はつなつの風にキリンは吹かれおり洗ったばかりのTシャツのなか
冬の日にわれとふたりで生まれ来しいもうとがいて墓に眠れり
消えてゆく音の気配を見届けるためのタクトはまだ空にあり
椅子のないピアノがひとつ壁際にありぬ太古の小舟のように
角笛は狩りに使っていた楽器もう君の名を呼ぶことはない
治る足だったらいいね ストローの袋がすこし水に濡れてる
だれからも名を呼ばれずにすむひと日 森に呼ばれて森に入りゆく
はじめての杖がこころに慣れなくてわたしの町では折りたたんでおく
雲梯をわたりゆくときぐいぐいとあなたのからだ雲になりゆく
寝室の窓は朝陽の入るところ右手の甲がよりあかるくて
(永田愛 アイのオト 青磁社)
冬の日にわれとふたりで生まれ来しいもうとがいて墓に眠れり
消えてゆく音の気配を見届けるためのタクトはまだ空にあり
椅子のないピアノがひとつ壁際にありぬ太古の小舟のように
角笛は狩りに使っていた楽器もう君の名を呼ぶことはない
治る足だったらいいね ストローの袋がすこし水に濡れてる
だれからも名を呼ばれずにすむひと日 森に呼ばれて森に入りゆく
はじめての杖がこころに慣れなくてわたしの町では折りたたんでおく
雲梯をわたりゆくときぐいぐいとあなたのからだ雲になりゆく
寝室の窓は朝陽の入るところ右手の甲がよりあかるくて
(永田愛 アイのオト 青磁社)