気まぐれ徒然かすみ草

近藤かすみ 

京都に生きて 短歌と遊ぶ

ね。と結び空気をすこし落ちつける罫紙の白は冬のはじまり

一葉

2005-01-31 01:28:20 | つれづれ
髷結へる一葉(いちえふ)出して髪形のうねれる英世(ひでよ)四枚を受く
(大塚寅彦 短歌2月号)

死んでお札に刷られるよりも生きてゐる、あとはきこえぬ一葉の声
(吉岡生夫 短歌人1月号)

******************************

先週金曜日にはじめて一葉の五千円札を手にする。有難くてしげしげと眺める。
しかし私の手にあったのは、ほんの数時間だった。
映像で人の記憶にのこるイメージは大きい。
わたしこっちの写真の方がよかったのに・・・
と一葉は思っているかもしれない。

紅 河野裕子

2005-01-28 19:47:52 | つれづれ
れんげ雨菜の花雨に麦冷ゆる古つ国あふみの春ありしかな

きらめきて雪降る朝(あした)星統ぶる大きな旗は空を打つなり

ぽぽぽぽと秋の雲浮き子供らはどこか遠くへ遊びに行けり

こんなにも勉強せぬ子がわが子なり呆れて腹たて牛膝(ゐのこづち)蹴る

ゆつくりと振り向くやうに揺れてゐる風なかのコスモス紅(こう)が来てゐる

(河野裕子 紅 ながらみ書房)

*********************************

1991年の第五歌集。この時期一家は、アメリカに住んでおられたらしい。
「ゆたかな日本語の母音の響きをいやでも意識せずにはいられなかった」と書いておられる。
四首目、私にもこういう時期があったからよくわかる。この結句が出るのが、すごい。


渡辺のわたし 斉藤斎藤

2005-01-27 17:43:37 | つれづれ
わたくしの代わりに生きるわたしです右手に見えてまいりますのは

上半身が人魚のようなものたちが自動改札みぎにひだりに

お母さん母をやめてもいいよって言えば彼女がなくなりそうで

シースルーエレベーターを借り切って心ゆくまで土下座がしたい

牛の肉おなかいっぱい詰め込んで海原をゆく船に手を振る

(斉藤斎藤 渡辺のわたし ブックパーク)

******************************

新年歌会で、斉藤斎藤さんとちょっと話した。スキンヘッドで体格の良い腰の低い好青年。奇抜な歌とペンネームで、まわりをあっと言わせた歌人は、心身ともに頑丈だから、まわりも安心して苛めることが出来るのだろう。こんなことを言ったら、失礼かも…と考えなくてよい。
歌会詠草で「きっとこれが斉藤斎藤の歌だろう」と思った一首は、見事的中。

一首目からも、自分の客観視してプロデュースしているのがわかる。三首目で、わたしはほろっとさせられる。もっと大物になって、われわれをあっと言わせてほしい。

ICOCA(イコカ)テレカ違へず通し改札をみぎにひだりにゆく人魚たち
(近藤かすみ)


コメント (2)

風位 永田和宏歌集

2005-01-27 13:17:18 | つれづれ
追従を言いいたる口の扁(ひら)たさを歯を磨きつつまた思うなり

屋根にまで大八車を積み上ぐるこの骨董屋つねに閉ざせる

忘れられたくないためだけに生きている そうとも言える夜の鳶尾(いちはつ)

今ごろは子を抱きいんか生きのびし佐野朋子のそののちを教えよ

批判さるることの嫌いな男よと思えばすなわち誉めて帰り来

(永田和宏 風位 短歌研究社)

******************************

朝日歌壇の選者を近藤芳美が引退したのち、引き受けるのが永田和宏だと知る。
このご夫婦は、どこへ行っても、選歌をしておられるらしい。




山折り谷折り 高野公彦

2005-01-26 18:39:14 | つれづれ
電車去りてすなはち去りぬしばしの間わが握りゐし吊革の円

電柱にゐて鳴く蝉のこゑ途切れ 子どもは殺しやすくて殺す

子ら去りしジャングルジムに蝉のこゑひびきてとはに若き一葉

(高野公彦 山折り谷折り 歌壇2月号)

