気まぐれ徒然かすみ草

近藤かすみ 

京都に生きて 短歌と遊ぶ

箸先にひとつぶひとつぶ摘みたる煮豆それぞれ照る光もつ

短歌人4月号 同人のうた 3

2017-04-24 23:36:18 | 短歌人同人のうた
俳人の楽天蔑し歌人(うたびと)の厭世嗤ふこの短詩形
(西台恵)

忘れるたびにキオスクで買ふボールペンがもう一生分 窓ぎはにたつ
(和田沙都子)

何ごとも起こさず二月の一日は翳りゆくかな翳りゆくのみ
(高野裕子)

きさらぎは春くる前のひと休み遠き山なみ夕日によろふ
(高田流子)

深い雪わたしを何処に連れてゆく永い間のわが想ひびと
(大和類子)

木蓮の銀の蕾は光り合い一刻者の烏を去らしむ
(川田由布子)

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短歌人4月号、同人1欄より。

寒暖の差の激しい4月は、一番苦手な月かもしれません。桜が苦手。

ひろすぎる海 足立尚彦 

2017-04-16 12:49:17 | つれづれ
数百億の乳酸菌を摂るために百円出しておつりをもらう

使い古しの輪ゴムのように役立つか役立たぬかの際を生きおり

漢方薬の漢字が我をそれとなく安心させる とりあえず飲む

とりあえず今夜は生きているだろう野菜売り場の野菜のように

燃えるごみの中には文字が多くあり言葉を連れてごみ出しにゆく

亡き妻の最期の息を思い出すたびに鳴り出すこのフルートは

食間の漢方薬のおいしさはどこかモームの短編に似る

世の中に歌人が多くいるけれど何のためだかよくわからない

カレンダーめくり忘れて数日をこの世から取り残されている

貧困に少し距離あり飯を買う所属結社の会費を払う

(足立尚彦 ひろすぎる海 ミューズ・コーポレーション)

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八雁短歌会の足立尚彦の第五歌集『ひろすぎる海』を読む。

宮崎県在住の足立さんは、奥さんを亡くしてひとり暮らしのようだ。何のストレスもなく読める歌集。
歌を作ることで救われている人の歌を、素直に読んでわたしは救われている。ありがとうございます。



短歌人4月号 同人のうた 2

2017-04-12 12:17:35 | 短歌人同人のうた
3Bの鉛筆を用ゐ草色の手帳に記すうたのかけらを
(小池光)

よべばすぐもどつて来さうな田村さんの写真によばれまたみる歌集
(蒔田さくら子)

雨水まであと幾日か夕やみに暦の二月しろく泛びぬ
(斎藤典子)

納豆巻き囓りながらに読む外信トランプの馬鹿トランプの馬鹿
(森澤真理)

金借りて姿消したる老人のハンカチは椅子に忘れられをり
(吉浦玲子)

みどりの葉すらりと立ちてすずしかる水仙の花は少年のかほ
(加藤満智子)

そしてまた死は石のようか上向きに揃えられたる母の足に触る
(小野澤繁雄)

濡れている冬の星空祈るごと歩けば遠くなる帰り道
(八木博信)

いつも飴持ち歩く人ととなりあひ会話とぎれて食むハッカ飴
(寺島弘子)

靴ひもを結び直して出てゆきしあの日の吾子はさらに遠のく
(岩下静香)

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短歌人4月号 同人1欄より。

さまざまに指の触れたる上掛けのパッチワークに身は覆はれて
(近藤かすみ)

一月に有沢螢さんのお見舞いに行ったことを一連にして、4月号詠草として十首を送った。載るのは七首。事情を知らずに読んでもわからない歌である。
ほかの方の作品を読んでいて、家族や友人の挽歌があるが、どこかが欠けていてうまく読み取れない。歌そのものとして良くないとダメだから仕方がない。


短歌人4月号 同人のうた

2017-04-02 23:55:30 | 短歌人同人のうた
動かざる足裏(あうら)に踏絵のキリストが「吾(あ)を踏みて立て」と夢に囁く
(有沢螢)

迷うため一駅手前で降りてみる二月の風を涼しく受けて
(猪幸絵)

衣料品売り場平常営業の静けさグンゼ八分袖あり
(柏木進二)

塩町の夜の空地に消残れる半畳ほどの雪の明るさ
(倉益敬)

消耗戦となりゆくばかりの介護なりさあれ『兵たりき』読む嘔吐こらへて
(武下奈々子)

福豆をひとつぶひとつぶ選りてゐるうちに百年経つ心地せり
(洞口千恵)

薄氷がジグソーパズルのやうに割れだれにでも死はたつた一回
(小島熱子)

山墓に水仙の花たむければやさしかりけり冬の陽射しは
(杉山春代)

降る雨に市電の青き火花散る記憶ありたりこの雨の午後
(藤原龍一郎)

はたらいてお金にかえて原付を少しうるさくする使い道
(斉藤斎藤)

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短歌人4月号、同人1欄より。

今日は、短歌人関西歌会のため奈良へ。毎年四月は奈良で行われている。行きは最寄り駅から地下鉄で近鉄奈良駅まで直通で快適に行くことができたが、帰りは京都駅で乗り換え、最寄り駅でまたバスに乗り換え。とにかく観光客が多い。日本語でない言葉を話す人もかなりいて、人の多さに感心する。乗り物では、スマホで音楽を聴いてさまざまなことをやり過ごす。
今日の詠草にアーモンドの花を詠んだ歌があった。こんな花です。