団塊的“It's me”

喜寿老(きじゅろう77歳)の道草随筆 月・水・金の週と火・木の週交互に投稿。土日祭日休み

カワセミが飛びます飛びます

2014年08月01日 | Weblog

  去年カワセミを見たのはたった1回だった。今年はすでに4回見た。

  散歩の楽しみは動植物への“よそ見”である。道草だ。散歩コースは川に沿って太平洋の海岸まで行き、戻って来る。

  「誕生日にカワセミ見られたらいいな」と願掛けするように玄関を出た。 「♪象さんのね 象さんのね おじさんがね はなかぜ用心に 筒はめた わらいかわせみに 話すなよ ケララ ケラケラ ケケラケラ とうるさいぞ♪」(作詞 サトウハチロー 作曲 中田喜直)とワライカワセミの3番の歌詞を調子はずれのリズムに乗せて私は坂道を下る。

  散歩コースに沿って流れる川には多くの種類の鳥が生息する。ドタドタとつがいの鴨が飛ぶ。スイスイ スーとツバメが飛ぶ。チョンチョンチョンとセキレイが川石を渡り飛ぶ。拡がったり狭まったり変幻自在に形を変える雲のようにスズメの群れが移動する。緩慢なようで悪賢く鋭敏に計算された飛躍を繰り返し、やることなすこと人を癪にさせるカラス。大きな体のわりに臆病というか警戒心が強いアオサギは、カメラを向けただけで大きな翼を開いて飛び去る。

  カワセミを見た。川面から1,2メートルのところを一直線にぶれることなく飛ぶ。飛ぶ宝石とはよく言ったものだ。綺麗。散歩する歩道がある反対はうっそうとした木々に覆われて昼でも薄暗い。川の半分はその陰になっている。カワセミは背中から光を発しているように輝いていた。ほんの数秒の出来事であったが、私は目を見開いてしかと姿を捉えた。嬉しかった。このところ続くこれほどまでに残酷で意味のない殺人事件に、私は、やりきれない気持で爆発しそうなまでに怒りが充満していた。その怒りがスーッと風船の口がゆるんだように抜けた。

  カワセミは「ギャッ」と短く鳴いて飛び去った。私は立ち尽くしていた。夢から覚めたように現実に戻った。

  川に沿った歩道にこの川に生息する鳥類の説明板が設置されている。カワセミを見た現場のすぐ近くに説明板があった。偶然だろうが、それはカワセミのものだった。白地にこげ茶色のペンキでカワセミの画が描かれていた。カラー写真とか絵具で描かれたカワセミでなくてよかった。あのカワセミの背中の色は、実物を見ることでしかわからない。うつうつしていた気分が一瞬で晴れた。元気をもらった。足取りも軽く散歩を続けた。一日明るく過ごせた。夕方仕事で疲れて東京の職場から帰宅した妻に「今日、カワセミ見たよ」と報告した。妻は鳥に特別な興味は持っていないが、喜ぶ私にはまだ興味を持っていてくれるように微笑んでくれた。

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