気まぐれ徒然かすみ草

近藤かすみ 

京都に生きて 短歌と遊ぶ

箸先にひとつぶひとつぶ摘みたる煮豆それぞれ照る光もつ

題詠マラソン2005(26~30)

2005-07-28 11:10:41 | 題詠マラソン2005
026:蜘蛛
親指とひとさし指をくるくると互ひちがひに小さい蜘蛛さん

027:液体
身のうちに孕む液体幾種類いま大空をジェット機は

028:母
分子のこと忘れいよいよ増してゆく五月の分母は無限大まで行く

029:ならずもの
詩人とはならずものだと母は言ふ煙草のにほひ寺山修司

030:駅
省線の京橋駅にて母に逢ふ夢にひらきしパラソルの白

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わたしの歌の中で、母はパラソルをさして登場する。市川雷蔵のファンである。
母が亡くなって30年になるが、今はいいことだけを覚えている。

因業

2005-07-27 19:06:42 | つれづれ
夏深し顚狂院の花盛る

(車谷長吉 因業集)

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NHKの福祉ネットワークという番組で、車谷長吉を見る。強迫性障害という病気を持っておられるということでの、インタヴューの番組だった。「嫁はん」の高橋順子氏との結婚が、病気のきっかけでもあるらしいが、病気と戦うには、嫁はんが欠くべからざる存在ということを語っておられた。文学を志し人に褒められたいが、褒められると、もっともっといい作品を書いてそれに応えようとする生真面目な性格が病気の原因なんだろう。因業な性分である。以前よりちょっと痩せられたように、引き締ったように見えた。

そろそろ鶴に

2005-07-26 22:42:00 | つれづれ
「ラ・メール」に青を重ねてエア・メール花の国からひらりと届く

ななかまど朱をまとへどもいつだつて思ふほどには思はれてゐず

夏ゆけばいつさい棄てよ忘れよといきなり花になる曼珠沙華

トレモロのやうに自転車丘に消ゆこの世をかの世と呼ぶときあらむ

欲と俗見てしまひたる夕ごころそろそろ鶴に還りませうか

(今野寿美 若夏記)

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今野寿美の若夏記を読みすすむ。うまい歌だとしきりに感心しながら読む。
欲と俗の歌、字が韻?を踏んでいる。
歌集の表紙の写真を見ても鶴女房のような容姿だ。



今日の朝日歌壇

2005-07-25 23:14:20 | 朝日歌壇
画用紙にみどり一線夏を引く尾瀬の水面を雲の峰立つ
(名古屋市 藤田恭)

友達の恋の話を聞きながら遠く見ているサッカーボール
(武蔵野市 中山真彩子)

七巡り七月七日乙酉(きのととり)七三つ揃い父年男
(東久留米市 安藤好子)

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一首目。上句だけでも十分すてきだ。これで俳句になっている。でも下句があって、画用紙のみどりの一線が尾瀬の雲になって立ちあらわれる。
二首目。さわやかな一首。若い感性が素直に生きている。
三首目。7月7日に84歳になられたお父様のことだとすぐわかる。なんとも素晴らしいお祝いの歌。お父様のますますのご長寿をお祈りします。

画像は、去年台湾へ行ったときの飛行機からのもの。帰りの飛行機は揺れて怖かった。
きょう、長野の全国大会の詠草が送られてきた。短歌人会のみなさま、小池さんの話を聞きに来られる方々にお会いできるのを楽しみにしています。

若夏記 今野寿美

2005-07-24 23:55:08 | つれづれ
若夏の水がにほへばわたすげの風にしたがふこころゆかしも

ひつじぐさ咲くひるさがりたゆたへる夢とうつつとうつつと夢と

なにもかもあそびであつて日が暮れて与へし氷菓の棒のみ残る

うつむくほかなくて咲く花むらさきの罌粟の寡黙を愛せりいまも

昼さがりの耳にここちよき馬の名の長さよ春の夢みてをりぬ

(今野寿美 若夏記)

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某古書店で買ったものの、読んでいなかった歌集を読み始める。
女らしく、繊細で端正な歌の数々。
遊び紙にはご本人の字で「若夏の・・」の歌が書いてある。またその字が繊細で美しい。

