朝食前1錠朝食後4錠昼食前1錠昼食後6錠夕食前1錠夕食後4錠。私はこれだけの薬を服用している。薬のお蔭で生かされていると感謝している。
最近この薬を飲むのに問題が出て来た。いままでは水かお茶で簡単に薬を胃に送り込めた。口の中に入れた水と錠剤が連携しない。水は水で喉に入ろうとする。錠剤は上顎や舌のどこかに隠れようとしたり貼りついたり。脳は錠剤と水をまとめて一気に飲み込ませようと試みる。“私”はそのことに気付いているが自分ではないもできない。何か取り残された気分でいる。錠剤を水に乗せおうと舌や顎を動かす。ところが脳からの指令と顎の動き下の動きに時間差が生じるらしい。それでも“私”は「薬を飲むことぐらいできるさ」と強気で口の中の異物を飲みこもうとする。ゴクン。途端に“私”はむせ始める。水だけが喉に入り、挙句の果てに水は胃方向ではなく肺方向へ進入してしまった。“私”は水を吐きだそうとする。「カーッ、ゴホゴホゲーッゲッ」 水は吐けない。目が涙で潤む。口の中で錠剤が解け始め嫌~な味がする。「アッホッホ アッアッア」 舌、喉、脳、水、錠剤、“私”それぞれが問題解決のためにバラバラに何かをしようとしている。結局誰も統制がとれない。薬なんか飲まなくてもいい。病気が進行してもこんな苦労してまで薬に頼らなくてもいい。ヤケッパチになる。気を取り直して再度挑戦。もう口の中の錠剤は半分液体に成り果てている。再び水を口に注ぎ込み飲み込む。やっと肺ではなく胃に送りこめた。この数か月で5,6回こんなことが続いた。
世の中にはこの薬を飲むという行為で苦労している人は多くいるらしい。テレビのコマーシャルで龍角散が『ゼリー状のオブラート』を紹介していた。新しもの好きの私は即興味を持った。夜勤めから帰宅した妻に相談した。誤飲はいつも妻がいない時に起こる。「肺に水が誤飲されて入れば大変なことになるから、ゼリー状のオブラート試してみたら」
次の日さっそく近所のドラッグストアへ行った。中々見つけられなかった。店員に尋ねた。店員は私を介護関係商品のコーナーへ導いた。オシメ、入歯洗浄剤、杖、尿漏れパッドの横に龍角散の『ゼリー状のオブラート』が置かれていた。どこに置かれて売られていても構わない。私の役に立つのであれば我慢しよう。
『ゼリー状のオブラート』 特許収得 龍角散嚥下補助ゼリー 薬が楽に飲める ノンカロリー・ノンシュガー 200g(大さじ約12杯分) レモン味・無果汁
使ってみた。なんとスムーズに錠剤が喉を通ることか。これなら安心である。よくぞこんな製品を開発販売してくれた。
老化が進む。そんなことに落ち込んでばかりいられない。あれもこれもできなくなった。ならば自分に足りない機能を補助してもらえばいい。現実をみて現状を知り、役に立つものを見つける。アンテナを張り巡らせて溢れる情報の中から自分に役立つものを探す。もとめて試す。
『ゼリー状のオブラート』良い製品である。できればゼリーと薬を自分ひとりで簡単に入れることができて、口に運べるスプーン状もしくは盃のような飲みやすい専用のものがあれば,なお助かる。介護コーナーに並べるなら、容器に改善が必要。袋の中に深く入れてあるチューブが邪魔して、最後まで使い切れない。消費者の意見をもっと商品化に活かして、これから更に良い商品を世に出してほしい。