ひとり言 ひとつふたつ詩集

沖縄から詩をつぶやきます。

バタフライ

2020-09-21 15:34:19 | 日記
                        バタフライ


                    暑い夏を残した秋に
                    風が
                    トンボを乗せ
                    穏やかな光の中を
                    涼やかに
                    訪れた

                    太陽にいらだっていた
                    緑の葉のなかに
                    白い穂が揺れている

                    ふいに鳴った電話の
                    受話器から
                    古めかしい
                    40年も会ったことのない
                    名前が漏れてきた

                    壊れた石垣の間から
                    「あのね、遊ぼう」
                    むじゃきな声
                    年月は
                    風化させる

                    息を呑んだ
                    「ひとりぼっちになって
                     話し相手がいないからさ
                     このまえの告別式の名簿から探して
                     電話をしている」

                    学生のころ
                    華やかに浮名を流していた
                    街の通りでばったり会ったときには
                    ボーイフレンドを連れて楽しそうだった
                    セーラー服のわたしには遠いひとだった

                    声はひらひらと
                    ちょうちょうが風に浮かんでいるようで
                    電話口から
                    あたりにすり抜けていく

                    バタフライより軽く
                    うわさにきくトラブルメーカーの
                    重さが
                    ひらひら声で
                    地面に
                    落ちては
                    粉を巻き散らかしているのだ

                    幼いころの
                    可愛い赤頭巾のコートの
                    お下がりの持ち主
                   
                    
                    
                    
                    

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