フランス版インディ・ジョ-ンズもあるいはおもしろいかもしれないと、『アデル ファラオと復活の秘薬』を丸の内ピカデリーで見てきました。
実は、7月31日の記事の冒頭で、「あるフランス映画を見ようと思って出かけたところが、狙った時間帯には上映されていないことがわかり」見逃してしまったというのがこの作品だったわけで、それが打ち切り間際だったところから、慌てて別の映画館を探して見た次第です(現在は、既にここでも違う作品が上映されています)。
(1)単に“フランスの冒険映画”ということで見てみたわけですが、あにはからんや、かなり面白い映画になっているので驚きました。
舞台は1911年。ちょっとした手違いで、双子姉妹の妹・アガットを植物人間にしてしまった姉・アデル(ルイーズ・ブルゴワン)は、死の淵にある妹を助けるべく、古代エジプトで使われていたとされる「復活の秘薬」を手に入れようとして、まずラムセス2世の侍医と思われるミイラをエジプトからパリに持ち帰ります。
そして、大昔の翼竜の卵を孵化させることに成功したエスペランデュー教授ならなんとかなるだろうと、処刑寸前だった彼を救出します。そして、その力でそのミイラを蘇らせようとしますが、……。
前半は、まさにインディ・ジョーンズばりに、アデルは、盗賊やマッドサイエンティストにギリギリのところまで追い詰められながらも、ミイラの棺の中に入り込んだりして、なんとか追及を逃れます。その追っかけごっこは、大きな石の玉が転がってこないにせよ、なかなかスピーディで楽しめます。
ただ、盗賊はわかるにしても、アデルの宿敵とされるマッドサイエンティストの出現は酷く唐突で、何でこうもしつこく彼女のあとを追いかけてきて殺そうとまでするのかよくわかりません。
でも、ラストシーンに突如として姿を見せるところからすれば、続編ではその正体が明らかになるのでしょう。
後半になると、インディ・ジョーンズから離れて、古いものの復活という点に焦点が当てられます。その中心がエスペランデュー教授で、彼の蘇生法によって、なんと翼竜の中でも古いものとされる「プテロダクティルス」が現代に復活してしまいます。
その点はファンタジーとして大層面白いのですが、孵化して出てきた翼竜が、馬車を橋からセーヌ川に突き落として中に乗っていた政府高官を殺してしまったことから、その責任を教授が負わされてたちまち死刑の判決が下る、というのは余りに話の展開が急すぎる感じがしてしまいました。
とはいえ、これは1911年の設定ですし、さらには、問題の翼竜が空から飛んできて、ギロチンの前に立たされた教授を足で捕まえて救出するのですから良しとすべきでしょう!
という具合に、この映画は見どころを2つも持っていて、それぞれでアデルが男性顔負けの活躍をするのですから、面白くないわけがありません。
若干、パリの観光案内といった側面が強調されているところがあるものの、国外の観客に対するサービスだと鷹揚に構えましょう。
それに、翼竜の捜査のためにわざわざエッフェル塔を使うのも、1889年の第4回万博に合わせて建造されたのだという点を皆に分からせるためでしょうし、ラストでルーブル美術館の全景が映し出されるところ、当然あるべきメインエントランスのピラミッドが映っていないのは、それが1989年に作られたものであることを強調したかったためでしょう(パリ万博からルーブルのピラミッド建設まで丁度100年とは!)!
ところで、映画の冒頭の会話からすると、アデルは元々ペルーに行くと会社の方には言っていたようです。続編は、今回の映画のラストからするとタイタニック号の話になりそうですから、あるいは南米での冒険はその次になるのでしょうか。その際には、マチュピチュのみならず、20種類近くの翼竜プテロザウルスの化石が発見されているブラジルのアラリペ高原にもアデルには足を延ばしてもらいたいものです!
