散 歩 B L O G

歩くことが唯一の趣味ですから。

北海道の北海堂

2013-03-29 | Weblog
このまえさっぽろにいったとき、読む本がなくなりそうだったので本屋さん探して夕方キョロキョロしてたら、すすきののエッチなお店や飲食店に囲まれて古書店がさりげなく営業してるのを見つけた。このあたり、夜の街ということなのか喫茶店の宮越屋も15時から深夜までの営業だったり、つけ麺の店も19時から深夜までの営業だったり、時間の感覚が他の街と少し違う。古書店だって、ちゃんと確認したわけじゃないけれど昼下がりにシャッターそっと開けて夜遅くまで営業してるかも……南6条3丁目か、南5条3丁目あたり。その名も「北海堂」……覚えやすい!


これは狸小路のリーズナブルな居酒屋「魚平」

百円の文庫本を1冊、読み捨てるつもりで選んでレジに持っていくと、歯並びの悪い白髪の店主がタイトルをじっとにらんで考え事している。まさか、値踏み? 百円ですよ百円って心の中で唱えていると、奥付をめくって金額をたしかめた。ぼくのほうも、ずいぶん時間かけて1冊の本を選んだから、百円でガッカリさせちゃったかな……と思っていると、おとなしそうな白髪の店主が急にいっぱいしゃべりだした! 「本というのは出会いだから、気になったときに買っておかないと後悔する。うちの店はくだらない本を置いてないから、こないだも3万円もったお客さんが1万2千円の本を買おうかどうしようか迷って、1時間かそこら飲みに行った帰りに余ったお金で本を買おうと戻ってきたら、もうその本は売れていた。売るのが惜しくなって隠してるんじゃないの? って言われたけど、隠すはずはない。それから」……百円払って帰りたいんだけど、なかなか解放してくれない。この話、長いのか!


昨年の夏のことでした……

「いまはバブル期と同じような本ばかり書店に並んでいる」「……新刊書店ですか?」「そうだ、幸せになる方法やお金持ちになる方法ばかり、棚に並んでいるだろう? バブルの頃と同じだよ。そんな本ばかり読んでた連中がバブルはじけてヒドイ目に遭ったのを覚えているだろう? いまに同じことが起こる」「たしかに読みたい本が少ないですね……(なぜか話を合わせる)」「百円の本でも3つ、いいことが書いてあったら儲けものだよ。気になったところのページ数を何かの紙切れにメモして空き箱か何かに保存しておいたら、いつか役立つ。本に書き込んじゃダメ。そうすれば身になるから人に面白おかしくしゃべれる。ぼくなんか、そうしてるから、本の表紙を見ただけで面白いこといっぱいしゃべれるでしょ? お客さんに喜ばれるの。こないだも山田五郎さんがきて、こんなにしゃべる古本屋さんに会ったことがない! って感激してた。だから、ね?」……ねって言われても!


ひまつぶしに百円の文庫本が読みたいだけです

ここまでのおしゃべりにダジャレが30個ぐらい混ざってるんだけど、ダジャレは記憶に残っていない。歯並びが悪いせいか滑舌がよくなくて、ダジャレなのか何なのか「はい?」って聞き直さないとわからなくて、笑うに笑えないのだ。ダジャレを言うと店主がドヤ顔するから、ウケたフリをする。なんでウケたフリまでして、百円の文庫本を売ってもらおうとしているんだろう? ひまだから構わないけど……。「値段見てしゃべってるからね。あと電子書籍はダメね。読んでも記憶に残らないから。うちにきた京大の先生がIBМと電子書籍の開発やってるっていうから聞いてみたら、紙の本しか読まないってね。ここだけの話、電子辞書も勉強にならないから、やめといたほうがいいよ。本は紙で……」1万2千円の本なんか、もし買ったら何時間おしゃべり聞かされるか! 五百円の本と迷ったけど、百円の本にしといてよかった。危ないところだった。(何を買っても同じかも)
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群馬

2013-03-25 | Weblog
夕方4時すぎに乗ったタクシーの運転手さんは、とてもよくしゃべる人だった。雨が降り出しそうな雲行きですね、から始まって、適当に相槌を打っていると下車するまで延々と話し続ける。私は今はアルバイトですから、朝9時から夕方5時か6時までしか乗務しないんですよ。3日乗務して、1日休む。この繰り返しで、売上の45%しかもらいません。それでやってるんですけどね、自分のクルマじゃないから勤務が終わるまでに雨が降ると、洗車して返さないといけないから、なんとか持ってほしいなあ。今日は降らないね、こりゃ。明日は雨だな……仕方ないね。



