団塊的“It's me”

喜寿老(きじゅろう77歳)の道草随筆 月・水・金の週と火・木の週交互に投稿。土日祭日休み

セカンドライフ問題 世界遺跡めぐり

2007年07月03日 | Weblog
 結婚したとき、妻と約束した。二人で遺跡めぐりの最後にイースター島のモアイの像を見に行くことを。まだ実現していない。

 私は子供の頃から遺跡が大好きだった。父が買ってくれた『少年朝日年鑑』の巻頭の遺跡特集に夢中になった。その頃将来行ってみたい遺跡のリストを作った。

 結婚した時、妻と二人でそのリストを作り変えた。

 後に幸運にもリストに入っている遺跡がある国で暮らすことになった。ドゥッガは、チュニジアのローマ遺跡の中で私が一番好きな遺跡だ。チュニスから、車で約二時間、ローマ時代から何も変わってはいないとしか思えない、小麦畑が続くなだらかな丘陵地帯のドライブは、気持ちが良い。喧騒と運転マナーの悪さも、チュニスから外に出ると嘘のように静かで交通量も少ない。地中海式気候の恩恵をふんだんに受け、作物の成長も良好。若かりし頃、学んだカナダの穀倉地帯より、太陽はずっと明るく空は青かった。 

 ドゥッガは丘の上に忽然と姿をあらわす。ローマ時代そのままである。交通不便なために、観光地として脚光をあびることもない。円形劇場、神殿、浴場、多くの民家が静かに風の中に佇んでいる。 自称公認ガイドが、うるさく雇えとまとわりつく。そうかと思えば、少年が、羊の群れを追って遺跡の道を行く。羊がポロポロ糞をばらまきながらゆっくり歩む。遺跡の中の洞窟に、囲いをしてヤギが飼われていた。ローマ時代もかくありなんのリアリティが、圧し掛かる。各民家の玄関ホールには、競ったようにモザイクが施されている。水をかけると原色の生々しい見事な画が浮かび上がる。ローマ時代に、私がドゥッガの友人の家に訪ねて来ているのではと錯覚する。 

 圧巻は共同便所だ。驚くなかれ、水洗便所だ。馬蹄形に七個の穴があり、みなさん、一緒に、仲良く語りながら用を足した。穴の下は、水が流れる。日本の厠のローマ版である。私もしばし、穴の上に腰をおろし、隣の妻とローマ時代の雰囲気を体験した。

 二千年という時間は何なのだろう。今の私たちと、ドゥッガに生きたローマ時代の人々との間に、果たして違いがあるのだろうか。 静かなドゥッガからチュニスに戻ると、相変わらずの混沌としたアラブ社会があった。さっきまでいた遺跡も、アラブ人が住めばきっとこんなものだろう。遺跡とは不思議なものである。だから旅はやめられない。
(写真:ドゥッガの水洗共同便所)
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