ギリシャ神話あれこれ:カドモスの建国(続々々)

 
 カドモスとハルモニアは敬虔で仲睦まじい夫婦だったが、呪いのせいか、その子や孫の多くは非業の死を遂げている。
 
 最初の不幸に見舞われたのは、娘アウトノエの子アクタイオン。彼は狩猟中、運悪くアルテミス神の水浴に出くわして、女神の激怒で鹿に変えられ、自分の連れていた猟犬たちに噛み殺される。
 
 娘セメレは、ゼウス神の寵愛を受けたためにヘラ神に嫉妬され、ヘラの口車に乗せられて、ゼウスの雷電に撃たれて死ぬ。
 
 娘イノは夫アタマスとともに、姉セメレの子ディオニュソスを養育する。が、ヘラに狂気を遣わされて二人とも発狂、アタマスは息子レアルコスを、鹿と思って射殺し、イノはもう一人の息子メリケルテスを、煮え立った釜に投げ込んで、その屍を抱きかかえたまま海に身を投げる(別伝ではこれは、イノがアタマスの先妻の子プリクソスとヘレを謀殺しようとしたため、アタマスに追われてのことだという)。
 その後、神々は二人を憐れみ、イノをレウコテア、メリケルテスをパライモンとして、船乗りたちを護る神霊として甦らせたという。

 カドモスを継いで王となった、娘アガウエの子のペンテウスは、ディオニュソス神を迫害したため、酒神によって発狂したアガウエらマイナス(=ディオニュソス信女)たちによって、引き裂かれて殺される。

 老カドモスは、不幸の絶えない一族の悲運を見かねて、ついにハルモニアとともにテバイを去る。
 あるとき、身の上をかこって、アレスがあれほど竜を惜しむのなら、我々も竜になりたいものだ、と呟いたところ、ハルモニアとともに青い斑点のある大きな黒蛇となった。彼らが住んでいた地には、不思議なことに人畜に害を与えない、二匹の大蛇がいた、という。
 死後、二人はエリュシオンの野へと送られた。

 画像は、ド・モーガン「カドモスとハルモニア」。
  イヴリン・ド・モーガン(Evelyn de Morgan, 1855-1919, British)

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