ギリシャ神話あれこれ:ヘラクレスの選択

 
 さて、テバイの王クレオンは、テバイを勝利に導いた戦功を称えて、娘メガラをヘラクレスに娶らせる。ヘラクレスはメガラと幸せに暮らし、3人の子にも恵まれる。
 が……

 生まれながらにヘラ神の嫉妬を受けているヘラクレス。しかもヘラの復讐は半端じゃない。
 このときもヘラは、狂気の女神リュッサを遣わして、ヘラクレスを狂乱させてしまう。
 ぐおおーッ! 単純な彼の頭は呆気なく狂気に支配され、妻メガラと子供たちを、あっという間に竈に燃えさかる火炎のなかに投げ込んで、焼き殺してしまう。怪力を持つ彼を相手では、妻子はひとたまりもない。南無。

 時遅く現われたアテナ神にしたたか頭を殴られて、ヘラクレスはようやく正気に戻る。が、妻子はすでに死んでいる。
 自分のしでかした所業に驚愕し、おいおいと悲嘆するヘラクレス。やがて彼は沈痛な思いを胸にテバイを去る。彼が赴いたところはデルフォイ。いかにして贖罪すべきかを神々に乞うために。

 すると神託は告げる。……ティリュンスとミュケナイを統治するエウリュステウス王に仕え、彼の命ずる10の難業を成し遂げよ、と。
 エウリュステウスは、ヘラの画策でヘラクレスより先に生まれ、結果、ゼウスの図らぬ祝福により王となった、王の器じゃない王。前途は多難そう。

 ちなみに、ヘラクレスが両親から授かった名はアルケイデス。彼はこのとき、デルフォイの巫女によって初めて、ヘラクレス(=ヘラの栄光)という名を与えられた。
 ヘラにいびられまくるヘラクレスが、「ヘラの栄光」だなんて、なんだか皮肉。

 こうしてヘラクレスは、ベートーヴェンのごとく、敢えて苦難の道を選択する。

 To be continued...

 画像は、ベネル「美徳と悪徳のあいだのヘラクレス」。
  エマニュエル・ベネル(Emmanuel Benner, 1836-1896, French)

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