アデルに扮するのは1981年生まれのルイーズ・ブルゴワン。期待の若手女優とされてはいるものの、30歳が目の前。本作の主人公のような気の強い女にピッタリにしても、これからどんなふうに役の幅を広げていくのか楽しみです。
(2)この映画では、現代に復活した翼竜が大活躍するところ、ちょうど職場近くの日本橋の三越7階ギャラリーでは「恐竜展」が開催されていたので、ちょっと覗いてみました(~8月9日)。
デパートで開催されるものですから期待は持ちませんでしたが、大きなトリケラトプスの全身骨格が展示されていたりして、夏休み中の子供たちが大勢見に来ていました。
お目当ての翼竜も展示されています。「アンハングエラ」という翼竜で、ブラジルのアラリペ高原の白亜紀前期末(1億1千年前)の地層から発掘されたもののレプリカです。
〔「日本橋三越本店「恐竜展」」より〕
ただ、展示の説明に「大型翼竜」とあったのでアレッと思いました。展示されているものは、体長が1.5mくらい、翼を広げたときの長さが5 m程度で、他の恐竜に比べたら随分と小型です。そして、これで「大型翼竜」ならば、『アデル』に登場するプテロダクティルスは、いったいどんな大きさだったのだろうと疑問がわきました。
そこで『恐竜』(小学館の図鑑NEO POCKET4)を調べると、プテロダクティルスは、翼を広げたときの長さが「約0.5~2m」となっているではありませんか!どうも、三越の恐竜展で展示されているアンハングエラよりもずっと小さかったようです。
〔「恐竜のデジタル図鑑」より〕
これでは、エスペランデュー教授を救出するどころではありません。馬車を橋から川に落とすことさえできないでしょう!
むろん『アデル』は純ファンタジーですから、こんなことは全くどうでもいいのですが、どうせなら、これまで地球上に現れた空を飛ぶ生物の中で最も大型だったとされる「クェツァルコアトルス」を復活させるお話にしたらよかったのにと思いました。なにしろそれは、翼を広げたときの長さが約10mもあり、4人乗りの小型飛行機と同じくらいの大きさとされているのですから!
(3)映画評論家の意見はやや分かれているようです。
渡まち子氏は、「本作はヒロイン・アドベンチャーでたっぷり楽しませるエンタメ映画」で、「ハリウッド映画ばりの冒険アクションと、フランス映画らしいおしゃれなセンスが効いて」いて、「元はお天気お姉さんだというルイーズ・ブルゴワンのキュートな魅力と共に楽しみたい、のどかな冒険映画」だとして60点を与えていますが、
福本次郎氏は、「抜群の行動力と胆力・鼻柱の強さを持つ彼女に次から次へと危機が襲いかかり、間一髪で難を逃れる姿は手に汗を握る。そんな導入部に、血沸き肉躍る冒険が彼女を待ち受けているのかと期待するが、舞台をパリに移すと急にトーンダウン。作り手はエスプリを効かせているつもりなのだろうが、まったくセンスが合わないコメディを延々と見せられるハメになる」として40点しか与えていません。
恐らく福本氏は、翼竜とかミイラ男といった類いのものにマッタク興味がないのではと思われます!
★★★☆☆
象のロケット:アデル
実は、7月31日の記事の冒頭で、「あるフランス映画を見ようと思って出かけたところが、狙った時間帯には上映されていないことがわかり」見逃してしまったというのがこの作品だったわけで、それが打ち切り間際だったところから、慌てて別の映画館を探して見た次第です(現在は、既にここでも違う作品が上映されています)。
(1)単に“フランスの冒険映画”ということで見てみたわけですが、あにはからんや、かなり面白い映画になっているので驚きました。
舞台は1911年。ちょっとした手違いで、双子姉妹の妹・アガットを植物人間にしてしまった姉・アデル(ルイーズ・ブルゴワン)は、死の淵にある妹を助けるべく、古代エジプトで使われていたとされる「復活の秘薬」を手に入れようとして、まずラムセス2世の侍医と思われるミイラをエジプトからパリに持ち帰ります。
そして、大昔の翼竜の卵を孵化させることに成功したエスペランデュー教授ならなんとかなるだろうと、処刑寸前だった彼を救出します。そして、その力でそのミイラを蘇らせようとしますが、……。
前半は、まさにインディ・ジョーンズばりに、アデルは、盗賊やマッドサイエンティストにギリギリのところまで追い詰められながらも、ミイラの棺の中に入り込んだりして、なんとか追及を逃れます。その追っかけごっこは、大きな石の玉が転がってこないにせよ、なかなかスピーディで楽しめます。
ただ、盗賊はわかるにしても、アデルの宿敵とされるマッドサイエンティストの出現は酷く唐突で、何でこうもしつこく彼女のあとを追いかけてきて殺そうとまでするのかよくわかりません。
でも、ラストシーンに突如として姿を見せるところからすれば、続編ではその正体が明らかになるのでしょう。
後半になると、インディ・ジョーンズから離れて、古いものの復活という点に焦点が当てられます。その中心がエスペランデュー教授で、彼の蘇生法によって、なんと翼竜の中でも古いものとされる「プテロダクティルス」が現代に復活してしまいます。
その点はファンタジーとして大層面白いのですが、孵化して出てきた翼竜が、馬車を橋からセーヌ川に突き落として中に乗っていた政府高官を殺してしまったことから、その責任を教授が負わされてたちまち死刑の判決が下る、というのは余りに話の展開が急すぎる感じがしてしまいました。
とはいえ、これは1911年の設定ですし、さらには、問題の翼竜が空から飛んできて、ギロチンの前に立たされた教授を足で捕まえて救出するのですから良しとすべきでしょう!
という具合に、この映画は見どころを2つも持っていて、それぞれでアデルが男性顔負けの活躍をするのですから、面白くないわけがありません。
若干、パリの観光案内といった側面が強調されているところがあるものの、国外の観客に対するサービスだと鷹揚に構えましょう。
それに、翼竜の捜査のためにわざわざエッフェル塔を使うのも、1889年の第4回万博に合わせて建造されたのだという点を皆に分からせるためでしょうし、ラストでルーブル美術館の全景が映し出されるところ、当然あるべきメインエントランスのピラミッドが映っていないのは、それが1989年に作られたものであることを強調したかったためでしょう(パリ万博からルーブルのピラミッド建設まで丁度100年とは!)!
ところで、映画の冒頭の会話からすると、アデルは元々ペルーに行くと会社の方には言っていたようです。続編は、今回の映画のラストからするとタイタニック号の話になりそうですから、あるいは南米での冒険はその次になるのでしょうか。その際には、マチュピチュのみならず、20種類近くの翼竜プテロザウルスの化石が発見されているブラジルのアラリペ高原にもアデルには足を延ばしてもらいたいものです!
アデルに扮するのは1981年生まれのルイーズ・ブルゴワン。期待の若手女優とされてはいるものの、30歳が目の前。本作の主人公のような気の強い女にピッタリにしても、これからどんなふうに役の幅を広げていくのか楽しみです。
(2)この映画では、現代に復活した翼竜が大活躍するところ、ちょうど職場近くの日本橋の三越7階ギャラリーでは「恐竜展」が開催されていたので、ちょっと覗いてみました(~8月9日)。
デパートで開催されるものですから期待は持ちませんでしたが、大きなトリケラトプスの全身骨格が展示されていたりして、夏休み中の子供たちが大勢見に来ていました。
お目当ての翼竜も展示されています。「アンハングエラ」という翼竜で、ブラジルのアラリペ高原の白亜紀前期末(1億1千年前)の地層から発掘されたもののレプリカです。
〔「日本橋三越本店「恐竜展」」より〕
ただ、展示の説明に「大型翼竜」とあったのでアレッと思いました。展示されているものは、体長が1.5mくらい、翼を広げたときの長さが5 m程度で、他の恐竜に比べたら随分と小型です。そして、これで「大型翼竜」ならば、『アデル』に登場するプテロダクティルスは、いったいどんな大きさだったのだろうと疑問がわきました。
そこで『恐竜』(小学館の図鑑NEO POCKET4)を調べると、プテロダクティルスは、翼を広げたときの長さが「約0.5~2m」となっているではありませんか!どうも、三越の恐竜展で展示されているアンハングエラよりもずっと小さかったようです。
〔「恐竜のデジタル図鑑」より〕
これでは、エスペランデュー教授を救出するどころではありません。馬車を橋から川に落とすことさえできないでしょう!
