気まぐれ徒然かすみ草

近藤かすみ 

京都に生きて 短歌と遊ぶ

箸先にひとつぶひとつぶ摘みたる煮豆それぞれ照る光もつ

池にある石 三井ゆき 

2019-04-21 17:48:15 | つれづれ
この先はいくらか己れを好きになり生きてゆかむか侘助が咲く

舌いちまい反して咲ける紫木蓮罪とがなどはあらざるごとく

父に詫び母にも詫びて夫に詫び盆はかなしき身のおきどころ

えいゑんのなかなるひとひけふのそらどの日でもなき浮雲ひとつ

一生をきつちり生きぬきころがれる蜂のむくろを草かげに寄す

あまくさのうるめ鰯の叫ぶ口 体揃へてひらきゐる口

朝の路上にころがりゐたる靴ひとつ苦しさを脱ぎしもののごとくに

東京のカラスは電車の屋根に乗り新宿へ行くと那谷さんいへり

世の中はからくりばかりいくつもの数字に触れて手にする紙幣

郭公が鳴き山鳩が鳴くけさはことにも深く亡き母に詫ぶ

(三井ゆき 池にある石 六花書林)