タクシーの時代は終わりですよ。社員のドライバーは売上が月30万いかないと、足きりで50%もらえないんだから生活できませんね。私はアルバイトで45%の手取りでやってるけど、社員の人が足きりされたら私より収入が低くなっちゃうんだから大変です。昔はね、バブルのころは誰でも手取り40万円以上ラクに稼げたからよかったけど、いまは難しいね。(バブルのころは月80万も売り上げてたのか……そして会社が半分もっていくのか……経費かかるにしても凄いなタクシー業界)



ええ、前橋あたりの話ですよ。東京はその当時もっと凄かったでしょ? 初乗り料金710円じゃお客を乗せないっていうんだから。最低2000円からだって。何でかっていうと前橋でお客さんが乗ってきて、2000円パッと出すもんですから「どちらまでですか?」って聞いたら、すぐ近くなんですよ。「こんなに頂けません」っていうと、「えっ、群馬のタクシーは初乗り料金で行ってくれるの? 東京じゃ最低2000円出さないと乗っけてくれないんだよ。群馬は凄いね!」っておっしゃるんですけどね、そう、東京のほうが凄いですよね。お客さんのいう通り。それだから710円で行きましたよ、そのときも。



ただ、群馬でもバブルのころは、乗車拒否っていうのが実際ありましたよ。どこまで行くか聞いて、近くだと「お客さん待ってるから」とか言い訳して乗せない。いくらでも稼げる時代だったから、乗せてあげますっていう感覚なんですね。いまはもう、乗っていただく感覚でみんな走ってますよ。毎日そこまで買い物に出かけるのに710円払ってくれるお客さんと、たまに4550円払って遠くまで行くお客さんだったら、どっちが大切かっていうと毎日710円のお客さんだって会社もドライバーに教え込んでますからね。それでやっても月30万円の売上に普通なりませんから、手取り15万円に届かないんじゃね。生活やっていけませんよ。もう完全にタクシーの時代は終わりました。
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大江戸線

2013-03-22 | Weblog
地下鉄大江戸線は東京都心の深い深いところを走っているから、ホーム階から改札階に上がって、さらに地上まで上がるためにエスカレーターをいくつも乗り継がなければいけない駅がよくある。そんな駅のひとつで「津波がきて浸水したら嫌だな」と、しなくてもいい空想をしながらエスカレーターで地上に向かう途中、踊り場で立ち止まっている女性に道をふさがれてしまった。



水玉のワンピースを着てバックパックを背負い、ショルダーのストラップを両手で握って顔を下に向けたまま、エスカレーターに乗ろうとしては後ずさりしている。最初の一歩が踏み出せなくて、泣きそうになりながら、口の中で何か言葉のようなものを発している。先を急ぐ人たちが彼女を押しのけるようにしてエスカレーターに乗っかり、大またで歩いて上にのぼっていく。



「みんなと同じように上に行きたいけど、みんなと同じようにできない」といったことを口ごもっているように聞こえた。それは「エスカレーターに乗りたいけど乗れない」という意味にもとれるし、何かもっと大きな枠組で「みんなと同じようにできない」ことを嘆いているようにも見えた。「どうして他の人たちは当たり前のように上を目指すのに、自分にはそれができないんだろう」「がんばって途中まで上がったけど、やっぱり無理かもしれない」という挫折感、無力感。



敗北感、焦燥感、虚無感。いつまでもエスカレーターに足を踏み出しては引っ込める、延々と続くその繰り返しは地獄の責め苦に近い。勇気をふりしぼって上にのぼっても、何も特別なことは起こらないのだから、そうまで悩んだり苦しんだり努力しなくていいかも。一瞬そんなことを思いながら、ぼくも彼女の脇をすり抜けてエスカレーターで上に運ばれていくことを選んだ。
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カサブランカ

2013-03-15 | Weblog
まだ独身で暇さえあれば海外をぶらぶらしていたころ、カサブランカのホテルの受付で声をかけられた。「アンアンのSさんですよね?」……名前だけならパスポートを見ればわかることだから、さほど恐怖を感じることもない。しかし、アンアンの編集を(当時)やっていることを異国のホテルで言い当てられるのは普通のようでも相当おかしい。危険なことに巻き込まれるのではないだろうか?



見れば、声をかけてきたのはへヴィメタルを絵に描いたようなルックスの男で、長い髪を金色に染めているわりにアゴのヒゲは黒い。日本人か? ずんぐりむっくりしていて愛嬌があるので警戒心ゆるむ。「そうですが……?」返事すると、向こうもホッとした顔で「ぼくブルータスのTです」と自己紹介した。先に言ってくれよ、同じ会社の仲間なら。しかし、Tという名で思い出すのは黒髪を七三に分けた新入社員当時の姿。たしか、宣伝部に配属されたような……? そのあたりのこと尋ねると、異動でブルータスに移ってから髪を伸ばしてゴールドに染めたらしい。そういうことも、あるだろうさ。



せっかくだから一緒にカサブランカを歩こうということになった。Tと名乗るへヴィメタル(当時)は、世界のマクドナルドのトレーに敷かれたペーパーを趣味で集めているとかで、カサブランカのも手に入れたと熱く語ってくれた。じゃあ、もうマクドナルドはいいよね。どこかで何か食べようか? でもラマダン(イスラム教の断食月)だから、お店どこも開いてないね。なんて話していると、親切そうな地元男性が近づいてきた。「大丈夫だよ。この国はホスピタリティ溢れているから、ラマダンでも営業しているレストランに案内しよう。心配ないさ!」……ちょっと怪しい。



一人だったら絶対ついてかないけど、二人いるから大丈夫かも。怪しい男が案内してくれたレストランは、ごく普通に営業していて、ごく普通にランチをとることができた。怪しい男にも勧めてみると、「ラマダンなので自分は日が沈むまで何も食べないし、何も飲まない。タバコも吸わない気にするな」と愛想よく、最初のうちは受け答えしてくれた。しかし、食べ終わる頃になると急に不機嫌になり、怒鳴り散らすようになった。「自分は食べてもいないし飲んでもいないのに、目の前でうまそうにメシを食って見せるとは一体なんのつもりだ! どうしてくれる! 金を寄こせ!」……なんだその言いがかり。刃物を出されたり仲間を呼ばれたら困るけど、そんな手口でもないようなので、レストランの支払いを普通にすませて店を出た。男がいつまでも食い下がるので、日頃からタバコを吸うというへヴィメタルの会社仲間がマルボロかなにか一箱あげたら、やっと立ち去った。たいしたホスピタリティもあるもんだと笑って、それからまた散歩したような気がする。
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ケニアの男

2013-03-07 | Weblog
ケニアに行ったときの話。(モロッコの風といい、どうしてアフリカばかり……?)ぼくがナイロビを歩いていると、向こうから黒人男性が手を振りながら近づいてくる。フレンドリーに肩をポンッとたたいて、「オレのこと覚えてる?」って(英語で)言う。たいへん申し訳ないことながら、ケニアに着いたばかりだったので、現地の黒人男性の顔を見分けることができない。みんな同じ顔に見えるから正直に「ノー」と答えた。すると黒人男性が、とても悲しそうな顔をして言うのだ(英語でね)。


写真はミャンマー(なんでだよ)

「じつは私は、あなたが宿泊しているホテルのレセプションです。いまクルマをガソリンスタンドまで運転して給油したんですけど、お金を持ってくるの忘れてしまって困っています。どうかガソリン代を立て替えてください。ホテルに戻れば財布があるので、今夜お返しします」……しかし、ホテルのレセプションにしては服が薄汚れているし、どうしてレセプションなのにホテルを離れてドライバーみたいな仕事をしているのか不思議だったので、「こりゃ怪しいぞ?」とぼくは思った。「ホテルに戻って財布をガソリンスタンドまで持っていけばいいじゃないですか?」「じゃあガソリンスタンドまで一緒に行きましょうか?」「ぼくは会った覚えがないんですけど、あなたが働いているホテルの名前は、何ホテルですか?」……疑問に思ったことを、カタコトの英語で尋ねていると、黒人男性は「OK!」と言って、固い握手をして立ち去っていった。本当にレセプションだったらどうしようかと一瞬思ったけど、そのときは謝ればいいし、べつにお金を貸す義理はないのだ。夕方、ホテルに戻るとレセプションはパリッとした格好をした別人さんだった。あたりまえである。


古い写真が出てこないもんで…

夜になってお腹が空いたのでナイロビの料理店で食事をしていると、同じぐらいの年齢の日本人男性(当時のことで20代半ば)が近くの席にいたので、どちらからともなく話しかけた。同じ飛行機できた人だった。なんかしらないけど、ボトルで頼んだワインを飲みきれないからって注いでくれる。いい人だし金銭に余裕があるみたいだ。一人だとツアーを申し込むのが割高になる上に危険だからということで、お互いの利害が一致し、翌日から一緒にサファリに行く約束をした。すでに旅先の友人みたいなものだ。そのとき、「言いにくいことなんだけど……」と急に改まって友人が身を乗り出す。まさか、払いを立て替えてくれって言い出すんじゃないだろうな?