むろん『アデル』は純ファンタジーですから、こんなことは全くどうでもいいのですが、どうせなら、これまで地球上に現れた空を飛ぶ生物の中で最も大型だったとされる「クェツァルコアトルス」を復活させるお話にしたらよかったのにと思いました。なにしろそれは、翼を広げたときの長さが約10mもあり、4人乗りの小型飛行機と同じくらいの大きさとされているのですから!
(3)映画評論家の意見はやや分かれているようです。
渡まち子氏は、「本作はヒロイン・アドベンチャーでたっぷり楽しませるエンタメ映画」で、「ハリウッド映画ばりの冒険アクションと、フランス映画らしいおしゃれなセンスが効いて」いて、「元はお天気お姉さんだというルイーズ・ブルゴワンのキュートな魅力と共に楽しみたい、のどかな冒険映画」だとして60点を与えていますが、
福本次郎氏は、「抜群の行動力と胆力・鼻柱の強さを持つ彼女に次から次へと危機が襲いかかり、間一髪で難を逃れる姿は手に汗を握る。そんな導入部に、血沸き肉躍る冒険が彼女を待ち受けているのかと期待するが、舞台をパリに移すと急にトーンダウン。作り手はエスプリを効かせているつもりなのだろうが、まったくセンスが合わないコメディを延々と見せられるハメになる」として40点しか与えていません。
恐らく福本氏は、翼竜とかミイラ男といった類いのものにマッタク興味がないのではと思われます!
★★★☆☆
象のロケット:アデル
あえてハリウッド映画の王道の展開をはずしてきたというのも・・・
翼竜はドイツのゾルンフォーフェンというところからもたくさん発掘されます。
ただ私も作中の翼竜はブラジル産の翼竜がモチーフなんじゃないかと思っています。
ルイーズ・ブルゴワンの人となりと言うか、お天気おねえさん時代の様子を先に見ていれば評価は変わったかもしれませんが。
台詞が多かったです。
フランス語ですらわからないのに、時々何語かわからない(字幕も出ない)し、あんなにまくしたてられても面白さが伝わってきませんでした。
多分、台詞もエスプリが効いていたと思うんですけど。
それから男性陣のメークが汚すぎ。
もう少しきれいでもよかったんじゃないかと思っちゃいます。
マチュー・アマルリックもひどかったし、ジャッキー・ネルセシアンはほんとに死ぬんじゃないかと思いました(実はまだ60にもなってない)
おフランス人のエスプリの面白さというものが、ちょっと理解できなかったので辛かったです。
そうですね。私も翼竜には興味がないので...インディージョーンズのような冒険を期待していましたので...
いつもながら、クマネズミさんの徹底した調査振りには脱帽します。「恐竜展」まで行ってしまうとは!
ベッソン監督には珍しいコメディ映画でしたが、あのドタバタぶりはエスプリとは別物だと思いますよ。英米公開に向け意図的に大袈裟に描いたんだと思います。エスプリの効いた映画は英米ではヒットしませんから。
アデルの七変化(ちゃんと数えた訳ではありませんが)にしても、ブルゴワンの前職を知っているかどうかでウケ方が全然違う気がします。
この辺は好みの問題ですが、概していうと、イギリス映画はシックで比較的好みなのですが、フランス人はどうも意地悪のようであって、映画も少しひねくれていると感じてます。本作は、娯楽ものであり、フランス版ファンタジーという観点で、ストーリーにはあまり期待せず、気楽に観に行って、その通り気楽に帰ってきました。
その意味で、フランス風味は弱いかも知れません。フランスで人気のあるお天気お姉さん(やや熟女)の活躍ぶりを楽しく観たとなると、そこは目くじらを立てるほどのものではありません。一般的な映画の評価としては、時間があったら、暇つぶしにどうぞと言うところでしょうか。
続編を匂わせる終わり方で、次はタイタニック号で彼女は何をしようとしているのでしょうか。
なお、「フランスで人気のあるお天気お姉さん」とあるところ、あるブログで知ったのですが、ルイーズ・ブルゴワンがTVでやっていることは、日本の「お天気お姉さん」とはまるで違うようで、むしろ「アデル」そのもののように思えます。
時間があれば、例えば次の動画をご覧になっては如何でしょうか?
http://www.youtube.com/watch?v=5yfdS6BGH3Y&feature=related