生意気な女

 
 長らく私は、とある絵の掲示板の読者だった。ところがこの掲示板、最近、感性的に耐えられなくなってきた。相棒は、「なら、“再認”しなければいいよ」と言う。
 私はPTSDで、抑圧的な横暴な言動に接すると、心身ともに調子が悪くなる。で、もう読むのをやめることにした。

 相棒によれば、優れた自然科学者も、自然科学以外の分野では誤った答えを出す場合が多いという。相棒お気に入りの某数学者も、最近では、情緒や武士道精神、国家の品格が大事、なんて言い始めた。
 同じようなことは絵描きにも言えるかも知れない。絵に関する限り間違ったことを言わない絵描きが、絵以外に関しては多分に間違う。

 思想を持つ絵描きは、絵描きも一個の社会的存在であり、一個の人格なのだから、その思想は絵と切り離すことができない、と主張する。
 それは、その通りだと私も思う。

 が、彼らは、絵画に関する限り本当に、その姿勢や問題意識には賛同できたし、知識や技法なども参考になったのに、それ以外の点では、どう考えてもおかしいところが多々あったのだ。
 では、穿った見方をすれば、絵に関して語られている内容も、絵にプライドを持つ絵描きなら誰もが語るはずの、ごく当たり前の内容にすぎなかった、ということなのかも知れない。

 誰もがどんどん発言する権利がある、と言う一方で、特定個人に対して、黙っていなさい、と言い放つ感性。数年来ほとんど美術展に足を運ばなかった、と言う一方で、直近で足を運んだ美術展については、現物を観たのか、と言い放つ感性。
 具体的事実に接した個人的経験を尊重するという姿勢の上に、自分個人の稚拙な観念を、公の場で平気で言ってのける感性。絵を描く女は生意気な女ばかりだ、と。最近ニュースになった、男性が自分を振った女性を殺した殺人、これは美しい殺人だ、と。

 センスが違うだけなのかも知れない。絵を描きさえすれば、何を言ってもいいのかも知れない。
 ……が、何も私が、ダボハゼにならなければならない理由もない。

 だから、さようなら。

 画像は、ブーヴェレ「ルーブルの水彩画家」。
  パスカル=アドルフ=ジャン・ダニャン=ブーヴェレ
   (Pascal-Adolphe-Jean Dagnan-Bouveret, 1852-1929, French)
  

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