夢の話:無際限の恐怖

 
 家屋敷やビルなど、閉じた空間から脱出できたとき、開けた視野に、何の存在も察知できないこともある。それは、“見渡す限り一面に”という特徴を持つ世界。

 見渡す限り一面の砂漠。あるいは一面の海原。溶岩が固まったばかりの、またはクレーターだらけの、一面の荒野。人っ子一人住んでいないとなぜか分かる、箱庭のような一面の住宅地。雑木と藪しかない、一面の山々。あるいは、絶対零度に程近い、鋼鉄のような一面の氷原。云々。
 すべてがあまりに貧弱な気がする。大気がいくらそよいでも、静寂しか聞こえない。空もくすんで見える。生き生きとした音がない。色がない。動きがない。生命の息吹がないからだ。

 私は気の進まない思いで、眼の前に広がるその世界へと飛び立つ。言いようのない不安と、絶望にも似た不公平感と、そして孤独とに襲われながら。

 新しく開けた世界は、確かに閉鎖系ではないのだが、どこかそれに似た感覚を私に与える。360度の視界一面(一度、先の建物から離れると、もうそれは視野から消えてしまう)は、まったく同じ単一のもので、しかもそこには私しか存在しない。
 こうした状況は、無限の空間に似ている。そして、無限空間に対する感覚は、閉鎖空間で感じる感覚に似ている。

 To be continued...

 画像は、カンディンスキー「青い空」。
  ワシリー・カンディンスキー(Vassily Kandinsky, 1866-1944, Russian)

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