9月30日は、甲子園での最終戦。
んでもって、矢野捕手の引退セレモニーがある。
これは行かなくては!
たまたま毎月1度は大阪である仕事がこの日だったことも幸いして、出かけることができました。
球場は黄色と白と黒にまみれ・・・
どこを見渡しても阪神、阪神、阪神ファン。
「横浜(この日の対戦相手は横浜ベイスターズ)はどこにいるの~?」と見渡せば、応援団席にほんのちょろっと。
ひぃふぅみぃ、数えられる人数くらい。ざっと200人くらいかしら・・
甲子園に4万人入っているとして、ものの0.5%だよ。
毎年優勝がかかっている終盤戦になると甲子園はこういう状態だね~
だから、この日のチケットはライトスタンド側は取れなくて、レフトスタンド側だったけれど、ぜぇ~んぜん気にしていませんでした。
どうせ、阪神ファンばっかりだってことはわかってましたもん。
さて試合はトントンと早い調子ですすみ、3対1で迎えた9回表。
ご存知守護神藤川球児登場!
その前から、球場は「矢野を出せ!」という雰囲気で満ち満ちてまして、「矢野! 矢野!」というコールが鳴り止みませんでした。
藤川が登場するときにも矢野の登場曲が流れたりして、矢野が出てくるんだ、と思わせるような演出。
でも、キャッチャー交代のアナウンスはなかった・・
1人目の打者がバッターボックスに入っても矢野コールは収まらず、この雰囲気のなかでは藤川も城島もさぞややりにくかろう、という感じではありました。
そうしたら、藤川が突如乱れ、全然ストライクが入らなくなっちゃった。
2者連続でフォアボールで歩かせたところへ、今日久保からホームランを奪っている村田登場。
そしてなんと村田の放った一撃はセンターを超え、無情にもレフトスタンドに吸い込まれていったのでした・・
ありえ~ん!
球場からは、「雰囲気読めよ、むらたぁ~!」の声が。
というのも横浜はこの1戦に勝とうが負けようが、今期の最下位はもうすでに決定していて、いわばこの試合は消化試合のようなもの。そんなときに打つこたぁなかろう、というわけです。
みんな空気読んでやってんのに、村田ひとりだけ気を吐いちゃって、結局1人で4点叩き出して、勝ちをさらっていっちゃった。
なんたることか・・ こういう負け方というのがまた阪神らしいというか・・
虎党が「勝っても負けても虎命」という刺繍をよく応援服に縫い付けていて、それを見るたび私は同じ阪神ファンとして心のなかで、(応援するときに『負けても』なんて何弱気なこと言ってんでぇ!)と思っていましたが、こういう負け方をするようじゃあ、せめてこうつぶやかないとやってられないわなぁ。
そして9回の裏で阪神はその得点を跳ね返すことができず、今期での自力優勝が消滅いたしました・・
あ~ 今年はほんっとに負け試合ばかりを見に来る羽目になってしまった。
ナゴヤドームでは見に行った試合、見事に全敗です。
そして甲子園でも・・
いいんだ! 今日は矢野の引退セレモニーに立ち会いたくて来たんだもん!と気を取り直すわたくし。
それにしても、矢野は最期、藤川の球を受けたかっただろうなぁ。
藤川を育てたのは矢野のようなもの。
04年に藤川に「お前のストレートは、フォークボールを磨けばもっと威力を増すようになる。」とふたりで研究を重ねて、共に汗を流した仲。
そしてその練習が実り、05年から藤川は守護神としての地位をゆるぎないものとし、輝きを放つようになったのです。
次の日、スポーツ新聞を見たら、真弓監督は、あの9回表の場面で、2アウトになったら、矢野を出す予定だったらしい、ということが書かれていた。
なんだよ~! それ!!
出すならイニングの頭からだろうが!
