ひとつ火を消すごとあんぽ柿食へば鳥髪もとの雪のゆふやみ
古新聞に芋の二・三個つつまれてプーチンくしやくしや鞄にをさまる
亡祖父も紀淡海峡の鯛漁師だつた
ビニールの疑似餌に掛かる真鯛にてやつとこどつこで引きあげし祖父
恵比寿さんの大屋根ほどある尾羽にてザッバーンと波うつ背見鯨はも
密林につりさがる蔦、もしや今、生れたるばかりの神のへその緒
八月の真夜にしやがめば亡母ゐて壺は最後のひとり部屋といふ
訪ひくるは雀五羽のみ昼どきのひとり遊びに水雲(もづく)粥炊く
脳の字に凶あることをおののきてひとり深夜の藪椿見し
重心のそれぞれちがふ瓢箪をまぶしむやうにふたり子育てし
涙目のごとく湖(うみ)冷ゆ うた一首を成仏させれば虹に青濃し
(小黒世茂 やつとこどつこ ながらみ書房)
*******************************
玲瓏所属の小黒世茂の第四歌集を読む。
小黒さんは「日本の源流捜し」をしておられる。具体的には、たたら師、捕鯨の砲手、山岳修験者などの人びとに接しながら、歌を詠む。そして、同郷(紀伊国)の西行法師を追いかける旅もしておられ、この歌集は、そこから生まれた歌を集めてある。
現実には家庭の主婦であり、息子さん二人が家を離れられたことも詠われている。
それにしても、このエネルギーは何だろうと感心してしまう。想像するに、子どものとき、和歌山の地で、ご両親はじめお祖父さまお祖母さまなどの大家族の中で、野山を駆け巡り、海に遊び、自然の中での生活を満喫されたのではないだろうか。歌に感じられる野性味は、他の人にない真似のできないものだ。
集題の「やつとこどつこ」は、幼いころ小正月に家に来た人形(でこ)まわし(放浪芸)の唄から取られたという。小黒さんの現風景なのだろう。
古新聞に芋の二・三個つつまれてプーチンくしやくしや鞄にをさまる
亡祖父も紀淡海峡の鯛漁師だつた
ビニールの疑似餌に掛かる真鯛にてやつとこどつこで引きあげし祖父
恵比寿さんの大屋根ほどある尾羽にてザッバーンと波うつ背見鯨はも
密林につりさがる蔦、もしや今、生れたるばかりの神のへその緒
八月の真夜にしやがめば亡母ゐて壺は最後のひとり部屋といふ
訪ひくるは雀五羽のみ昼どきのひとり遊びに水雲(もづく)粥炊く
脳の字に凶あることをおののきてひとり深夜の藪椿見し
重心のそれぞれちがふ瓢箪をまぶしむやうにふたり子育てし
涙目のごとく湖(うみ)冷ゆ うた一首を成仏させれば虹に青濃し
(小黒世茂 やつとこどつこ ながらみ書房)
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玲瓏所属の小黒世茂の第四歌集を読む。
小黒さんは「日本の源流捜し」をしておられる。具体的には、たたら師、捕鯨の砲手、山岳修験者などの人びとに接しながら、歌を詠む。そして、同郷(紀伊国)の西行法師を追いかける旅もしておられ、この歌集は、そこから生まれた歌を集めてある。
現実には家庭の主婦であり、息子さん二人が家を離れられたことも詠われている。
それにしても、このエネルギーは何だろうと感心してしまう。想像するに、子どものとき、和歌山の地で、ご両親はじめお祖父さまお祖母さまなどの大家族の中で、野山を駆け巡り、海に遊び、自然の中での生活を満喫されたのではないだろうか。歌に感じられる野性味は、他の人にない真似のできないものだ。
集題の「やつとこどつこ」は、幼いころ小正月に家に来た人形(でこ)まわし(放浪芸)の唄から取られたという。小黒さんの現風景なのだろう。