夢の話:体制の恐怖

 
 家屋敷やビルディングのような閉鎖系の空間を、さて運良く脱出できたとして、私の夢は好転するかと言えば、ほとんどの場合そうではない。
 閉じた空間からようやく抜け出し、視界が開けたときに広がるのは、大抵はろくでもない世界だ。救いようのなさというものが、五感プラス第六感を鷲掴みにする。未来への希望の一切ない、精神的暗黒の世界。

 私は背中から壁をスルーして外に出る。ようやくの外界! 全身を包むあの外気、あの外光! 安堵と歓喜に満ちて、私は振り返る。そして眼前に開ける光景に愕然とする。
 例えば、おびただしい戦車と、機関銃を手にした迷彩服の兵士たちが整然と並んだ、茫漠とした荒野。あるいは、探照灯が夜空に徘徊する、厳戒令下の石畳の広場。あるいは、生命探知機を搭載したロボットが未登録の人間を探して巡回する、金属とガラス張りのビル街。あるいは、原始的な武具を手にした何万という人々が、蟻のように一面に群がる平原。云々。

 私は慌てて後ずさり、身を隠す。ときには、あれだけの思いで脱出した建物のなかへ、再び背中から戻ることさえある。
 奴らが、人影を見つけ次第撃てと命令されていて、実際に容赦なく撃ってくることが、私には分かっている。奴らにとって人間一人、虫けらも同然だ。

 たった今眼にしたあの体制を突破することなど可能だろうか? 突破した先に、まともな世界はあるのだろうか?

 To be continued...

 画像は、ムンク「不安」。
  エドヴァルド・ムンク(Edvard Munch, 1863年-1944, Norwegian)

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