今年の梅雨は九州や関西、東北などを豪雨が襲うわりに関東はさっぱり降らないで、むしろ猛暑日が続くありさま。夏じゃないのか? 熱中症にならない程度に、滝でも冷やかすしかないのでは? というわけで修善寺から河津行きバスに乗り、浄蓮の滝をめざす。
2月に河津桜を見物したとき、天城越えしたの道の先に浄蓮の滝という道の駅みたいな施設があるのを見かけた。それは道の駅ではなく、旅の駅という曖昧な存在だったが、観光するには便利そうだから今度いつかバスで寄ろうと考えた。その旅の駅へ、修善寺から30分ぐらいバスに揺られた。
非常にわかりやすく、浄蓮の滝への入り口が示されている。ついでに伊豆の踊子の像もある。伊豆の踊子は場所がちょっと違うのではないだろうか? 首を傾げながら滝のほうへ吸い込まれていく。何やらジョージョーと水の音がする。そっちのほうへ下っていけば滝があるんだろう。
山道を歩く覚悟をして、それなりの装備を整えてきたのだが、このような階段を下ればすぐに滝が姿を現わす。サンダル履きでも大丈夫なくらい観光地として整備されている。寝乱れて隠れ宿、九十九折、浄蓮の滝……舞い上がり揺れ落ちる肩の向こうにあなた、山が燃える〜〜という道行を想像したのに、そりゃもう拍子抜け。
股下を覗き込めばジョボジョボ音を立てて溢れてる。何があっても、もういいの。くらくら燃える火をくぐり、あなたと越えたい天城越え。テレビの女が歌う。隠しきれない移り香が、いつしかあなたに染みついた。誰かに盗られるくらいなら、あなたを殺していいですか?
作詞 吉岡 治
作曲 弦 哲也
歌唱 石川さゆり
2番は省略しておこう。山が燃えるというのは情交の表現らしいけど、昼間からそれどころではなく気温の上昇で本当に山が燃えそうだ。オーストラリアの山林火災か。不謹慎な演歌だな。滝壺の下流では男女が鱒を釣っている。鱒が釣れるというのは別に情交の表現ではなく、文字通りの意味に他ならない。
肩の向こうにあなた、鱒が釣れる〜〜ってか? 省略するはずの2番はたしか、わさび沢……隠れ径、小夜時雨、寒天橋、恨んでも恨んでも、からだうらはらあなた、山が燃える〜〜という狼藉ぶり。昭和のテレビ番組はゴールデンタイムにもかかわらず破廉恥なアダルト表現をお茶の間に流し放題だった。時代劇にも不要不急のおっぱいがよく登場した。
鱒を釣る流れの脇に、歌にも出てくる「わさび沢」があった。わさび沢、隠れ径、小夜時雨、寒天橋、と石川さゆりが苦悶に顔を歪め、恨んでも恨んでも、からだうらはらあなた、山が燃える〜〜と絶頂したふりをする「わさび沢」だ。世界農業遺産に国連食糧農業機関(FAO)から2018年、認定されたとか。
伊豆の踊子に出てくるような場所は、やっぱりこのへんじゃなくて修善寺から天城峠をへて下田のほうへ抜ける道じゃないかと思う。旅の駅から天城峠のほうへ遊歩道が伸びているようなので、こんなに暑くなければ(いっそ雨降りなら)歩いてみようかと密かに計画していたけど、いかにも熱中症になりそうなので敬遠した。また今度。
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