団塊的“It's me”

喜寿老(きじゅろう77歳)の道草随筆 月・水・金の週と火・木の週交互に投稿。土日祭日休み

縄張り

2022年03月28日 | Weblog

  私が住む集合住宅のまわりには、野生の動物が多く生息している。越して来たばかりの頃、それらの野生動物を見ると喜んでいた。しかし、だんだん時が経つにつれ、喜んでばかりいられなくなってきた。

  猿の十数頭の集団が雨の日、雨宿りがてらベランダで一夜明かしていった。ただ夜を明かしていくだけなら許せる。ベランダのプランターの植物を食い荒らし、マーキングで尿をまき散らしていった。糞もしていった。ベランダの異臭は、市販の消臭剤ではなかなか消えなかった。市役所の猿害相談室に電話をした。猿は縄張りがはっきりしているので、まずマーキングの痕跡を消しておいた方がいい、と言われた。そして蛇を怖がるのでオモチャの蛇を置いておくのも効き目があるとも言われた。ゴム製の蛇を買ってベランダに置いた。そのことをすっかり忘れていて、ベランダで何度蛇がいるとのけぞったことか。

  家の周りの山は、竹が増殖している。山の手入れがなされないので、樹木が竹に浸食されて、竹林の面積が勢いよく増えてきている。タケノコの季節になると、イノシシが出る。イノシシはタケノコが大好物だそうだ。市役所の広報車が、「イノシシに襲われて怪我をした人がいます。外出はなるべく避けてください」と回ってきたこともあった。イノシシも縄張りがあるようだ。

  コロナ禍で3回目の桜の満開を迎えた。桜並木を散歩している途中、満開の花枝の中で鳥が争っているのを見た。どうやら桜の木も鳥の縄張りがあるようだ。一羽の鳥がもう一羽を追い出そうとして、鳴き声を荒げた。追い払うとゆっくり桜の花をついばんでいた。桜が咲いて、人間は3分咲きになった、5分だ、満開宣言だと騒いでいる中、桜の花枝の中では、縄張り争いがあるとは。

  去年7月の大雨で、家の近くの川岸が決壊した。私とっては生活道路だった箇所が通行止めになった。車でも散歩でも使っていた。上流の橋を使うようになった。これが遠回りでもあり、通行を制限されたストレスも大きい。中々工事が始まらなかった。おそらく予算がなかったのであろう。10月に工事が始まった。当初看板には3月20日までと書いてあった。散歩のたびに川の向こう岸から現場の工事の進捗ぐあいを観察していた。3月も20日ちかくなっても半分しか工事が終わっていなかった。先日、ふと工事告示の看板を見ると、工事の終了が、なんと5月18日に延期されていた。今度は予算の問題ではなくて、工事に必要なブロックの入手が困難になっているからだという。災害による河川などの補修工事で、ブロックが不足していて、資材の争奪戦になっている。こういう争奪戦も、縄張り争いに似たようなことに思える。

  動物の世界でも縄張りの争いが、生きるために起こる。人間の社会でも、縄張り争いは、ヤクザ社会だけのものではない。政治の党利党略による票の奪い合いも縄張り争いのようなものだ。ロシアがウクライナを取ろうとするのも、中国が尖閣諸島や台湾を取ろうとするのも、韓国が竹島を、ロシアが北方領土を取ったのも縄張り争いであろう。動物の縄張り争いと人間の縄張り争いの違いは、生きるためのものというより、ゲームのように見えて仕方がない。世の中は、進歩したように見えるが、実は、太古の昔から本質的には、何も変わっていないのかもしれない。

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