気まぐれ徒然かすみ草

近藤かすみ 

京都に生きて 短歌と遊ぶ

箸先にひとつぶひとつぶ摘みたる煮豆それぞれ照る光もつ

きのうの朝日歌壇

2006-01-31 21:07:22 | 朝日歌壇
福引きの花の種三袋ポケットにしまいて急ぐ吹雪く家路を
(上越市 南雲悦子)

新学期始まりましたと子供たちの見守りたのむ広報車ゆく
(八王子市 田中一美)

古里の景色はスローモーションで過ぎる駅には昔の私
(東京都 柴田佳美)

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一首目。年末の福引きだろうか。当たった花の種をポケットに入れていると、花を咲かせる楽しみに吹雪いてもちょっといい気分になる。三袋のところが字余りなので、ここをみっつと読むようにルビをふったらどうだろう。
二首目。今は子供の通学の安全のため、地域で見守りがあるように広報車が走るのか。知らなかった。午後3~4時ころ小学校の近所を通ると、お迎えのクルマや母親らしき人がたむろしている。幼稚園の送り迎えはあったが、いまは小学生も。わが子がとりあえず大きくなったので、ほっとしている。しかし、おかしな人を見かけたとして、どう対処したらいいんだろう。しかも私はかなりおかしなオバサンである。
三首目。もうひとりの自分がどこかに居るという想像はよくする。昔の自分に会うという着想もよくわかる。スローモーションのカタカナの間延び感が面白い歌だと思った。

泣くよりも笑うて生きるひとすくひちさきあられを抹茶くず湯に
(近藤かすみ)


つばさ

2006-01-30 21:24:31 | つれづれ
海と陸(くが)分くる境にわれは立ち発(た)ちてはばたくつばさ眩しむ
(蒔田さくら子 つばさ 毎日新聞1月29日)

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短歌人掲示板で紹介されていた蒔田さくら子さんの短歌、藤原龍一郎さんの短歌月評を読みたくて図書館に行く。蒔田、藤原両氏の目がこちらをじっと見ている。短歌を作ることは、こわいことだと思う。自分の書いたものが人の目に触れることは、こわいと思う。しかし止められない。

冬支度 鶴田伊津

2006-01-30 00:05:48 | つれづれ
酩酊の楽しみなどはもういらぬ 子のはじめての冬支度する

からっぽの腕で湯船にくつろげば乳房に痛みりゅうとはしれり

この部屋に二度と戻れぬ錯覚に出かける前は窓ガラス拭く

(鶴田伊津 冬支度 短歌人2月号)

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鶴田伊津さんのこのごろの歌は、赤ちゃんとの生活が詠われていて懐かしい。小さな子供の居る暮らしは、微笑ましさで済まされない過酷さがある。私など、今になっても子育てに関して後悔ばかりで、幼い子供を見るのがつらいのだ。また子供の居ない人は、いないことに、何か生きている上での「やり残し感」を持っておられる感じがする。子供というのは、産んでも産まなくても女を責め続ける存在だ。

新しき檻を探しに行くといふ子を肯ひぬ母なるわれは
(近藤かすみ)




青色ダイオード 花山多佳子

2006-01-27 22:37:39 | つれづれ
植立てのパンジーを抜く楽しみを鴉はいかに鴉に伝ふ

付箋あまたつけし歌集をざはざはと箱に押し込む 不覚といふべし

高い声で唄ふ男の歌手ばかりフランク永井をわれは恋ふるも

二○○五年寒く暮れつついづこにも青色ダイオードの電飾ともる

黒豆を浸けたる水がむらさきになりゆく時間を一挙に零す

(花山多佳子 青色ダイオード 短歌2月号)

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一首目。上句で、え?と思わせるが、このいたずらをするのは鴉。その鴉たちは感情の伝達の方法を持っているのかという作者の疑問。実は植えたてのパンジーを抜かれたことを怒ってるのに、持ってまわった言い方で歌にしている。
二首目。最近の歌集で、箱つきと言えば、小池光「時のめぐりに」、資延英樹「抒情装置」。私は付箋をつけたのち、しまったと思って、本体と箱を重ねて積んでしまうのだ。
三首目。低音の魅力がフランク永井なら、高音は小田和正。小田和正が声を保つためにいかに努力しているかというドキュメンタリーを先日見たところ。
四首目。青色ダイオードの電飾は安くてすむと聞いたことがあるが、本当だろうか。暖かいか寒いのかわからず、不気味に思える電飾。
五首目。結句の一挙に零すが勢いがよい。視覚的にもわかる歌。

鬼瓦のごとき顔して恋ごころしつとり歌ふ菅原洋一
(近藤かすみ)

