 踊るヴァンパイア達を体を揺らして楽しそうに眺めてる様子が、キモ可愛い笑。技術的にはいくらでもリアルにできるのにそうしないところ、私は好きです。
※一幕ではレオ役のダンサーが黒子をやるんですって!by Dominic Northのツイ。本当にここのダンサー達は働き者ですね~。

あとは~。そうそう、2幕のガーデンパーティの場面で、下手の召使(Bertie?)の演技がイチイチ細かくて楽しかったです。顔を顰めて虫を手で払ってたら、虫がティーカップの中に入っちゃって、それを摘まんで取ってから奥に引っ込んで紅茶を入れ直してきたり。DVDに映っていないこういう場面が見られるのも、生舞台ならではですね。
あとオーロラが窮屈なブーツを脱いだときに、求婚者の一人が臭そうに顔を顰めてハンカチを鼻にあててた笑。足の臭いオーロラなんてマシュー版以外に絶対にいないであろう笑。

ライラックは古典と同じく、城全体を眠らせたんですね(公式サイトのsynopsis)。じゃあ王&王妃も100年眠ってるのか。レオもあと一歩早ければみんなと一緒に眠れたのに間に合わなかったから、伯爵がヴァンパイアにしてあげた、と。
眠りに支配された敷地内をオーロラのもとへと導いていくライラック伯爵。この場面、美しくてウットリしちゃいました。この作品は本っ当に衣裳や舞台装置が素敵 

DVDで見たときはキモい赤ん坊の再登場で笑うに笑えず最っ悪に思えたラストシーンも、思わず感動しちゃいましたよ。ダンサーさん達に感謝です。スワンレイクのようにぐわぁぁぁぁぁああああといつまでも後を引いて日常生活に支障が出ちゃうような作品ではないですし、ツッコミどころも沢山あるような気もしますが、生で観られてよかったです。てかマーニーを再び目の前で見られてほんっと――――に嬉しかった。彼、今回でしばらくカンパニーを離れるそうで・・・(Ballet Centralの芸監になってたのね)。彼がマシュー作品を踊る姿、もう二度と見られないのかなぁ・・・。インタビューではまた時々踊りたいって言ってるけど、それが来日公演とは思えないし・・・ 今37歳だから、また見られるチャンスがあるといいなぁ。

ところで海外のレビューを読んでいると「良い作品ではあるけれど、チャイコフスキーの音楽がイジりすぎて台無しになっているのが良くない」というものを時々見かけますね。そういう感覚もわかる気がします。でもこういうバージョンもあってもいいのではないかな。客にとって選択肢は多いに越したことはないし。まぁそれも承知の上で好みではない、ということなのだと思いますが。
しかし好みは別にして、マシューボーンの「まるでその作品のためにその音楽が書かれたように感じられる」作品の構築力は誰もが認めるところだと思います。スワンレイクもそうだったけど、今回も鮮やかでした。

次回の来日は2年後でしょうか。
でもそのときはマーニーはいないのか・・・・・・・・・・・・。


※マシュー・ボーンの「眠れる森の美女」予告編(シネマ)

今回のArdor(フェアリーの一人)も鎌田真梨さん。DVDで見たときにとても素敵だったから、生で見られて嬉しい♪ あと今回のキングはGlenn Grahamだったんですけど、素敵だった。王妃様こんな旦那さんでいいなーって思った笑。
DVDでは映っていないけれど、舞台の幕はゴスロリ調なドレープカーテンの絵に、白の照明で「SLEEPING BEAUTY」の文字。雰囲気いっぱいで素敵でした 今回は場内写真撮影禁止で残念

※公式サイトインタビュー:Interview in the scotsman

※Matthew Bourne: 'I didn't want anyone to think I was jumping on a vampire bandwagon'

※BBC: Why Matthew Bourne ballets are not just for Christmas

Sleeping Beauty Resources for Teachers and Students
この中のマシューのQ&A、彼の作品に対する見解がわかって面白いですよ。Synopsisも参考になりますし、今回プログラムを買っていない方はぜひ。

Dancer of the Week (2 September 2016)
What’s your favourite role that you have performed as so far, in the Company, and is there another New Adventures production that you would love to take part in?
   Each part has meant a lot to me in different ways but the Prince in Swan Lake is my favourite by far. It was the first principal role I got and the one I have done the most. It pushes you as an actor and challenges you as a dancer in the sense that the audience are seeing the story through your eyes. There isn’t a moment onstage unaccounted for and it draws on you to give yourself entirely, which when you do gives back incredibly. I remember feeling utterly drained at the end of every show, mentally as well as physically but then loved getting up the next day and doing it all again. It’s a blessing and very rare to find something like that.
   As for future productions I feel sad to say I won’t be involved with The Red Shoes. I had to make a big decision and will instead be taking up the Artistic Director role at Ballet Central, which is the touring company of Central School of Ballet. I hope to be back now and again to perform with the company in the near future though. 
(Christopher Marney)
クリスにとってもやっぱりスワンレイクの王子は特別だったんですね・・・。あ~、また観たいよぉ。。。。。どうして映像が残っていないのぉ~~~~~。。。。。。。。

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