団塊的“It's me”

喜寿老(きじゅろう77歳)の道草随筆 月・水・金の週と火・木の週交互に投稿。土日祭日休み

探し物は何ですか。

2018年06月05日 | Weblog

 井上陽水の『探し物は何ですか』が好きだ。たいして特徴も特技もなかったが、子どものころから探し物には自信があった。古希を過ぎ、生来の記憶力の悪さに、痴呆が加わってきたのか、物忘れと物を失くすことが多くなった。

①     作ったばかりの部分入れ歯

②     結婚指輪

③     皮むき器

①      5月14日に歯科医院で歯肉炎の悪化で抜歯する2本の歯型を取った。23日に抜歯。私の舌は口の中でおとなしくしていない。まるで手の指のように動いて口の中を探る。歯が抜かれた跡に触れる。麻酔でまだしびれが残るブヨブヨになった場所を点検。更に一度に2本抜かれた空間の測量に入る。あまりの空間の幅に舌の先の半分くらいが食い込み、舌が上唇の中側にタッチする。こうなると私のもともと萎縮した脳は、混乱をきたす。神経が口に集中してしまう。加えて抜歯直後に14日に型取りした部分入れ歯が装着された。入れ歯にはワイヤーのわっかがありそこが抜歯した両脇の歯の根元に食い込む。帰りの電車ないで私は入れ歯を外した。これが過ちの第一歩であった。25日から27日まで妻の学会に同伴して大阪へ行った。25日の夜、大阪在住の友人家族にホテル内の中華レストランに招かれた。抜歯したところは、順調に回復してきていたが、入れ歯は外したままだった。友人家族には、恥ずかしかったが理由を説明して、私の口の異変に驚かぬよう予め告知した。

  6月1日は、歯科医院予約日だった。入れ歯の調整をする。家を出る前、さもずっと入れ歯を装着していたふりを装うために入れ歯をはめ込もうとした。見つからない。てっきり薬ポーチの中にガーゼにくるんでしまったと思い込んでいた。慌てた。もしなかったら歯科医になんと言えば。もしかしたら今朝出したゴミの袋に!最近自分の意識してないことをしでかす。記憶も一瞬で消える。どうでもよいことは覚えているが、どうしても思い出したい過去は無の世界となる。ゴミ出し場へ直行。ちょうど通いの管理人がいた。「すみません、もしかしたら入れ歯を・・・」「全部まとめて向こうのシャッターの前に置きました。まだ収集車は来ていません」「見つかるといいですね」 どこまでも優しい同年配の管理人である。 

 私はゴミ袋を抱えて階段を韋駄天のように駆け上がった。テーブルの上に新聞紙を拡げた。急いでゴミを探った。素手だった。絶対あると確信していた。なかった。時間が迫る。予約した時間に遅れるわけにはいかない。家を出た。歯科医に説明した。「次回までに探してください」で終わった。その夜、妻と二人で家の中に留め置いたゴミを再点検した。使い捨て手袋をしてシラミツブシに探した。見つからなかった。

②      再婚して結婚式で交わした結婚指輪を失くした。ダイエットのせいだった。体重を減らすことに成功した。結婚指輪がゆるゆるになった。どこかで抜けてしまった。探しようがなかった。2度目の結婚の呪いかといぶかった。今している指輪は東急ハンズの2千円の指輪である。

③      料理は好きだが、後片付けは嫌い。妻は料理をしないが、後片付けと整理整頓の達人である。これでうまくいく。私はスイス製の皮むき器が気に入っている。ところがこの皮むき器小さい。だからよく向いた皮と一緒に捨ててしまう。ゴミ袋をくまなく探して数回見つけた。この経験がゴミを恐れぬ今回の入れ歯探しにつながった。結果は得られなかったが、ここまでやればあきらめがつく。


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする