ギリシャ神話あれこれ:アルゴーの冒険(続々々々々々々々)

 
 アイエテス王の追っ手が迫り、もはやアルゴー船は逃げられないところまできた。大軍相手では、戦ったところで勝ち目もない。
 アルゴーの一行はとうとう、メデイアを引き渡して王と交渉しよう、と相談を始める。
 
 これを知ったメデイアは激怒。物凄い剣幕でイアソンを責める。冗談じゃない! 薄情者! すべてを犠牲にして力添えしたのに、恩知らず! じゃあ船を焼いて、もろともに焼死するまでだ! 裏切り者! 恥を知れ!
 この女ならやりかねない。メデイアの脅しに怖れをなして、懸命になだめるイアソン。するとメデイアは、怖ろしい計略を彼に授ける。

 なんとメデイア、父王の船団の眼の前で、弟アプシュルトスを殺し、その死骸を八つ裂きにして、バラバラと海にばら撒いたのだった。

 これには敵軍も動揺した。父王がわんわん嘆きながら、海に捨てられた息子の肉片を兵士たちに拾い集めさせているあいだに、アルゴー船は逃亡に成功する。
 ……が、イアソンはメデイアの激情と非情とに、背筋の凍る思い。やりすぎだ、メデイア。

 こうして無事、コルキスから逃れたアルゴー船だったが、船には呪いがかかっていた。船は大波に揉まれ、先へと進まない。
 イアソンが船の舳先に尋ねると(舳先にはアテナ神がドドネの森から切り出した、人語を発する樫が取りつけられている)、弟を殺したイアソンとメデイアの行為に、ゼウス神が怒っている、ということだった。
 
 そこで一行は、アプシュルトスを殺した罪を浄めてもらうため、魔女キルケの住むティレニア海へ向かい、アイアイア島を訪ねる。キルケはメデイアの叔母で、魔術の師でもある。
 キルケは二人を浄めてやったが、その罪を聞くと、残酷さに激怒し二人を島から追い出したという。

 To be continued...

 画像は、E.クエリヌス「イアソンと金羊皮」。
  エラスムス・クエリヌス(Erasmus Quellinus, 1607-1678, Fremish)

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ギリシャ神話あれこれ:アルゴーの冒険(続々々々々々々)

 
 王の難題をクリアしたイアソン。が、王のほうは歯軋りして悔しがり、こうなったら夜陰に乗じて船を襲い、火を放って船ごと皆殺しにしてしまおう、ともくろむ。……セコい王さま。
 
 王が素直に金羊裘を渡すはずがない、と知っているメデイアは、国を捨ててイアソンとともに逃げようと決意。薬草の小箱を携え、弟アプシュルトスを連れて、王宮を抜け出し、アルゴー船へと走る。そして、王の来ないうちに毛皮を手に入れよう、とイアソンを促す。
 ただ、敵であるあなたに協力する以上、私はもうこの国に残ることはできない。私を一緒に連れて行き、決して見捨てないと誓って欲しい。
 ……こう頼むメデイアに、イアソンも、無事故郷に帰り王位を取り戻したなら、必ずあなたを妃にしよう、とヘカテ神に賭けて誓約する(ヒュプシプレにも同じこと言ってたんだけど?)。

 で、メデイアはイアソン一行を金羊の毛皮の在処へと案内する。毛皮はアレスの森の奥深く、老槲の枝にかけられ、竜が眠ることなく番をしていた。
 が、メデイアは魔法の薬を振りかけて呪文と唱え、竜を眠らせてしまう。すかさずイアソンたちは毛皮を奪取し、船へと戻ると同時に出航する。

 こうしてコルキスを逃げ出したアルゴー船の一行。が、メデイアの所業はたちまち露見し、怒り狂った王はただちに大軍を率いてアルゴー船を追跡する。

 To be continued...

 画像は、トロワ「メデイアに永遠の愛を誓うイアソン」。
  ジャン=フランソワ・ド・トロワ(Jean-Francois de Troy, 1679-1752, French)

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ギリシャ神話あれこれ:アルゴーの冒険(続々々々々々)

 
 プリクソスの子らに金羊の毛皮を返してもらいたい、と申し出るイアソン。が、王はイアソンの要求をにべもなく撥ねつけ、逆にプリクソスの子らの帰国をなじる。
 で、こうした場合の例に洩れず、アイエテス王もまた、イアソンに難題を吹っかける。

 曰く、厩にアレスから贈られた、青銅の脚をした、口から火を吐く牡牛がいる。これに軛をつけてアレスの聖地を耕し、アレスの泉の竜の牙を蒔いて、地から湧いて出る兵士たちを打ち倒せ、と(この竜の牙は、その昔カドモスがテバイの地に蒔いたと同じもの)。

 メデイアはイアソンの身の危険を思うと、矢も楯もたまらない。盲目の恋に突き動かされ、彼女は、父王に叛いてイアソンを助けようと決意する。
 
 翌朝、鳥占師モプソスが鳥の言葉を聞き分け、ヘカテの神殿にアフロディテが送った巫女が待っている、とイアソンに教える。イアソンが行ってみると、果たしてメデイアがそこにいた。
 彼女はイアソンに、深夜それを身体に塗ると、剣にも傷つかず火にも焼けない魔力を持つ香油を手渡し、また竜の牙の兵士たちとの戦い方の知恵を授ける。
 夜、二人はヘカテ神を召喚して生贄を捧げ、イアソンの身体に香油を塗った。
 
 夜が明けると、イアソンはアルゴーの一行とともに、王の待つアレスの聖地へと向かった。厩から、炎を吹く牡牛が放たれる。
 が、香油を塗ったイアソンの身体には、火も角も牙も敵わない。彼は火牛を押さえつけ、その首に軛をつけて、聖地を耕してしまう。そして、王から渡された竜の牙を地に蒔き、そこから生まれた兵士たちの真ん中に、メデイアから教わったとおり、大きな石を投げ込んで、自分は楯の陰に身を隠す。

 たちまち兵士たちは同士討ちを始める。そして最後に残った、手傷を負ってヘロヘロな兵士たちを、イアソンは難なく切り倒した。

 To be continued...

 画像は、S.ローザ「竜に魔法をかけるイアソン」。
  サルヴァトール・ローザ(Salvator Rosa, 1615-1673, Italian)

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ギリシャ神話あれこれ:アルゴーの冒険(続々々々々)

 
 一行はピネウスに教えられたとおり、岩に向かって白い鳩を放す。岩は白鳩めがけて、轟音を立てて打ち合う。
 が、鳩は岩のあいだを通り抜けた。それ! との合図で、一同は力一杯に船を漕ぐ。引き下がりかけた二つの大岩は、アルゴー船めがけて慌てて再び閉じようとしたが、間一髪、船は岩のあいだを無事通過する。

 今まで一度も船を通さなかったシュンプレガデスは、以来、(ショックで?)二度と動けなくなってしまったのだとか。

 その頃オリュンポスでは、ヘラとアテナがアフロディテに助けを求めていた。コルキスの王アイエテスの娘であるメデイアが、その魔術でイアソンに力添えするように、彼女の心にイアソンへの恋を植えつけてくれ、と。
 憐れ、メデイア。
 
 アルゴー船はコルキスへの途中、プリクソスの子らと遭遇する(アルゴー船を建造した船大工アルゴスも、プリクソスの子)。彼らの案内で、船はようやく黒海の果て、コルキスへと到着。
 で、イアソンはプリクソスの子らを連れて、王宮へと赴く。そこには王アイエテスと王妃エイデュイア、そして幼い王子アプシュルトスがいた。
 そこへプリクソスの妻、王女カルキオペがやって来て、子供たちとの再会に喜んだ。
 
 続いて、王女メデイアもやって来る。彼女はヘカテ神の女司祭なのだが、その日に限って、ふとした気紛れで、姉カルキオペに同行したのだった。
 このとき、アフロディテが遣わしたエロスが彼女に向かって恋の矢を放つ。で、イアソンを一目見て、メデイアは彼の虜となってしまう。

 To be continued...

 画像は、ウォーターハウス「イアソンとメデイア」。
  ジョン・ウィリアム・ウォーターハウス
   (John William Waterhouse, 1849-1917, British)


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ギリシャ神話あれこれ:アルゴーの冒険(続々々々)

 
 ピネウスはその昔、アポロン神から予言の力を与えられた。が、彼はこの特権をむやみやたらに使いまくり、ゼウス神の決定をすら予言によってみだりに人間に暴露する。
 で、とうとうゼウスの怒りを買い、突きつけられたのが、短命と盲目、どちらか選べ、という選択。ピネウスは盲目を選んで両眼を潰され、王座も追われて、今ではビテュニアの岸に、一人貧しく暮らしていた。
 おまけに、貪食な怪鳥ハルピュイア(ハーピー)たちが、食事のたびに空から舞い降り、腐臭を撒き散らしながら食卓を食い荒らすのだった。ハルピュイアというのは、女の顔(と上半身)をした鳥。アエロ(疾風)、ケライノ(嵐の黒雲)、オキュペテ(速く飛ぶ女)の3羽で、虹の女神イリスの妹に当たる。冥王ハデスの遣いで、死ぬのを拒んだ者を冥府に連れて行くともいう。

 さて、盲目の王、予言者ピネウスは一行に、今後の航海を占う代わりに、ハルピュイアを追い払って欲しい、と頼む。
 翼の双子ゼテスとカライスが王を慰めると、あら不思議、彼の眼は再び見えるようになった。翼を持つ二人はさらに、食卓を食い散らかして飛び去ったハルピュイアを追跡、とうとう追いつめたところを、もはやピネウスを悩まさないから見逃すよう、イリスに制止される。

 この返礼にピネウスは、今後の行程を予言する。難所の大岩シュンプレガデスのこと、そしてアフロディテ神の助力のこと、などなど。
 
 出航したアルゴー船は、まもなく、例の大岩シュンプレガデスへとやって来る。この二つの大岩、瀬戸を挟んで向かい合っていて、絶え間なく揺れてぶつかり合い、船をぺしゃんこに圧し潰してしまう、というわけ。

 To be continued...

 画像は、ド・モーガン「メデイア」。
  イヴリン・ド・モーガン(Evelyn de Morgan, 1855-1919, British)

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