散 歩 B L O G

歩くことが唯一の趣味ですから。

14時間首都圏半周

2023-06-18 | Weblog

6:23 東京駅

梅雨どきは天候不順で散歩もままならない。そう思ったもんだから「のんびりホリデーSuicaパス」という首都圏1日乗り放題の企画乗車券を購入して週末(6月18日、日曜日)に備えた。快適な車内で読書に勤しもうという魂胆である。早朝に起きたら快晴じゃないか。そうなるともう、暑くて散歩もままならない。予定通り鉄道で読書としゃれこむ。

従来は梅雨になると紙のきっぷで読書三昧を試みたものだが、ついSuicaで乗り降りしてしまい精算がめんどうになるので、今年はSuicaにデータ登録するタイプにしてみた。すると何ということでしょう! Suicaの表面にきっぷと同じ印刷が……これ使い終わったら消えるかな? 消えないだろうなあ、何らかのパスをつぎに印刷するときまで。(チャージで消えたらすごいけど期待できない)

それはそうと、東京駅で朝食を済ませるつもりでBOOKS&CAFEのお得な朝カレーをめがけて足を運んだら、7時オープンらしく断念。ちょっと前(コロナ以前)は早朝に朝食を取れる店が駅構内に複数あったと思う。回転寿司で定食が回ってくるところとか、いろいろ。現在そういう楽しみは皆無らしい。

7時までボーッと待つのも何なので、6時44分の土浦ゆき常磐線に乗っちゃう。朝早い電車は空いてて、部活の人ぐらいしか乗ってない。どこで練習試合するつもりかバックパックでかい。目的もなく「のんびりボリデーSuicaパス」で朝から阿呆列車してる大人はどうも自分ぐらいしかいないようだ。

7:27 我孫子駅

昭和15年ごろ、我孫子の彌生軒で山下清が5年ほど働いていたとホームに掲示してある。画伯になった昭和35年、当時の手賀沼を思い出して描いた絵を彌生軒が駅弁の包装紙に使い、昭和38年に彌生軒を訪ねた画伯の写真や直筆の証言をあますところなくパネルにして、彌生軒(弥生軒)はいま立ち食いそば店を営んでいる。

そういえば東京駅で朝ごはん食べそびれていたので、400円の天ぷらそば(かき揚げそば)をここで立ち食い。隣で駅の職員が何やら巨大な鶏の唐揚げ(フライドチキン風)が乗ったそばに七味をしこたま振って食べていた。毎日そんなことばかりしてるのかと、知らない人のことながら心配になり、横目でメタボ体型をチェックして立ち去る。

7:57 手賀沼

山下清が若いころ愛して20年後に記憶で描いた手賀沼をちょっと見てみようと駅から歩いてきた。まだこの時間ならそう暑くないから歩いても大丈夫なんだな。歩いてきたら以前ここまで歩いたことあるの思い出したんだな。たぶん15年ぐらい前じゃないかな。山下清は20年たっても手賀沼を覚えていたのに、ぼくは忘れてました。

この時間の手賀沼は涼しい風が吹いて気持ちいいので、列車の中で読んできた本の続きをベンチで読む。とても居心地がいいので、もう「のんびりホリデーSuicaパス」で阿呆列車するのやめて、ずっとここにいようかなとさえ思う。しばらくすると風が止み、蒸し暑くなってきたので、また列車に乗るため駅のほうへ。まるで猫だ。

駅前のパネルを読むと、手賀沼のほとりには明治・大正のころ文化人がいろいろ住んでいたようだ。なかんづく芸者をはべらせて威張る白樺派の写真が目を引く。左から武者小路実篤、劉琮悦、志賀直哉らしい。沼の近くに別荘を持った柔道家の嘉納治五郎をしたって、この人たちは移り住んできたという。

8時46分の成田線に乗って成田へ向かう。列車には45分ぐらい乗っている。だんだん気温が上がっていくから、なるべく外を歩きたくないんだけど、乗り物にばかり乗っているのも何となく気詰まりなので駅についたら外に出て、一応そこらへん歩きまわる。カンカン照りで、湿度が高い。

