気まぐれ徒然かすみ草

近藤かすみ 

京都に生きて 短歌と遊ぶ

箸先にひとつぶひとつぶ摘みたる煮豆それぞれ照る光もつ

今日の朝日歌壇

2008-10-27 23:01:02 | 題詠blog2008
ジャズメンが神戸に秋を誘いぬ北野の坂をバンドがのぼる
(神戸市 内藤三男)

絵葉書を送りたい友喪いて行くあてのないフェルメールの絵
(東京都 小林泰子)

月の暈うすくれないに懸かる夜は昇りてゆかな螺旋階段
(名古屋市 小林勝幸)

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一首目。神戸は日本一ジャズの盛んな土地らしい。ジャズメンたちが楽器を持って北野の坂をのぼっていく光景はいかにもありそう。いや、作者は神戸の人だから、実際に見たことなのだろう。なかでも大変なのは、ウッドベース。奏者は体力も気力も要る。がんばっていただきたい。
二首目。絵葉書を送るということ自体が懐かしい行為になった気がするが、ときおりいただく絵葉書はとてもうれしい。相手からハガキの文面とともに、この絵を見て欲しいという思いも伝わってくる。フェルメールの絵が好きな友達のために絵葉書を取っておいたのに、相手は亡くなってしまった。行くあてのないのは、作者の気持ちでもある。
三首目。風景が目に浮かぶきれいな歌。螺旋階段というのが、ロマンティック。その先にはだれが待っているのだろう。読者の想像を誘う。

フェルメールの乙女は永き時を越ゆ失くしはせぬかその耳飾り
(近藤かすみ)

きのうの朝日歌壇

2008-10-21 00:27:26 | 朝日歌壇
更新をされざるままに廃屋の朽ちゆくごときホームページあり
(福山市 武 暁)

あのことはほんとうにあったことなのかパソコンの海を魚群が過ぎる
(生駒市 辻岡瑛雄)

その日まで子らの荷物にならぬよう時雨降る日は十薬を煮る
(山形県 清野弘也)

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一首目。確かにそういう寂しいホームページに出くわすことがある。私もブログは何とか続けているが、ホームページはやりかけたものの、わからないことが多く、投げ出してしまった。ブログは小さなお部屋なので、なんとか片付けてお客様を呼ぶことができるが、ホームページは部屋数の多い家のようなもので、管理が大変。掲示板には勝手にお客が来て、荒していくこともあるだろう。他人事ではない。内容に共感した。
二首目。パソコンを使ってネット上で行われることは、バーチャルの部分と現実の部分が交錯して、わけがわからなくなり勝ちだ。ふとわれに返ると、時間はたち、目はかすみ、画面をスクリーンセーバーの魚が泳いでいる。一首目とも共通して、ネットがもたらす殺伐とした風景。
三首目。その日とはこの世からいなくなる日のことだろう。死ぬまで出来る限り健康で、自分の身の回りのことは自分で出来るように、日々留意する暮らし方。そのために時雨降る日は、薬草である十薬を煮るのだ。独特のにおいが時雨の湿度の高さで増幅されるようだ。子供をあてにしないという気持ちは、私にもあるが、家族でも関係が薄く、水臭い感じがする。その分、ネットに関心が向くとも言える。