ブログ

2005-07-23 22:06:01 | つれづれ
ブログよりブログにうつす遊び名の賞味期限は紫陽花のなか

少年のてのひらの亀 入魂はかの放課後の理科準備室

サーバーの重き波間を漂へば水母の核にひそみゐる月

(鳴海 宥 Server 短歌研究8月号)

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定期購読している短歌研究8月号を、少しだけ読む。
毎月、少ししか読めないうちに、次の号が来てしまう。
鳴海宥さんは「未来」の人で昭和32年生まれらしい。私と共通する語彙のある歌。
短歌研究の読者と、ブログの読者にどれだけの重なりがあるのだろう。

パソコンに黄バラ鈴蘭れんげ草壁紙選りてをりをり飾る
(近藤かすみ 短歌研究詠草8月)

朱欒

2005-07-22 19:28:24 | つれづれ
井のなかのかはづいつぴき夢ばかり見てゐる蛙(かはづ)すきとほりゆく

熊手もて星をあつむる夢を見き老いより解かれはなやぐ母と

へんくつなうさぎが来るぞほよほよと昔の風の吹く交差点

雑踏にまぎれやうやくやすらげる朱欒のやうなこころとおもふ

やはらかなこころうしなひたるのちのうさぎの耳は腐れゆくなり

(永井陽子 小さなヴァイオリンが欲しくて)

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雑踏にまぎれて・・・の歌の上句に非常に共感する。
しかし朱欒のやうなこころと言うのが、よくわからない。



題詠マラソン2005(21~25)

2005-07-21 21:38:43 | 題詠マラソン2005
021:うたた寝
うの文字のゝ(ちよん)は開きし『短歌人』われはつとなりうたた寝をする

022:弓
掌のうへの写真は夏の弓が浜兄は八歳いもとは五歳

023:うさぎ
国光を切つてうさぎのかたちにし薄い塩水に浸せと母は

024:チョコレート
パイナップル、グリコ、チョコレート、石段を上つて下りて日の暮れるまで

025:泳
女学校時代にならひし横泳ぎプールにひとり披露するひと

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短歌のネタをばらすことになるが、チョコレートの歌は私の子どものころの遊びの思い出。
じゃんけんで勝った人が、パイナップル・グリコ・チョコレートの音数を上り下りできる遊びだ。数が合って最初に上りつめた人が勝ちになる。
吉田神社の石段で、よくこの遊びをしたものだ。また吉田山の別のところに、団栗のたくさん落ちているところもあった。
これをネットでさがしていて、見つけたのがこの画像。この石段の下に、春日神社から来たという鹿が飼われていた。宮司さんの名前は鈴鹿さんで、この近くには鈴鹿姓が多かったことなどを、思い出す。今はもうだれも住んでいない私の故郷。

故郷のくれなゐ萌ゆる吉田山ネット検索にてよみがへる
(近藤かすみ)




夏の陽に

2005-07-20 22:31:55 | つれづれ
負けること負ふことされど夏の陽にたちまち乾きゆくTシャツは

水のやうになることそしてみづからでありながらみづからを消すこと

くたびれたたましひたちのつばさにも似たるくつした星空に干す

たましひのすみかといふはからーんと青く大きな瓶 さう思ふ

うつくしく退屈な曲たいくつな美しい曲 いつまでも雨

(永井陽子 小さなヴァイオリンが欲しくて)

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永井陽子全歌集(青幻舎)を買って、三分の二ほど読んでいたが、また読み始める。
永井さんの歌については、多くの方が鑑賞を書いておられるので、私が改めて書いても及ばないが、このブログを見た方に一緒に永井陽子の歌を読んでほしいと思う。


藤の花

2005-07-19 22:35:02 | つれづれ
腰のくびれもおだやかならぬ蜂ひとつ藤の花ふさのぼりつめゆく

ゆれゆれる藤のはなには金色(こんじき)の蜂きてはひる愛するものよ

(小池光 鬱陵島)

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糸川雅子『定型の回廊』(ながらみ書房)を図書館で借りて、パラパラ見ていてこの歌を知る。
1988年ころ、季刊同人誌『未定』39号に載った連作10首からの二首らしい。興味を惹かれるがこれ以上今はわからない。