気まぐれ徒然かすみ草

近藤かすみ 

京都に生きて 短歌と遊ぶ

箸先にひとつぶひとつぶ摘みたる煮豆それぞれ照る光もつ

題詠マラソン2004(31~35)

2004-09-30 13:56:47 | 題詠マラソン2004
031:肌
素肌には男のシャツがよく似合ふ? 常套句など破り捨てたし

032:薬
いつものあの薬を取りに帷子の辻まで行かむけふは本名

033:半
もうとうに半ばを過ぎしわれの生(よ)に冒険あるやまた恋あるや

034:ゴンドラ
観覧車のひとつひとつのゴンドラに十数分のドラマが廻る

035:二重
後ろよりひとに見らるる心地して二重に扉を閉ざしてをりぬ


題詠マラソン2004(26~30)

2004-09-30 13:24:49 | 題詠マラソン2004
026:芝
われの知らぬ快楽あるときみは言ふ庭の芝桜眺めつつ言ふ

027:天国
天国に役者揃ひてさて今宵芝居の幕はにぎやかに開く

028:着
レインコート着ぬこと久し阿倍野へと向ふ日曜春の雨降る

029:太鼓
少年のこゑは魔法の周波数ブリキの太鼓を首からさげて

030:捨て台詞
ちよいと粋な捨て台詞思ひついたらば別れてもいい ただ、今はまだ  

題詠マラソン2004(21~25)

2004-09-30 13:17:25 | 題詠マラソン2004
021:胃
胃がキュンと痛くなるよなひとと居て頬うすきまま春秋を過ぐ

022:上野
北大路辺りを夫婦で散歩せし上野瞭氏の姿もう亡い

023:望
われはいまやうやう歌に出会ひたり長生きするゆゑ希望は捨てず

024:ミニ
おとなりのガレージにあるミニクーパー屋根に桜の花びら乗せて

025:怪談
岸恵子有馬稲子に久我美子亡き母と見し映画「怪談」

題詠マラソン2004(16~20)

2004-09-29 12:02:44 | 題詠マラソン2004
016:乱
花冷えの今宵もいまだ片付かぬサイバードールの部屋の乱雑

017:免許
黄泉の国へひとを連れゆく舟ありて操縦免許持つは三人

018:ロビー
ロビーにてフラノのジャケット見かければあの日のきみかと目を凝らしたり

019:沸
珈琲が沸くまでわたしを抱きしめて 窓のそとには雨が来てゐる

020:遊び
リリヤンを編んで遊びし放課後のあの教室へわれは戻れず


題詠マラソン2004(11~15)

2004-09-29 11:45:45 | 題詠マラソン2004
011:犬
飼ひ犬が死ねばその日はちよつと泣き次を探すとあのひとは言ふ

012:裸足
まだきみの前で裸足になりしことなきと思へばすこしさみしき

013:彩
垣根より侘助の紅のこぼれ来て雪のさ庭の彩りとなる

014:オルゴール
オルゴールの蓋閉ぢられて束の間の休息をとる若き踊り子

015:蜜柑
蜜柑の筋を丁寧にとる男だね 結婚前に祖母は言ひをり


題詠マラソン2004(6~10)

2004-09-27 10:28:49 | 題詠マラソン2004
006: 土
思うよな手帳が見つけられなくて街をさまよふ土曜の日暮れ

007:数学
パズル解く感覚を持て数学の証明問題いまは懐かし

008:姫
むかしわれの好みし絵本のいばら姫いまはいづこの城に暮らさむ

009:圏外
携帯をいまだに持たぬわたくしはこの世の中の圏外に居る

010:チーズ
別れたるをとこのにほひ思はせるプロセスチーズひと口で食む

題詠マラソン2004(1~5)

2004-09-27 00:17:40 | 題詠マラソン2004
001:空
そんなにも遠くない気がしています今のわたしと空までの距離

002:安心
心細さふいに募りくる夜更けには<安心牛乳>温めて飲む

003:運
鴨川に冬を運ぶとふユリカモメ見ぬまま今年は春になるらし

004:ぬくもり
パソコンの文字にぬくもり感じつつ今宵もふけて電源落とす

005:名前
子を無事に授かり産みて名前つけしときの思ひを我は忘れず

真冬の書架に

2004-09-14 16:10:09 | つれづれ
読み手との一期一会を待つように真冬の書架に歌集は眠る

新しい歌集ひらけばひとすじの栞はひかるみづ浅葱色

見開きに珠玉の歌は並びゐて左右(そう)のページのあはひ明るく

黒髪の長きを誇るそのひとの想ひあふるる第一歌集

幾百の想ひを裡にたたみこみ真冬の書架に歌集は眠る