指呼の間の五重塔の見えぬほど蓬萊橋にふりしきる雪
長命の人のことなど聞こえくれば母の享年口惜しと思ふ
はすかひに秋の陽させば萩の花しぶきのごとくきらめきにけり
「蔑」の字の点は斜めか横一か校閲部会の侃侃諤諤
一如さんと呼ばるるやうな歌詠まな方代さんにはおよばざれども
どこまでも堕ちてゆきたき日もありぬ『安吾全集』校閲係も
「鹽壺忌」と名づけ偲ばむ車谷長吉が逝きし五月十七日
夏休み 結膜炎の眼をあらひならんでかへるあねとおもうと
わたくしがどんな子供でありしかとかたりてくるるひとはいまなく
見えざれば見えずともよし雲のなか弥陀のごとくにおはす不二の峰
(伊東一如 蓬萊橋 六花書林)
長命の人のことなど聞こえくれば母の享年口惜しと思ふ
はすかひに秋の陽させば萩の花しぶきのごとくきらめきにけり
「蔑」の字の点は斜めか横一か校閲部会の侃侃諤諤
一如さんと呼ばるるやうな歌詠まな方代さんにはおよばざれども
どこまでも堕ちてゆきたき日もありぬ『安吾全集』校閲係も
「鹽壺忌」と名づけ偲ばむ車谷長吉が逝きし五月十七日
夏休み 結膜炎の眼をあらひならんでかへるあねとおもうと
わたくしがどんな子供でありしかとかたりてくるるひとはいまなく
見えざれば見えずともよし雲のなか弥陀のごとくにおはす不二の峰
(伊東一如 蓬萊橋 六花書林)