網代の石門群(続)

 
 リアス式海岸というのは、ギザギザと複雑な海岸線が特徴だと、昔、地理で習った憶えがある。が、その説明じゃ不十分なことが、このとき判明した。
 地図帳では分からないけれど、リアス式海岸は、起伏の上でも同じく大いに複雑にギザギザしているのだ。歩くとなると超ハードなアップダウン。
 
 道は、人が歩いたから道になった、って感じの自然道。足許の悪そうなところだけ、木の板で舗装されている。
 ちょっと歩いては階段を登り、ちょっと歩いては同じだけ階段を降りる。海へと向かう視界は林の木々で遮られていて、途中、チラッ、チラッと青い波間が見えるだけ。
 
 が海は、見えなくても、日本海らしい荒々しい波の音を響かせてくる。太平洋の浜辺のような、ドドーッ、ザーッという、寄せては返す波音なんかじゃない。次々とひっきりなしに荒波が押し寄せて、今来た波が砕ける音と、次に来る波の音とが混ざっている。ドドドドドドドド……!! って感じの音。ちょっとうるさい。

 視界が開ける箇所は、申し訳程度の展望台となっている。そこから、はるか下の海を見晴るかす。
 紺青の海に、頭にボサボサと緑の松を乗っけたピンクがかった大岩が、あちらこちらにゴツゴツとそびえている。今日の海と岩の色はモネの色。
 そして、私たちのハードな散策を尻目に、ポン、ポン、ポン……と遊覧船が通り過ぎていく。
 あー、遊覧船クルーズって、こういうことだったのね。ライン川の景勝めぐりにはクルーズがよいのと同様、この海岸めぐりも船のほうがよいだろうな、納得。
 
 To be continued...

 画像は、浦富海岸。

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網代の石門群

 
 砂丘をあとに、自転車で岩美の浦富海岸へ向かった。この浦富海岸、山陰随一の景勝地なのだそう。ちょっとくらいは、見ておかねば。

 が、浦富海岸までは結構な距離。海岸沿いにサイクリングロードでもあれば、すぐなんだろうけれど、そんなものはない。ま、自然環境にとってはそのほうがいいのかも知れない。
 仕方なく車道を走った。が、海岸線を迂回して、なんと山一つ越えなきゃならない。車ならチョロい距離だろうけど、自転車だとそうもいかない。もうダメポ。
 
 それでも、海岸見たさに山を越えた。国道から逸れると、もうホントに田舎の風景。海に近づくにつれて、古い家々がちらほら現われる。そして、網代港につながる河川には遊覧船が。
「遊覧船に乗るなんて、邪道だよね。歩かなくちゃねー」と、船を横目に、さらに自転車漕いで海岸へ。
 ようやく網代港に到着すると、お~、当たり前だけど海鳥たちが群れ飛んでいる。いいねー。

 さて、散策コースに沿って歩くとしよう。なんでも浦富海岸、風と日本海の荒波に削られた、松の生えた花崗岩が織りなす、断崖ありーの、洞窟ありーのの、豪快な海岸なのだそう。ん~、楽しみ。
 が、散策路に入ると、あれ? 海岸からどんどん離れていく。松の木だらけで、道には松ぼっくりが転がっている。おまけに、物凄い傾斜。これじゃ海と言うより、まるで山。
 ようやく坂を登り切ったところで、海が姿を現わした。しかも、はるか眼下に! つまり私たち、松の生えまくってる、花崗岩の上にいるわけ。

 To be continued...

 画像は、浦富海岸、網代港の海鳥たち。

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鳥取砂丘(続々)

 
 私も続いて、思い切って砂を滑り降りた。と言うより、ずり落ちた。私が落ちる後を追って砂が崩れ落ち、浜辺まで降りて振り返って見ると、その軌跡は一筋の溝となって残っている。が、次々と上から砂がこぼれてきて、見る間に私のずり落ちた軌跡を埋めてゆく。
 う~む、これが砂の力。砂でできた落とし穴にでも落ちた日には、脱出なんてできっこない。「砂の女」にあるとおり、砂掻きこそシシュフォス労働の極致に違いない。
 
 波に沿って砂浜を歩いた。すぐ横にそびえる砂の丘さえなければ、普通の砂浜と同じ。いい感じー。
 ……が、いくら歩いてもキリがないから、途中で起伏の緩やかなところを見つけて、引き返す。

 人がいなければ、砂にはきれいな風紋ができる。風紋に足跡を残すのは、積もりたての無垢の雪に足跡を残すような気分。
 が、振り返るとやっぱり、さらさらと砂がかぶさって、足跡はすぐに消えてゆく。

