運転免許証の更新の葉書が県の公安委員会から届いた。今回は、今までと違って更新する前に「認知機能検査」と「高齢者講習」を受けなければならない。15日土曜日指定された自動車教習所へ行った。
この前の免許の更新には認知機能検査はなかった。高齢者講習だけだった。5年前になる。まだコロナの最中だった。同じ教習所で受けた。あの頃教習所は、ガラガラで数人の教習生しかいなかった。事務所で受け付けしようと中に入った。大勢の人。教習所は経営難なのだろうと思っていた。認知検査を受ける私の同年配ばかりと思いきや、まさかの若者たち。都会の若者が、合宿して短期間で運転免許証を取得するという。待合所の片隅に明らかに認知機能検査を受けるであろう老人が数人座っていた。なんだろう、この組み合わせ。若者たちは、元気はつらつとしている。20人くらいはいた。3人とか4人で固まっていた。ちょうどお昼ご飯の時間だった。受付カウンターの上にたくさんの弁当が置いてあった。30個以上はあっただろう。入れ替わり立ち替わり、若者たちが弁当を取っていった。皆元気はつらつとしていた。顔も艶がある。一方待合室の片隅の認知組は、背が曲がり、杖を持ち、顔や腕は老人シミが多数、覇気がない。同じ部屋の中が2極化している。私はひさびさにこれほどの数の若者と一緒の場所にいた。認知機能検査をこれから受けなければならないコキロク(古稀+6歳)の私は、漏れ伝わった記憶力テストの内容に恐れおののいていた。これから運転免許証を取得して、車の選択にあれこれ迷って車を購入して、青春時代を謳歌しようとしている若者たち。一方認知機能検査で免許返納を迫られるかもしれない後期高齢者たち。
認知機能検査が始まった。受験者は6名。男性5名女性1名。まず4つの絵が描かれた大きなボードを見せられた。私は、4つぐらいの絵なら楽勝と思った。ところが次々に合計4枚のボードを出された。もうダメ。1枚覚えたつもりになっても次の絵を見れば、前の絵は消える。その繰り返し。今朝も書斎から台所へスプーンを取りに行ったら、10歩も歩かないのに、台所に着いたら、何を取りに来たのか脳が迷子になっていた。その再現。タイムアップ。検査用紙に答えを書くと思ったら大間違い。次に数字の表から指定された数字を消すという検査。こんなことしていたら、記憶が飛んでしまう。この時間差攻撃でおぼろげだった記憶が粉砕されてしまった。検査する側の時間差の罠に私はハマった。記憶を呼び戻そうとする。深い霧の中にいるようだった。はっきりしない。見た絵がない。記憶したはずの絵のボードは全て白くなっていた。絵が消えている。それでも振り絞るように脳を働かせた。集中力の限界。8個書けた。あとの8個は未知の世界。この後、ヒントが書かれたボードが出て、更に違うページにもう一度絵を思い出させる検査があった。これで14の絵の名前が書けた。でもこういうお助けがちっとも嬉しくなかった。
検査が終わると緊張が解け、疲れがどっと出た。瞼が重くなった。いつもなら昼寝する時間だ。この時間に脳を使うことはまずない。その状態で今度は、運転実技の検査。普段自分の車以外運転しない。万人が運転する不慣れな教習所の車。不安。試験官を助手席に乗せ、教習所内のコースを教官の指示通りに運転。何とか全ての検査に合格。免許証の更新ができることになった。
更新される免許証は、3年間有効。次の更新に全く自信がない。教習所で会った若者たちと自分を比べてしまう。若者たちはこれからだが、老兵の私は去り行くのみ。いよいよ3
年後は免許返納か。