気まぐれ徒然かすみ草

近藤かすみ 

京都に生きて 短歌と遊ぶ

箸先にひとつぶひとつぶ摘みたる煮豆それぞれ照る光もつ

ことのはしらべ 田中教子

2012-11-01 19:16:03 | きょうの一首
いま何を買ひに来たのかわからなくなつてオレンジ三個を買ひぬ
(近藤かすみ)

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歌友の田中教子さんの本『ことのはしらべ』が、文芸社から出版されました。
田中教子さんは、第三回中城ふみ子賞受賞の歌人として活躍されるとともに、長く万葉集の研究をなさっています。
歌集『空の扉』『乳房雲』二冊に続き、いよいよ歌論集の出版です。

「万葉集と現代短歌」という大きな柱とも言うべき論のほかに、茂吉の万葉語、野菜、果物の歌など、読み物としてたのしい文章も入っています。
野菜、果物の歌のところで、私の上記の歌を取り上げていただきました。

論文と短歌とエッセイと、どれも楽しんで勉強になる一冊です。
アマゾンでも、購入できます。
http://www.amazon.co.jp/%E3%81%93%E3%81%A8%E3%81%AE%E3%81%AF%E3%81%97%E3%82%89%E3%81%B9-%E4%B8%87%E8%91%89%E9%9B%86%E3%81%A8%E7%8F%BE%E4%BB%A3%E7%9F%AD%E6%AD%8C-%E7%94%B0%E4%B8%AD-%E6%95%99%E5%AD%90/dp/4286124819/ref=sr_1_1?ie=UTF8&qid=1351764612&sr=8-1

秋の夜長に、いかがでしょうか。

こちら、『雲ケ畑まで』も、よろしうに。
http://www.amazon.co.jp/gp/product/4903480720/ref=ox_sc_act_title_2?ie=UTF8&smid=AN1VRQENFRJN5


塑像モデルに

2011-09-03 00:29:03 | きょうの一首
塑像モデルに相応(ふさ)ふ魚村晋太郎通ふか今日も谿のアトリエ
(花山多佳子 胡瓜草)

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花山多佳子の最新歌集の最後の方で見つけた歌。
魚村さんは、よく知っている。魚村さんは金魚のアロハがよく似合う。
塑像モデルが相応うと言えば、そんな気もする。頼まれ仕事は断らないだろう。
与謝野晶子に「きんぎょのおつかい」という童話があるが、その挿し絵、金魚が立って歩く姿を想像してしまう。

歌をみると「・・・ふ魚村晋太郎通ふ・・・」が目につく。魚村晋太郎通(ファン)が金魚に餌の「ふ」をあげているように見えてくる。ふふふ。

『胡瓜草』については、いずれじっくりと。

鱧と水仙 37号

2011-08-27 00:32:25 | きょうの一首
鱧の身に梅干ほぐし朱を添へてほんに涼しや紫蘇の葉のうへ
(近藤かすみ)

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お待たせしました!

「鱧と水仙」第37号が出来ました。

定期購読お申し込みのみなさま、到着しましたでしょうか。
試しに読んでみたい方は、コメント欄から近藤までお申し付けください。
送料共で一冊千円です。二月(水仙号)と八月(鱧号)の年二回の発行です。
お気に召されたら、定期購読していただければ幸いです。

今回は巻頭「灰色の眼鏡」30首ほか、「箱根吟行」14首、エッセイ「鱧つれづれ」を出しています。

 

「少年」の発見

2011-07-15 00:39:30 | きょうの一首
拒みがたきわが少年の愛のしぐさ頤に手觸り來その父のごと
(森岡貞香 白蛾)

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歌壇8月号に「「少年」の発見」という題で小文を載せてもらいました。
<特集・短歌にみる戦中戦後の母たち>の中に、
「森岡貞香の歌にみる母というもの」というテーマで書いています。
短歌総合誌からの初めての原稿依頼、緊張しました。