****************************

短歌総合誌の中で定期購読しているのは、短歌研究。歌壇は、ときどき買い、角川短歌は府立図書館でパラパラと読む。近所の本屋に頼むと、発売日より一週間近くたってから、やっと「入りました」と言う電話がある。丸善やジュンク、ブックファーストまで行くと、どれかは並んでいるが、この三種類が揃って並んだいたことはない。やっぱり、マイナーだと思う。一番よく売れるのは、NHK歌壇のようだ。

北陽 梅内美華子

2005-01-25 19:33:27 | つれづれ
マジックのごとくつり銭受け取りぬ「大きいほうからお返しします」

かすれつつ「素敵なものをありがとう」りんごは素敵に今年も実る

木立より体温抜きとるようにして遠ざかりつつ冬の陽沈む

(梅内美華子 短歌研究2月号)

会話の引用がいいと思った。一首目は様式化されたとも言えるレジの対応を、うまく表している。私もレジの仕事をしていたことがあるが、若い人ほど、型どおりの動きをするのである。あの言葉使いも、こちらが「こういう風に言うのか」と感心し、ある時期から着いていけないなと思った。二首目は、春日井建を偲んだ歌。
一連の題が「北陽」となっているが、そんな名前のお笑いコンビが居たのではないか?そんなことを気にしだしたら、何も作れなくなるが。
コメント (2)

回転ドアは、順番に 穂村弘+東直子

2005-01-24 22:56:37 | つれづれ
相撲取りの手形にてのひら当てながらサイダー頼む夏の食堂 
(穂村弘)

永遠の迷子でいたいあかねさす月見バーガーふたつください
(東直子)

***************************

穂村弘と東直子のコラボレーションの本。短歌のようで散文のようで、プロデュースの仕方でちゃんと一冊の魅力ある本になる。
全日出版から1300円也。
いま、読んでいるミステリー「幻夜」東野圭吾は、二段組524ページで1600円也。
どちらも、図書館から借りています。





時のめぐりに 小池光歌集

2005-01-20 12:26:41 | こころ覚え
操觚者を父にもちたる運命にものを書くむすめ書かざる娘

「子供より親が大事、と思ひたい」さう、子機よりも親機が大事

忽然と打てなくなりしイチローをわが身の上に重ぬるこころ

街角のもの売り少女「オクムラのボールペン一本買つてください」

生き別れしたる母子のものがたり天津羽衣、天津甘栗

佐野朋子ふたり子中学生といふ風のうはさにひととき怯ゆ

(小池光 時のめぐりに 本阿弥書店)

****************************

「滴滴集」と間をあけずに出された歌集。箱入りで装丁が立派。
知り合いのTさんは「小池さんは古臭い」というが、さもありなむと思う。
もちろん、短歌が一級品であることは間違いない。言葉への強いこだわりを感じる。
しかし、楽屋落ちのような歌には、そうか・・・という読み方をしてしまう。小池さんは、自分のことをイチローだと思ってるんだ。そうかとも思う。
こんな生意気なことを書いて、熱烈なファンの方にボコボコにされへんかしらん。

教室の窓辺にをりし佐野朋子うはさに高き座敷わらしの
(近藤かすみ)
コメント (2)

うたの観覧車

2005-01-19 19:19:49 | つれづれ
空の上には風船の国があると言ふこの子にひと日支へられをり

(小島ゆかり うたの観覧車 柊書房)

東京の空にぎんいろの飛行船 十七歳の夏が近づく

(小島なお 乱反射 短歌2004年11月号)

**************************

小島ゆかりさんの短歌とエッセイの本、うたの観覧車を読む。
この中によく登場する長女の直子さんが、角川短歌賞の小島なおさん。
ゆかりさんの母としての懸命な生き方を、ちゃんと娘さんは見ているのだ。
コメント (2)

ひたくれなゐの人生 三輪書店

2005-01-18 17:09:22 | つれづれ
死の側より照明(てら)せばことにかがやきてひたくれなゐの生ならずやも

(齋藤史 ひたくれなゐ)

****************************

齋藤史と樋口覚の対談集を読む。
旺盛な好奇心で、幾多の困難を乗り切った女流歌人。こんな一言で、括れない存在。
ちょっと一首取り上げて、どうこう言うのでなく、初期の作品から丁寧に読みたい。