気まぐれ徒然かすみ草

近藤かすみ 

京都に生きて 短歌と遊ぶ

箸先にひとつぶひとつぶ摘みたる煮豆それぞれ照る光もつ

ふしぎな楽器 永井陽子

2005-03-09 20:29:15 | つれづれ
あはれしづかな東洋の春ガリレオの望遠鏡にはなびらながれ

篠懸が纏ふすずかけいろの翳くぐりぬけチェロその他を運ぶ

この世なるふしぎな楽器月光に鳴り出づるよ人の器官のすべてが

歌よその天与のうつは差しのべて盛らなむ秋の藍(あを)のかぎりを

振りむけば官位のことを気に病める定家もゐたり秋の陽のなか

丈たかき斥候(ものみ)のやうな貌(かほ)をしてf(フォルテ)が杉に凭れてゐるぞ

(永井陽子 ふしぎな楽器)

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「三十一音の短歌形式は、実にふしぎな楽器である」と永井陽子は言う。
「あはれしづかな・・・」の歌を知ったのは、橘夏生さんのお話からだった。夏生さんにしばらく会っていない。夏生さんは、いつも美しく居てほしいひと。
最後に引用した歌の、フォルテが出ないのが残念。