東北

2011-03-14 19:36:54 | きょうの一首
白鳥の飛来地をいくつ隠したる東北のやはらかき肉体は
(大口玲子 ひたかみ)

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東北地方太平洋沖地震に遭われたみなさま、心よりお見舞い申しあげます。

京都ではまったく揺れず、地震があったことにも気づきませんでした。関東に居る家族から「大丈夫?うちはみんな無事です」というメールがあって、初めて地震のことを知りました。
テレビで地震とあとの津波の様子を見て、心を痛めています。こちらで何をしたらいいのかわかりません。お店に品物がない、というメールを知人からもらうと何とかできないかと思いますが、荷物を送ったとしても、無事に着くかどうかわからないし、しかるべきところに寄付するのが、今できることかもしれません。そして節電。

東北のやはらかき肉体・・・と詠った大口玲子さんはご無事でしょうか。
気持ちがいろいろ揺れて、無傷でいることが申し訳なく、落ち着きません。ブログの更新を怠っていましたが、今日はちょっとだけ短歌のことを考えられるようになりました。


海へ行きます

2011-03-06 01:50:12 | きょうの一首
寺町の小さき店に翡翠色のピアス買ひたり 海へ行きます
(近藤かすみ 鱧と水仙36号)

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私の所属しています同人誌「鱧と水仙」36号が出来ました。
購読ご希望の方は、近藤までお申し付けください。送料共で千円、年に二回の発行です。

casuminn@gaia.eonet.ne.jp

年越すいのち

2010-12-31 15:40:32 | きょうの一首
はかなきまで小さけれども木に騒(そめ)く夕雀みな年越すいのち
(蒔田さくら子 天地眼)

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いよいよ大晦日。昨夜から雪が降り続き、十年ぶりくらいの大雪かと思う。雪が音を吸い取ってとても静かだ。
蒔田さくら子さんの歌集『天地眼』を読み始めて、途中なのだけれど、きょうの日にぴったりな一首を見つけた。
みな、無事に年を越したいものです。

今年は、公私ともにいろいろあり、良い年だったなあと感謝しています。
来る年も、明るい年であることを祈りつつ。

クリスマス・イヴ

2010-12-24 11:39:56 | きょうの一首
待つ人はつねに来る人より多くこの街にまた聖夜ちかづく
(小島ゆかり ごく自然なる愛)

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クリスマスイヴ。そして今日はわたしの○7回目の誕生日。
深夜、日付が変わると子どもたちから携帯電話におめでとうのメールが来た。
今年、はじめて携帯を持ったのだが「ああ、こういうことがあるのだ」と嬉しかった。携帯に慣れている人には、当たり前のことかもしれない。

小島ゆかりの歌。上句は箴言のようでもあり、現代のクリスマスの真実を言いあてている。

ひるがほ

2010-09-15 00:07:40 | きょうの一首
くつきりと折目ただしく蕾みゐるひるがほのやうな日傘をひらく
(河野裕子 体力)

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河野裕子さんの歌には、よく昼顔と日傘が登場する。『ひるがほ』という歌集もあるくらいだ。
この歌では、「ひるがほ」に至るまで、丁寧に昼顔の描写がされて、そのあと昼顔が日傘になって、ぱっとひらく。「ひるがほ」「日傘」「ひらく」の「ひ」音の重なりが明るい。漢字とひらがなの配分も絶妙。

朱の大鳥居

2010-08-27 00:24:42 | きょうの一首
待てど来ぬ5番のバスがわたくしにじつくり見せる朱の大鳥居
(近藤かすみ)

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先日、縁あって大阪学生短歌シンポジウムという歌会に参加しました。
そのときに提出した歌を、英訳していただきました。

waiting and waiting

for the number 5 bus,

I find my eyes filled

with the great red portal

of the Heian Shrine

http://www.geocities.jp/araragi_osaka/2010goudou-utakai1.html

また、この歌は、同人誌『鱧と水仙』第35号 でのデビュー作「秋の空間」の冒頭の歌でもあります。
忘れられない歌になりそうです。