サンタのブーツ 俵万智

2006-01-26 22:39:50 | つれづれ
「おかあさんきょうはぼーるがつめたいね」小さいおまえの手が触る秋

子の友のママが私の友となる粘土で作るサンタのブーツ

本名とペンネーム並ぶ投稿歌ほぼ100%本名がよし

「おかあさんはおとな?」とふいに聞かれおりたぶんおおむねそうだと思う

木枯らしに桜木は揺れ見たくないけれど知りたいおまえの最期

(俵万智 サンタのブーツ 短歌研究2月号)

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俵万智さんのお子さんは、2歳らしい。必死で母親をしてたころなら、共感する歌がある。まっすぐな歌なので、本当のことと思ってしまう。
二首目。ママ友という言葉を聞いたことがあるが、そのことだろう。一首の中に人間関係がうまく収まっている。わが子の幼稚園での親同士のつきあいが、私は苦手だったが、万智さんはのびのびと善良な人なので、ここで友達が出来るのだろう。
三首目の「ほぼ100%」四首目の「ふいに」「たぶんおおむね」・・・使いにくくなっている言葉を大胆に使っている。
私はペンネームを使いはじめてから、歌を作るのも現実を生きるのも楽になったのだが、人それぞれということか・・・
五首目。ここで不覚にも涙がにじんでしまった。

新しき名前得しより新しきひと生(よ)はじまる歌が生まれる
(近藤かすみ)

雪に傘

2006-01-21 23:19:46 | つれづれ
雪に傘、あはれむやみにあかるくて生きて負ふ苦をわれはうたがふ
(小池光 バルサの翼)

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東京は雪のようです。明日は新年歌会。五時起きです。
新幹線→タクシーで行くつもりです。よろしくお願いします。

比喩にみえる病

2006-01-20 22:02:20 | つれづれ
「あらゆる現象が比喩にみえる病」にとりつかれああ、空(から)の鳥籠に朝の日がさす
(小池光 静物)

「一を聞いて十を誤解する人」と机ならべ仕事すること浮世といはむ
(小池光 滴滴集)

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上記の歌を歌として読むことと、ずれる話。
去年の春から、水泳を始めて、平泳ぎはなんとか出来るようになって来ているものの、手の掻きがなかなかうまくゆかない。平泳ぎのクラスに古くから居る方から見ると、私の動きにはむだが多く力が入りすぎているらしい。先輩の方々から「水というものは、素直なもので、こねくりまわすと思うように泳げない」とありがたいアドバイスをいただく。涙が出そうになってしまった。先輩には敵いません。

ある女性からは「あなたがんばってるわね。よく出来るんでしょ」と言われる。彼女は「私はダメよ」と言い張るのである。お笑いの「おぎやはぎ」の論理のすり替えってこんなんじゃなかったのかと、思うが言わない。

「出来ない」と言へば出来ない平泳ぎプールの底に陽炎が見ゆ
(近藤かすみ)

饂飩

2006-01-19 21:57:44 | おいしい歌
学食のオバサン何故か老人が多くゆっくり出て来し饂飩
(大野道夫 心の花 1月号)

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大野道夫の『短歌の社会学』という本を、以前古本屋で買って持っていて、ふとそれを読み始めた。1999年1月の本なので、7年前の本。特に、結社論・短歌結社の社会学というのが、面白かった。その後、インターネットが普及し、題詠マラソンなどのネット上のイベントもあり、どんどん動いている。
ネットで何でもかんたんに調べられるようになっているのに、調べない自分が怠慢なのじゃないかと、不安になる今日このごろ。いつもだれかに見られているような気分もある。卑屈にはならないが、謙虚でいたいと思う。

厨にて刻みし葱を大盛りに乗せ豊かなるきつねのうどん
(近藤かすみ)

ビッグイシュー

2006-01-18 17:15:05 | つれづれ
街角でビッグイシューを売っている笑顔優しきいつものおじさん
(岡田有美子 心の花1月号)

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ここ数日出かけることが多くて疲れているので、今日は家居。寒空の下、ビッグイシューを売っている人たちは、元気に暮らしておられるだろうか。
今発売中の42号には、笑いカルタというページがあって、小池光、風間博夫の短歌が載っている。さて、どの歌が載っているか、買って読んでください。

http://www.bigissuejapan.com/

広告の載らぬ雑誌の爽やかさ友の薦めしビッグイシュー買ふ
(近藤かすみ)

百年のち

2006-01-17 23:27:48 | つれづれ
月光のぽすとの中にすべり込む和紙の封書はかすかにぬれて

六本木ヒルズはバベルの塔となる予感百年のちを楽しみてをり

(岩橋佳子 短歌人1月号)

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生きていて、本当に確かなものはなんだろうと思う。
新聞やニュースを見ながら、自分の目が正しいものを見分けられるか、また考える。

子のために買ひし綿菓子春風にちひさくなりぬ心棒を捨つ
(近藤かすみ)