気まぐれ徒然かすみ草

近藤かすみ 

京都に生きて 短歌と遊ぶ

箸先にひとつぶひとつぶ摘みたる煮豆それぞれ照る光もつ

樹雨  日高堯子

2005-03-30 20:37:18 | つれづれ
黒揚羽ゆらりときたりたちまちに身ぬち息づく死者の羽衣

壊れつつ生きるいのちの花伽藍たましひはいま抱かれてをりぬ

まあたらしき死者のこゑすひらきたる鉄砲百合を覗きてをれば

目薬をさすとあふむく秋空に金の時雨がながれてゐたり

すみれすみれ死神のやうにつめたくてかなしかりけり父の静脈

(日高堯子 樹雨 北冬社)

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かりんのひと。以前に「黒髪考、そして女歌のために」をぱらぱらと読んだ。
樹雨は第五歌集。自然の蝶や花を詠いながら、奥が深い。
旧かなの良さを感じた。

マツケンサンバ

2005-03-29 21:44:19 | つれづれ
なにもかも忘れて熱く腰ふれば至福となれりマツケンサンバ
(福井有紀)

生き残るって難しいわということの早い話がマツケンサンバ
(松木 秀)

紅白でマツケンサンバ知りしより豚児さそひて踊りぬわれは
(白山太郎)

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短歌人4月号よりマツケンサンバの歌。
けっこう好きなのだ。ヨン様よりははるかにいい。
頭についた昆虫の髭のようなもの、あれって小林よしのりも付けてたなと思う。
大地真央の「上海冷茶」のCM、これもなかなか素敵。

マツケンの元妻なるかあの女 スターは一家に一人でいいの
(近藤かすみ)

葉山暮色 若林のぶ

2005-03-28 22:48:02 | つれづれ
趣味を通じ楽しく対話するなんて馬鹿馬鹿しくはないのかどしや降り

倚りかかつてもいいのぢやないのこのベンチ不都合な事は一つづつ終る

高瀬氏は恋人なのか それつきりもの言はぬ夫との夕餉を終へぬ

いのち濃きものは清しき葉鶏頭 葉の芯までもひたにくれなゐ

どなたさまか醜きものを美しくして下さるといふ海へ行きます

(若林のぶ 葉山暮色)

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短歌人4月号の三角點のページで若林のぶさんが「歌歴六十年」と書いておられる。そこに「私も初心に還って六十一年の一歩を踏み出したい」とある。この若さに感動する。
奥村晃作短歌ワールドの日記を見ると、斉藤斎藤『渡辺のわたし』批評会にも若林さんは出席された様子。すてきなお手本を見る思いがする。

私も、ずっと気にかかっていたことが、ひとつ解決する気配。自分でどうしようもなくなるとき、若林さんの「不都合なことは一つづつ終る」という言葉に何度も励まされた。
画像は宝ヶ池公園のベンチ。

静ごころなく 蒔田さくら子

2005-03-27 21:47:35 | つれづれ
シクラメンもばらも真つ赤が好きになり静ごころにはいまだ到らず

雁がねの文様の帯形見とてかへらぬ母を哭きし日ありき

よき老と死を得し天寿の姑に及びしやわが夭逝の母

在らばいかなる老い見つむらむかおもかげの母の若きを今はよろこぶ

ひつそりと身を退(ひ)くごとく夕闇に溶けてかぐはし白梅の意気

(蒔田さくら子 短歌4月号)

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蒔田さんには、上品な白梅の意気を感じる。
2、3、4首目、早くに亡くなられたお母様を詠まれたのだろう。
私も同じ身の上なので、感情移入して読んだ。母への思いをこういう風に詠めたらいいと思うがまだまだ至らない。

まぼろしの母の日傘に会ひに行く省線大阪森ノ宮駅
(近藤かすみ)

椎名桔平

2005-03-26 23:28:27 | つれづれ
木曜のドラマ終わればそののちを生きずともよい椎名桔平

(俵万智 チョコレート革命)

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テレビの土曜ワイド劇場を夢中になって見てしまった。
見ている間、俵万智の歌に椎名桔平が出てきたと気になって仕方がない。
ドラマが終わって調べると、この歌だった。


シクラメン

2005-03-25 00:29:41 | つれづれ
シクラメンすなはち豚の饅頭は湯呑茶碗に身のうへ嘆く

「一を聞いて十を誤解する人」と机ならべ仕事すること浮世といはむ

(小池光 滴滴集)

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頭の中で「一を聞いて十を誤解する人」というフレーズが鳴っている。
そのあとに「ずつたんぼ」がつづく。

写真屋

2005-03-24 13:53:53 | つれづれ
飛行士の足形つけてかがやける月へはろばろ尾花をささぐ

本屋過ぎ薬局を過ぎ鞄屋の前にてたうとう傘をひらきぬ

人あらぬ朝のデパートの一角に燕のごとくハイヒール並ぶ

問はぬこと問ひえぬことの多くなる書架に黄ばめる岩波文庫

もう一人そこにはをりき永遠に記念写真に見えぬ写真屋

(香川ヒサ テクネー)

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明日から愛知万博だったか。人が多いところが苦手なので行かないと思う。
千里の万博も実は行っていない。最近になって、やっと会場後の公園に行った。
モノレールに乗ったのもここ1年くらいのこと。

薔薇園

2005-03-23 21:09:57 | つれづれ
水を売る自動販売機置かれをり喉の渇ける人多くなる

犯人にあらねば心足らふまで探偵は犯罪に関はる

薔薇園に薔薇の名を読む立札のかすれて読めぬ薔薇の名ぞ美しき

斑猫黒猫白猫いく匹も飼つてゐるから独りの老女

けふはまだ誰にも会はず街中にあまたの人とすれちがへれど

(香川ヒサ マテシス)

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京都府立図書館から、長い間借りている本をいよいよ返しにいかんならん。
ここひと月ほど、すっかり香川ヒサに浸っていた。この人の持つ距離感が好きだ。

含羞草 

2005-03-21 20:44:27 | つれづれ
わがゆけば男のにほひちかよると含羞草(はにかみさう)の葉を閉づるかも

(北原白秋 桐の花)

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確実に日が長くなっている。
ブックオフまで散歩に行き「パラサイト社会のゆくえ」山田昌弘・ちくま新書を買って読む。
2004年10月の本が半額。

触れられてその身を閉づる眠り草ひと去りしのち身をひらきをり
(近藤かすみ 題詠マラソン 題・眠)

春なれば

2005-03-20 19:34:02 | つれづれ
身辺をととのへゆかな春なれば手紙ひとたば草上に燃す

(小中英之 わがからんどりえ)

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気まぐれ徒然かすみ草のHP版がうまく行かないまま。
なんとかせんとあかんと思いながら、それを考えることが負担になってきている。
ネット上のあれこれについて、さまざまなプレッシャーを感じる。

題詠マラソンの批評サイトがいくつも立ちあがっていることについて、いつか藤原龍一郎さんが「とにかくたくさんの短歌作品を読むことが大事」とおっしゃっていた。
私もいつも思っていることだ。
そこで得たものを、このブログに残していければ幸い。
ただ、それだけ。