団塊的“It's me”

喜寿老(きじゅろう77歳)の道草随筆 月・水・金の週と火・木の週交互に投稿。土日祭日休み

趣味 妻

2016年03月03日 | Weblog

  俳優の唐沢寿明さんがテレビの番組で趣味を尋ねられた時、「趣味は車と山口智子」と答えたという。山口智子さんと結婚して20年経っている。のろけだと批判的な意見もあるそうだが、私はなかなか日本人の男性には言えないことだと感心した。他にも「一番の宝物は?」の質問に「山口智子」と答えた。山口智子さんは「一つだけ願いが叶うとしたら何を願いますか?」に「好きな人と同じ瞬間に死なせてください」と答えたそうだ。また「毎日、ご飯をおいしくいただいたり、ちょっとしたことが大事。毎日、楽しく、おいしく、幸せに、大好きな方といただくご飯は最高ですね」とも言っている。

 私は彼らに共感できる。私の妻を趣味とは思わないが、宝だと思う。できるなら死ぬのも一緒だといいと思っている。私たちの生活標語は「いつも仲良く楽しく美味しく、ニコニコ現金払い」。約束事は“仲直りは手をギュッと握る”。バツイチの私と初婚だった妻は結婚して26年になる。標語と約束を概ね守ってきた。

 妻は病気のデパートのような私と違って、自称健康優良人である。妻は小中高と皆勤だった。大学では病気入院でしばらく大学を休んだ。勤めも病気で休んだことはない。3月2日夜11時、横で寝ていた妻がベッドから出てトイレに行った。二人とも就寝中にトイレに起きることは滅多にない。戻ってきたので聞いた。「体中にアレルギー反応が出て痒くて体が火照るの。でも今薬飲んだから大丈夫」 医者の妻が言うのだから大丈夫とも思ったが、医者の不養生ということもあるので心配だったが、私の人並み外れた睡魔はいつのまにかまた私を枕とベッドに深く抑え込んだ。

 今朝5時に目を覚ますと妻は体中にアレルギー反応の赤いぼちぼちが出ていた。私はオロオロするばかり。いつも同じものを食べ、私は何もなくても妻には反応がでることがある。チュニジアに住んでいた時、約2週間アレルギー反応が続いた。現地の医者はチュニジアの農産物に使われている農薬が原因かもしれないと言った。その時も私には何の反応も出なかった。今年、新宿高島屋の地下食品売り場で買った“寄せ鍋セット”のハマグリで妻はアレルギー反応が出た。昨夜は横浜そごうで買ったマテ貝の酒蒸しを二人で食べた。生ではない。ちゃんと火を通した。妻のアレルギー反応は、常時出るわけではない。体調やストレスにも関連しているらしい。私は貝類を我が家の献立から外すことにした。朝飯抜きで妻はいつもの通りに出勤した。私はアレルギー科の受診を強く懇願した。アレルギー反応が何を原因として起こるのかを見極め、我が家の食卓から原因を排除しなければならない。

 キリスト教の結婚式では「幸せな時も、困難な時も、富める時も、貧しき時も、病める時も、健やかなる時も、死がふたりを分かつまで愛し、慈しみ、貞節を守ることをここに誓います」と新郎新婦が共に神の前で宣誓する。内容は夫婦として当たり前のようだが、バツイチの私には耳が痛い。再婚する前、正直私ごとき人格の劣る者がやり直しても結局同じことの繰り返しにならないかと心配した。違った。何が起こったのか分らない。

 妻を趣味とは言えないが、妻が好きとは断言できる。何よりこの26年間、数回の手をギュッと握り直しを経ても仲良く楽しく美味しく暮らしてこれたことが証明している。死がふたりを分かつまで現状維持できます様に。


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