気まぐれ徒然かすみ草

近藤かすみ 

京都に生きて 短歌と遊ぶ

箸先にひとつぶひとつぶ摘みたる煮豆それぞれ照る光もつ

桜橋 新倉幸子 六花書林

2020-03-24 18:33:28 | つれづれ
庭の木にあまた芽吹くを見つめいる夫の背細し明日は定年

秋明菊咲きて命日近づけり半日臥して逝きたる母の

「歌集とは借りて読んでも身につかぬ」河野裕子の教えのひとつ

特老に傾聴体験するわれに耳ふたつありムスカリの咲く

梟の風鈴はよし軽やかに森の話を聞かせてくれる

雛壇をつくり毛氈敷きつめて飾り手の孫ら来るを待ちたり

吾が歌を誉めてくれたる田村よしてるさんもう埼玉歌会にこない

ひとり居て山中智恵子歌集読むこの平穏はわれだけのもの

みすゞの詩を小四の花帆は暗唱す「星とたんぽぽ」いつ覚えたの

お年玉年賀ハガキは三等二枚きっと良い歌詠める気がする

(新倉幸子 桜橋 六花書林)

202× 藤原龍一郎 六花書林

2020-03-10 11:26:45 | つれづれ
夜は千の目をもち千の目に監視されて生き継ぐ昨日から今日

詩人こそ抵抗の贄かにかくにレジスタンスの武器ぞ雨傘

読み返す『一九八四年』目の前にありてあらざるそのディストピア

夕汐の香こそ鼻孔にせつなけれ深川平久町春の宵

後楽園球場巨人国鉄戦見つつホットドッグを父と食みしよ

銀座線・東西線を東京の静脈として春のことぶれ

地下深く身を沈めてはなお深き次の地下駅めざす日乗

藤圭子自死の夏とぞ記しおく青きコーラの壜は砕けて

新聞に宰相Aのしたり顔玩具の猿がシンバル叩く

仁義なきスチール写真銀幕に死に死に生きる松方弘樹

(藤原龍一郎 202× 六花書林)