ヒッピー願望(続)

 
 行き先を決めたら、格安航空券だけ買って、2、3日分の着替えだけ持って、後は現地手配、現地調達。ドミトリーの安宿を泊まり歩くホンモノのバックパッカーになるらしい。
 ……私、箱入り娘で育って世間ずれしていない上に、諸般の事情で頭でっかちだけれど、一人前のバックパッカーになれるだろうか。

「ヨーロッパに行っても幻滅しちゃ駄目だよ。世界史を見れば分かるけど、抑圧されてきた国々が今もひどい状況にあるってことは、抑圧してきた国々がそれだけひどいことをしてきたってことだし、今もまだひどいのが根強く残ってるってことなんだからね。全体としてそうしたひどいものに対抗するベクトルも担ってはいるけど、実際には悪人もいるし悪事もあるし、ただアホなだけ、デブなだけの人もいるし、保守的だし有色人種への差別もあるし、街だって汚いし、煙いんだからね」

 相棒が念を押す。うん、分かってる。どんなときにも、どんなところでも、良いものも悪いものも全部、リアルにありのままに見て、受け止めて、普遍的なものをその都度見出していくよ。 

 なので、もしかしたら、春から生活がガラリと変わることになるかも知れない。未定だけれど。

 画像は、レーピン「放浪者」。
  イリヤ・レーピン(Ilya Repin, 1844-1930, Russian)

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ヒッピー願望

 
 相棒にはヒッピー願望がある。

 この場合ヒッピーというのは、既成の慣習や制度を再認せず、実際にもそれらから離脱して生活している人々を漠然と指している。が、いわゆるヒッピーに特徴的な反戦平和や人類愛の思想、自由(フリーダム)の保持、芸術や精神文化の尊重、自然への回帰などには共鳴している一方、髪やヒゲを伸ばしたりエスニックな服装をしたりするスタイルや、菜食偏重、フリーセックス(自由な性行為という意味での)、薬物使用、原始共同体的なコミューンなどについては、自分のセンスに合わないから、と拒否している。
 で相棒は、コスモポリタンな世界人として、人類のあらゆる知的遺産を領有しつつ、世界社会の発展にも資することを使命とする、独自の真面目な知的ヒッピーを目指すことになるわけ。

 ここ2、3年、ボヘミアンだのジプシーだの、ヒッピーだのフーテンだのの言葉に露骨に反応を示していた相棒、とうとう、世間的にはキチンとした立派な職を、自ら清々とほっぽり出してしまった。
「世界恐慌なんだよ。仕事なんて、欲しがる人にあげればいいんだよ」

 我が愛すべき相棒、春には完全にフリーになって、まだ見ぬ国々へといそいそと旅立つつもりらしい。
「今までやってきたことは在野で続ければいいさ。まずは世界を見聞だ!」

 To be continued...

 画像は、レミントン「遅れてきた旅人」。
  フレデリック・レミントン(Frederic Remington, 1861-1909, American)

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