 もう一つ、ひときわ大きな砂の丘を越えたら、さっきの駱駝たちが見えるはず。ズブズブと砂に足をめり込ませながら、ひたすら斜面を登る。周りを見ると、サラリーマン風のおじさんたちも、ヤンキー風のにいちゃんたちも、みんな、ふうふう言いながら砂の斜面を登っている。
 やっとこさ登り切ると、眼下には池が! 砂漠には砂の下に水が溜まっているというもんね。昨日雨が降ったせいで、にわかに湧き出てきたんだな、きっと。
 砂を降りるのも2度目になると、もう慣れたもの。足許に池があるのがちょっと怖いけど。土砂崩れならぬ砂崩れを伴いながら、ズボズボと降りる。はるか隣りで若いにいちゃんたちが、キャーキャー叫びながら斜面を駆け降りている。あー、健全でいいねー。

 やっと駱駝のところに戻ってきた。ただいま、駱駝。
「ホントに砂しかなかったでしょ」と相棒。
「うん、ホントに砂しかなかったよ」と私。

 駱駝にお別れの挨拶をすると、駱駝の奴、へにゃ~、と笑って見送ってくれた。

 To be continued...

 画像は、鳥取砂丘、雨後のオアシス。

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鳥取砂丘(続)

 
 まず眼に入ったのが、駱駝! 早速、駱駝のところまでてくてく歩く。なんで砂丘に駱駝がいるんだ?
「そりゃ、砂漠をイメージしてるんじゃないの」と相棒が笑う。

 駱駝はお客を乗せて、ぽっくりぽっくり歩いている。出番じゃない駱駝は、砂の上に正座して、お利口に坐っている。駱駝って、背後から近づいちゃダメなんだって。で、正面から近づいて声を掛ける。大きな眼に長い睫毛の駱駝、前から見ると、へにゃ~、って笑っている。
 動物って、眼を見つめると見つめ返してくれること、野辺山の牧場のお馬さんから学習したもんね。で、見つめ合ったまましばらく駱駝とお喋りしていた。

 そのうちに、「駱駝にばっかりかまってると、時間が足りなくなっちゃうよ」と相棒。それもそうだ。で、駱駝にさよならを言って、日本海のほうへとてくてく歩く。
 砂丘って、結構起伏がある。それに歩きにくい。すぐ靴に砂が入る。が、前日に雨が降ったせいか、潮風が吹いても砂埃が舞い上がらないのは、ラッキーだったな。

 砂の項に立つと、眼下に波打ち際。そして前方は見渡す限りの日本海。荒い波音が耳に響く。あー、象牙色の砂と濃青の海とのコントラストって、いいねーっ!
 
 そこでお昼ご飯を食べて、今度は「馬の背」と呼ばれる小高い砂の丘へ。砂に足を取られながら、てっぺんにたどり着くと、砂丘と日本海が一望できる。うほっ。
 さて、ここから丘の斜面を降りるべし。さすれば海の間近にて波に触ることができる。マジ? 

 丘上では、家族連れとか若者同士とかで来ているグループのうち、誰か一人がチャレンジャーとなって斜面を駆け降りている。
 で、私も一歩足を踏み降ろしてみた。途端に、ズズズーッと足許の砂が崩れる。ひえ~、怖。こりゃ、サンドボードでもないと、ムリだよ。
 が、相棒、「砂が崩れる前に、次の足を下に踏み出せばいいんだよ」と言うと、ズボ、ズボ、ズホ! 砂を蹴崩しながら降りてしまった。
 
 To be continued...

 画像は、鳥取砂丘の駱駝。

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鳥取砂丘

 
 春旅行のメインは鳥取砂丘。以前、砂丘に行ってみたいなー、とねだったときには、「イヤだよ、砂しかないよ、つまらないよ、口開けたら砂が入るよ」と、相棒にあっさり拒否された。
 
 が、ある日、相棒、思い入れのあるらしい一冊の文庫本を持ってきて言った。
「こりゃ、砂丘に行かなきゃならないねえ」
 その名も、安部公房「砂の女」。ちょっと私の好みの文学じゃないな。
 けれども相棒、絶対に面白いから、五指に入るほど面白いんだから、とやけに推奨する。あげくに、「これを読んだら、砂丘に行くことにしようかなー」との殺し文句。

 で、私はまんまとそれを読むはめになって、おかげで砂丘を訪れることができた。

 松江からUターンして鳥取へ。駅前でお弁当とお茶とレンタサイクルをゲットして、いざ砂丘へと向かうべし。あー、見知らぬ街をサイクリングするのは、げに楽しや。
 が、海岸まではかなりの距離。おまけに坂道。自転車をコロコロ転がしながらてくてく歩いていると、ブォン、ブォン、ブォン、と物凄い音をかまして、砂丘ライダーたちが走り去ってゆく。
 あー、バイク野郎は楽でいいねえ、なんて話しながらひたすら自転車を押していると、今度は、フォン、フォン、フォン、とサイレンを鳴らして、砂丘ライダーらを追ったパトカーが走り去っていった。

 坂道を越え、再び自転車に乗ってしばらく行くと、どうやら砂丘の雰囲気。道路にも、チリチリチリと砂が風に吹かれて漂っている。
 自転車を停めて、裸の木々のしょぼい林を抜けると、おお! そこは一面の砂だった。

 To be continued...

 画像は、鳥取砂丘。

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