ギリシャ神話あれこれ:カドモスの建国(続)

 
 カドモスはその地に接吻し、謝儀のため、従者たちに言いつけて近くの泉に水を汲みに行かせる。

 丘から程近い森に岩窟があり、竜の住む泉があった。この竜は軍神アレスの子だった。
 カドモスの従者たちは、運悪くこの泉を見つけ、水を汲もうとしたところを、岩窟から出てきた竜に、ことごとく殺されてしまう。
 さて、従者たちの帰りがあまりに遅いので、カドモスは自ら森のなかへとやって来る。と、眼にした光景は、バラバラになって血まみれに倒れている従者たちと、その血を舐める竜……
 
 状況を察知したカドモスは、さすが王子、逃げ出しもせずに竜へと挑み、見事、竜を倒す。
 が、今や彼は天涯孤独の身。途方に暮れていると、アテナ神が助言する。……死んだ竜の牙を抜き取り、地に蒔くがよい。武勇の民を得られよう、と。
 アテナはアレスと仲が悪い。アテナにとって、アレスの竜がどうなろうと知ったこっちゃないわけ。

 言われたとおりに、カドモスが地に竜の牙を蒔くと、地中から武装した兵士たちがモコモコと現われた。咄嗟に彼は、彼らの真ん中に石を投げ込む。と、兵士たちは互いに相手が石を投げたと思い、てんでに殺し合いを始める。
 大勢の兵士たちが倒れ、やがて5人だけが残る。最後まで生き残った5人に、カドモスは自分に忠誠を誓うよう命じる。彼らはスパルトイ(蒔かれたる者たち)と呼ばれ、この地で最も古い家柄の始祖となった。

 その後、カドモスは牝牛の横たわる場所へと戻り、その地、ボイオティア(牛の地)に国を建てる。これが後のテバイとなる。

 To be continued...

 画像は、J.マルティン「カドモスと竜」。
  ジョン・マルティン(John Martin, 1789-1854, British)

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