9:52 成田山新勝寺

うなぎの店に殺到する人々が行列をなしているのと対照的に、お寺はといえば閑散としている。参道でうなぎの整理券を9時30分ごろから配って、10時になると番号が若い順に呼ばれてうなぎを食うらしい。我孫子でかき揚げそばを食べたばかりだから、うなぎなんか食べて食べられないことはないけれど、カンカン照りの道端に並ぶのは絶対いやだ。

参道をゆく人によく見えるように、うなぎを次々とさばく人たち。魚のわりに血が獣のような色してる。だから精がつくのか。あの血はしかし生で飲むと毒だと聞いた。めんどくさい生き物だなあ。さばこうとすると暴れるし。それにしても成田山新勝寺の界隈は座って休める茶店が少ない。テイクアウトばかりで困ったものだ。

駅に戻って千葉方面の列車に乗ろうと思ったのに、踏切で列車が人を轢いたとか轢かないとか。安全確認のためダイヤがぐちゃぐちゃ。いつになったら列車が動くやら。動いたら動いたで混雑必至なので千葉方面の列車はあきらめ、もういちど我孫子から常磐線に乗ることにした。

だめだこりゃ……10時44分の我孫子ゆき列車の中で読み終わる。常磐線の新松戸で乗り換えて武蔵野線でぐるっと首都圏の北部を回るつもりが、快速は松戸まで停車せず、そのまんま北千住まで戻ってきてしまった……だめだこりゃ!

12:07 日光街道の千住宿

松尾芭蕉が奥の細道で泣いたところだ。船でここまで運ばれてきて、いざここからは徒歩で参ろうというところで寂しくなり、先行きが不安で泣いたと書き残している。もっとも、ウケようと思って盛るだけ盛ってる疑惑はぬぐいがたし。

そろそろお昼にしようと思ったんだけど、日曜日のせいか飲食店にとにかく空きがない。チェーン店に人がごった返し、どうも食欲が失せる。OIOIの片隅の人の流れから外れた目立たないところで営業してるサラダボウル専門店だけ、席があまってて静かに座れるので柄にもなく蒸し鶏とりんごのサラダをもしゃもしゃ喰んで、駄馬になった気分……ヒヒーン!

北千住から西日暮里をへて山手線で田端へ、そこから京浜東北線で大宮に向かう。もうすっかり旅気分なし。都内の移動という感じ。やはり新松戸から武蔵野線で大回りしたほうが乗り鉄の楽しみは大きかったにちがいない。いや、乗り鉄じゃなかった。ただの阿呆列車にすぎなかった。

14:32 大宮

鉄道で移動するのに飽きてきた。大宮のシャノアールでコーヒーゼリーでも食べようと思ったのだが、シャノアールは何年か前にベローチェに変わったことを忘れてた。黒猫(シャノアール)は絶滅危惧種になってしまった。コーヒーゼリーはどっちにもあるから別にかまわないけども。

コーヒーゼリーを食べたあと、ブックカバーをかけて大事に持ち歩いている文庫本をひろげ、フランスの短編小説を一つ二つ目でひろう。気がすんだので駅に戻り、阿呆列車のつづきを再開する前に、駅構内の本屋さんに寄ってみる。

翌日(6/19)発売と聞いていた書き下ろし小説が、もう本屋さんに並んでるのを見てはやく読みたくなってしまい、『クレイジーDの悪霊的失恋』を買って読み始める。漫画家の荒木飛呂彦に心酔してるライトノベル作家の上遠野浩平が、漫画本編の休載中に穴を埋めるかのように原作を担当したスピンオフ漫画の設定で、みずから手がけたノベライズ……こういう場合「ノベライズ」でいいのかどうか。

16:15 川越

大宮から川越をへて八王子に至る車内で6章まで読み終えた。残り7章と8章をどこかで座って読みたいと思って、八王子駅の外に出た。

17:54 八王子

駅前にビルが立ち並ぶ八王子は、街がとことん整理されているようで猥雑さが色濃く残る不思議なところ。とりあえず本を読み終えるためルノアールに入る。

はじめのうち散歩ついでの読書だったのが、夕方になるにつれ読書メインでほとんど出歩かなくなった。19時ぐらいに読み終えて中央線で東京駅に向かう。

20:23 東京駅

首都圏を半周して夜の東京駅に戻ってきた。「のんびりホリデーSuicaパス」の期限は24時。この後どこへ行ったのか、それは秘密です。

 

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