これはナイロビではありません

「ここだけの話なんだけど、道端で話しかけられて、『きみが泊まってるホテルのレセプションだけどガソリンスタンドまでクルマを運転して給油したら財布を忘れてきたことに気づいて困っているから金を貸してくれ』って言われたんだよ。貸してあげたんだけど、その男の人ホテルにいないんだよね。顔の見分けがつかなくて、うっかり騙されちゃった。こんな詐欺がいるから気をつけたほうがいいよ」……それ、昼間ぼくが会った人かもしれないって言おうかと思ったけど、ナイロビの常套手段で誰でもやる手口かもしれないし、騙されなかったことを自慢しても何の得にもならないので、その晩は黙ってワインをごちそうになりました。サファリにも仲良く行きましたとさ。

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モロッコの風

2013-03-01 | Weblog
性転換手術じゃないけどモロッコにこっそり出かけてきた。といっても、確か1999年だったと思うから十年以上も前になる。そのせいばかりともいえないけど画像の質がよくなくてゴメンナサイ。写ってるのは、ぼくサカタだよ。ラクダのほうじゃなくて人間だから間違えないでね。というより連れてる動物ラクダってわかる? サハラ砂漠で撮った写真。まだ漫画家の中尊寺ゆつこさんがご存命だった当時「サカタくん絶対モロッコに行きなさい!」と仕事中いわれてホイホイひとりで出かけたのだった。若いころって主体性なくても勢いだけあれば何とかなるから素晴らしい(十ウン年後のいまは主体性がないまま、勢いのほうを失くして息苦しい)。で、なんだっけ? そうそうモロッコの風の話。



またこの写真? これしかないの。モロッコのマラケシュという都市では、日本人とみると「カラテ?」なんて声をかけられたりする。サービス精神旺盛なぼくは、つい大山倍達の「牛殺し」みたいなポーズをとって見せたらザッと屋台のお客さん(ベルベル人)が後ずさりして、なんだか誤解させてしまった。どうもカラテが怖いらしい。「日本人なら知ってるか? 世界一のカラテ・マスターを」「カラテ・マスター?」まさか極真の大山倍達がそこまで有名とも思えないし、K-1のアンディ・フグとかかな?



またこの写真? たぶん4回出てくるので、よろしくお願いします。それで「アンディ・フグ?」って聞いてみたら、意味わからないって顔をしながら「アチョー」と叫ぶ。「アチョー知ってるかアチョー!」……少しアチョーのイントネーションおかしいけど、きっとブルース・リーのことだと思って「ぼく知ってるアチョー! オワター!」とやると喜ぶ。「ブルース・リー?」「No!」……違うのか。ジャッキー・チェンかな。既にカラテじゃないけど誰なんだろう「世界一のカラテ・マスター」って?



「カゼ」とベルベル人が発音する。「知ってるか、K-A-Z-E“カゼ”。日本から来た世界一のカラテ・マスター、みんなに“風”と呼ばれている」……なんですと!? いまどき“風”なんて名前の日本人が、モロッコで世界最強カラテ・マスターとして知れ渡ってる!? いつの時代の話だそれは? 詳しく聞いてみると“風”は現役バリバリのマスターで、その実力は世界一。モロッコのカラテ大会でも何度も何度も優勝を重ね、マラケシュに大きな道場を開いて、多くの人々にカラテを指導しているという。離れた場所にいる敵も“風”のパワーで吹っ飛ぶらしい。……合気道か、特殊効果まじってる気もするけど、どうやら“風”は現役の武術家で、モロッコでは知らない人がいない有名人らしい。あれから十ウン年、いまも“風”は活躍しているのだろうか? 「世界の果てまでイッテQ!」か「弾丸トラベラー」か何か、テレビの番組でロケにいって“風”を探し出してくれないかな? ちょっと見てみたい。
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