セレモニー的にちょろっとファンサービスで出して、「はいはい、もうこれくらいでワシはギリを果たしたからいいでしょ。」なんてことは勝負の世界では通用しないんだよ。
3対1というスコアが安心できるものでないことはわかるけれど、それだったら2アウトになったってナメたらだめだよ。野球は2アウトから、ってよく言うでしょ。
勝負の鬼と徹して出さないなら出さない、出すならイニングの最初から出す、どっちかしかないと思うんだけど。
これは阪神ファン全員の気持ちだと思う。
これまでも阪神ファンは、藤川で負けたときには文句を言ってこなかった。
「球児で負けたら仕方がない。」とむしろあきらめがついた。
今回だって、9回表で矢野―藤川のコンビで出して万が一負けたって、みんな納得するって。
この試合でつくづく指揮官というものは、選手を信頼できるかどうかの器をもっているか、ということなんだなぁ、と思いました。
イニングの最初から出していたら、矢野自身も球場のファンも誰もがその采配を意気に感じ、それに報いようとしたでしょう。
あの球場が地鳴りをたてるような「矢野コール」に矢野が応えないわけがない!
よく「声援が後押しをしてくれました。」というヒーローインタビューがあるけれど、あれはほんとのことだと思う。
良い波動は良い波動と結びつき、さらに良い波動を産む。
その見えない力を信じずにどうする!
むしろ、真弓が安全策をとって「2アウトをとってから矢野は出そう。」としたことによって、藤川が「俺が2アウトとらないと矢野さんの引退での晴れ舞台にケチをつけることになってしまう。早く2アウトとらなくちゃ。」という変なプレッシャーを与えてしまっただけだと思います。
勝負はしょせん下駄をはくまでわからない。“絶対”なんてない。
ならば、どこかでえいやっという大英断を振るわなくてはならないところは必ず出てくる。指揮官はそれに対して責任をとる気があるかどうかだけで十分なんだよね。
しかし、矢野はいい選手だったよなぁ。
引退セレモニーで矢野の現役をずっと追ったビデオをドラマ仕立てにしてオーロラビジョンで流していた。
現役をずっと追って、ってことだから、中日のときからだよ!(矢野は中日から移籍して阪神に来ました。)
阪神で引退することになったとき、最初に入団した球団のときからのビデオをつくってもらえる選手なんてほかにいるのかな。
しかも、この時間もお金もかけたビデオはたった今日1日、引退セレモニーに流されるためだけにつくられたもの。選手冥利に尽きるだろうなぁ。
いったん止んだ雨も、9回のときから阪神ファンの涙雨のようにまた降り始めていました。
ビデオが流されたあと、矢野本人から球場に詰め掛けたファンへ一言の挨拶があり、胴上げがあり、そのあと、花束贈呈がありました。
花束贈呈は矢野の娘さんふたりと、相手方の横浜から、阪神の選手から、と続きましたが、横浜が村田から、っていうのが皮肉なものだったわ。
それから選手全員と握手して回りましたが、藤川ひとりが泣いていました。
余韻にひたりながら球場をあとにし、乗り換えの「なんば」でちょいと一杯やりながらおなかを満たし、ホテルに帰ろうとしたら、なんともう終電!
「千里中央行き、この電車が最終となりま~す」の声にあわてて走り出したら、ホームの駅員さんがこちらを見て、「千里中央、乗りますか!? 乗りますか!?」と遠くから迫るように聞いてくる。
乗るから走ってるに決まってンじゃん、と思いながらも、しんどくてコクコクとうなづくので精一杯。
そしたら、マイクで「はい、黒のコートの女性で最後で~す。」と言われてしまったじゃありませんか。
恥ずかしいったらありゃしない。何百人(?)もの電車に乗ってる人が、わたし1人を待っててくれてるんだよ。
これが東京や名古屋の地下鉄なら、いくら走ろうが、時間になったものは時間、とプシューと閉めるんだろうね。大阪は情がきくわ。やり方は露骨だけど。
これでまたひとつ、ディープな大阪を体験いたしました。
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