気まぐれ徒然かすみ草

近藤かすみ 

京都に生きて 短歌と遊ぶ

箸先にひとつぶひとつぶ摘みたる煮豆それぞれ照る光もつ

無言にさせて 高橋ひろ子 砂子屋書房

2022-11-13 00:16:29 | つれづれ
青梅が店に積み上げられてゐて心ざはざはと日本の主婦

羨ましくはないかと亀に聞かれをり首を上げ目を閉ぢ甲羅干しする

まだそんなところですかと縫ひぐるみのクマに聞かれて締め切り近し

階段の手摺りも今夜は冷たくて寝ようねとカエルの湯たんぽに言ふ

歌のみにひと日関はり豊穣か浪費かわからぬ日が暮れてゆく

頭も手足もたちまち仕舞ひみどり亀わたしはここにゐませんと言ふ

冬晴れの畦に出会へばこの草の名前は私が決めると決める

手の先が細く五本に分かれるがあるとき不思議絵本をめくる

それぞれの顔に苦しむ地獄絵図ひとりの男の笑ふやうなる

ボールペンが出なくてこれで終はりますと書かれて花山多佳子の手紙

(高橋ひろ子 無言にさせて 砂子屋書房)

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塔短歌会、鱧と水仙所属の高橋ひろ子の第三歌集。高橋さんとは十年ほど親しくお付き合いしているが、不思議な感覚の持ち主である。亀、縫いぐるみのクマ、雑草と呼ばれるようなその辺にある植物と常に会話しながら暮らしているようにみえる。わたしなどモノはモノと割り切って見るが、彼女はそうでなくて優しい。そして何よりしっかりと主婦である。歌には独特の詩情がある。

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