気まぐれ徒然かすみ草

近藤かすみ 

京都に生きて 短歌と遊ぶ

箸先にひとつぶひとつぶ摘みたる煮豆それぞれ照る光もつ

短歌人6月号 同人のうた

2016-06-13 12:18:47 | 短歌人同人のうた
目を病みてあふぐ並木のさくらばな下之橋御門の堤に浄し
(青輝翼)

ひとひらの貝の形の皿の上「花遊山」てふ菓子置かれをり
(有沢螢)

街中の染井吉野は咲き満ちて窒息しそうなわれが立ちおり
(関谷啓子)

月天心水仙のはなほの白く春のかをりのなかを歩めり
(大森浄子)

きのふけふ中国山地を巡り来し列車に乗りて、乗りて何せむ
(八木明子)

静けさと時間が少し要るのです花の波動を受け取るまでに
(武藤ゆかり)

みなみかぜは福島よりくる風なればこころして受く桜とともに
(洞口千恵)

一枚の紙を重ねてゆくように生きんや今日の靴も選びて
(岩下静香)

滝のごとさくらは堀に傾れつつ白鷺の城をいろどりてをり
(西橋美保)

わが庭に孫が植ゑたるチューリップひとつ花咲きみつつの蕾
(小池光)

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短歌人6月号。同人1欄より。



短歌人6月号 6月の扉

2016-06-03 16:56:47 | 短歌人同人のうた
三番も十六番も空いてないそういう時に入れる七番

ロッカーに荷物押し込むそのときに花びら一まい舞い込んでくる

(川島眸 荷物)

全面にマンション広告描かれしコインロッカー上段は雲

荷を入れるときは誰でも一人きりコインロッカーの暗みを覗く

(河村奈美江 ばた足)

爆買いにいそしむ人らを見つつ過ぐ春浅き駅のロッカー前を

かろやかに音ひびかせて落ちてゆく百円硬貨一枚の音

(柊 明日香 一枚の音)

春ネコやヒヨドリの声も届かざる通路に並ぶコインロッカー

一晩ぢゆう空きを探して見つからぬコインロッカーの夢より戻る

(真木勉 みんなの願ふ)

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短歌人6月号、6月の扉。題詠*コインロッカーを詠む