気まぐれ徒然かすみ草

近藤かすみ 

京都に生きて 短歌と遊ぶ

箸先にひとつぶひとつぶ摘みたる煮豆それぞれ照る光もつ

はれひめ 足立晶子 砂子屋書房

2021-12-03 01:03:15 | つれづれ
塩と酒撒いて巨木へ登る人こころ放ちて空へ入るらむ

飛び跳ねて笊をいやがる豌豆をもういくつ剝く青い匂ひの

天気図は西高東低うつくしき曲線となる水仙を切る

鼻と耳のきれいなピンク見えてるよ豚満載の小型トラック

姫女苑春紫宛の違ひまた言ひぬむかしばなしを繰り返すごと

靴のひも結び直してお茶の花こんなところにいくつも開く

はれひめもはるみ、はるかも蜜柑なり瀬戸の島より来たる女子たち

ふと聞きし金子みすゞの「中の雪」「上の雪」「下の雪」ひと日流れる

ホホジロの番(つがひ)まだゐる鳴きはじむ坐り直してわれもまだゐる

(足立晶子 はれひめ 砂子屋書房)

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鱧と水仙同人の足立晶子の第五歌集。整った歌で、安心して読むことができる。余り人間が出てこないのも心地よい。作者のものの見方の独特さ、視点の面白さがあれば歌集を読むことは楽しい。途中4編のエッセイが挟まれている。歌集を編むのにこういうやり方もあるのだ。作中主体と作者がほぼ重なっているからだろう。